残業時間ランキング2020 ~市役所の人員配置は適切なのか?~

OvettimeRanking2020.png 横須賀市役所、全141部署の残業時間ランキングを作ってみた。市役所内の仕事の集中具合を見るためだ。

 誤解のないように釘を刺すと、これは「部下のワーク・ライフ・バランスのマネジメントができない無能な課長ランキングだ!」という資料ではない。全然違う。別の要素が含まれた数字だ。グラフが独り歩きされると困るので、少し説明が必要で、シェア等を頂く際には申し訳ないが一度、全文を読んで頂きたい。
 ちなみに、全141部署の平均は9.1時間/月。「横須賀市職員は、平均で月9時間残業した」ということだ。しかし、上記グラフで分かるように、かなり部署ごとの差が大きく、平均に着目すると見誤る。

 まず、最も残業時間が長かったTop10がこちらだ。
OvertimeLong2020.png いま話題のデジタル化を進める庁内コンサル的部署のデジタル・ガバメント推進室が月100時間越えの第1位。
 今年は過去最多タイとなる13回もの補正予算を編成した財務課が第2位。
 中小企業向け家賃補助などコロナ対策の各種補助制度を担当した経済企画課が第3位となっている。
 他に、秋に5年に一度の国勢調査を担当した都市戦略課のほか、感染症対策を担当する保健所健康づくり課などがランクインしている。
 ちなみに、上位5位に赤色を、下位5位に青色を付けているが、両方の色がついた唯一の部署が市民税課だった。税の徴収のある4月に業務が膨れ上がる季節労働者型の部署だ。

 次に、最も残業時間が短かったTop10がこちらだ。
OvertimeLess2020.png 第1位の南図書館は唯一の残業ゼロ職場となった。それを含めた図書館4館や、学校用務員、道路維持センター、中央健康福祉センターなど、庁舎外の部署が目立つ。
 また、いつ解散総選挙となるかおびえる選挙管理課のような数年に一度てんやわんや型の部署もランクインした。

 さて、なぜこのような調査を行ったのか?
 先日、石山議員がお勤めだったJALの再建の事例を引き合いに、「元国営企業ということもあって大企業病で縦割り文化で、他部署はおろか隣の係の仕事も手伝わない文化があって、稲盛会長が経営改革のために導入したのが他部署支援だった」という質疑をされていた。それを伺って、確かに市役所もそうだと思ったのだ。
 これに対し市長は「部内の応援体制、つまり組織を外れて意識ある人たちがある課題を持って横のつながりを持っていくというのは、おっしゃるとおりに一番早い解決方法だったのではないか」と前向きな答弁もしていた。

 ただし、2つ気になったことがある。
 第一に、部署ごとの偏りが実際にどの程度あるか、根拠が必要だという点だ。
 第二に、市長は「部内の応援体制」と言うが、本当は部内の課同志だけではなく、部と部をまたがって応援体制を組まないと解消しないのではないか、という点だ。
 とりわけ、今年はコロナ対策で例年と違った仕事が増えたため、局所的に仕事が集中した部署があるはずだ。

 そこで注目したのが残業時間というわけだ。残業時間は、職員の健康管理のためにも重要な指標だが、仕事の集中具合を測る指標でもある。そして、仕事が集中すれば、市民対応に時間がかかったり、補助金支給が遅れたりといった形で市民生活にも影響が及ぶ。
 この問題意識から、12月議会の総務常任委員会で質疑をし、併せて委員会としての資料要求も提案したが、他の委員の同意が得られなかった。そこで、人事課に「各課の残業時間って、時間かけずに数字出る?」と聞いたら大丈夫だというので、議会の資料照会制度を使ってお願いした。心から感謝している。
 若干センシティヴだと思うので、全ての数字は公開しない。ただ、Tableau Publicに全142部署の棒グラフだけ上げておいたので、市職員の方で興味を持たれた方はそちらを見てほしい。

 さて、気を付けなければいけないのが、上記の表の見方だ。
 横須賀市役所の部署別の時間外勤務/月を、コロナの影響があった2020年4月~12月について集計してもらった。とはいえ、単純に時間外勤務の時間数を積み上げると職員数の多い部署は数字が大きくなるため、10月1日時点の職員数をもとに職員1人当たりの平均時間外勤務/月を算出してくれた。
 ただし、注意が必要なのは、平均を算出するうえでの分母と分子が揃っていない。時間外勤務の総量については、他部署から応援に来た職員が残業した時間も応援先の部署に計上されている。一方、職員数には他部署からの応援職員は含まれていない。

 具体的に、ランキング1位のデジタルガバメント推進室で説明しよう。表では、100.7時間/月の残業ということになっている。ただし、他部署からの応援職員が残業した分を除いた、所属職員の残業時間を個別に調べてくれて、実際には平均59.7時間/月だった。

 では、上記のランキングに意味はないのか?
 そうではない。これは「その部署にはそれだけの残業が必要なほど、仕事が集中している」という指標だ。だとすれば、臨時的な応援体制を組むのはもちろんだが、最初から人員を手厚く充てておく必要があるはずではないか?

 もっとも、上地市長の人員配置がダメだったと言うつもりはない。
 デジタルガバメント推進室は2020年度に新設された部署だ。一気呵成にやらなければならなかった業務も多く、少数精鋭の意欲の高い職員が配置されて、不夜城のコンサル会社みたいだったのだろうと想像する。また、財務課もコロナ対応で例年の倍近い回数の補正予算を組んだ。これは人事を決める2月頃には想定できなかったろう。
 また、コロナ禍が拡がった後、実際に、上地市長は近年では異例だが、コロナ禍を受けて2020年7月1日に人事異動を行い、コロナ対策の部署を新設して保健所の人員を厚くした。賢明な対応だったと思う。

 とはいえ、来年度の人員配置を決める前に、「見える化」によって市役所に対応を求めたいのだ。
●デジタルガバメント推進室は、所属職員の実残業時間でも平均60時間でしょ? 創立2年目もこれだったらマズいよね?
●そもそも財務課は、以前から慢性的に残業多いよね? しかも、個別に見ると残業100時間超える人が毎年出るよね?
●保育課は、コロナで仕事増えたわけじゃないよね? 配置足りてるの?
●市民税課みたいな季節労働者型職場には、ちゃんと臨時的に人を充てているの?
●4年に1度の選挙管理課とか、5年に一度の都市戦略課みたいな周期的なところは、臨時で人充ててるんでしょうね?
●っていうか、これだけ残業している部署が沢山あるのに、ずっと残業ゼロの部署は課長のマネジメントが優秀なんだから人を減らして大丈夫だよね?

 と、普通の会社の感覚だったら改善ポイントが満載だと思う。
 「市役所の人事ってこういうもんだよね」という従来の常識をそろそろ変えないといけないと考えている。

 議員は、お金(予算)とルール(条例)で行政を大枠でコントロールできるが、人事は市長の専権事項だ。そして、市長も細かい人員配置は人事課と各部長に任せる市町村が一般的だと思う。だからこそ、今回の記事はぜひ市役所の部課長の皆様に読んで頂きたいと思って書いた。


 ありていに言うと、「うちの課は少ない人員でこんなに残業しているのに、残業ないあっちの課にはあんなに人がいるのは、どう考えてもおかしいじゃないか。うちに人をくれよ!」と交渉する材料にどうぞお使いくださいませ。


この記事へのコメント

  • ひまわり

    吉田市長時代、東日本大震災の現地に行って来て、疲弊する被災地市役所職員を見て市も応援の職員を被災地に送ったらとメールした事が有ります。実現はせず、予想通り何年かしてから職員の研修などをするのを見て縦割りだなと思いました。今回のコロナも一気に様々な事が起こり対応出来ない、想定すらしていない現状が明らかになりました。
    何も無い時に効率的に動くのは大切ですが、有事になった時にいかに余力を残した状況で協力して長期の事態に耐えられる組織改革も必要だと思います。

    最近行政センターに行った時に障害を持たれた方が受付をやられてましたが、頑張ってる姿は素晴らしい事だと感じました。
    効率的も大切ですが市民に希望を与える姿も大切だと感じました。
    2021年02月20日 19:13