芸術劇場廃止論へのご意見と回答

TownNews20200918.png 今年からタウンニュース横須賀版に月1回連載しているが、今回の9/18(金)号に掲載した「芸術劇場を廃止しコロナ対策を」の記事に対しては、とりわけ反響が大きかった。
 多くは、賛同の声だった。
「その通りだ。芸術より、もっと切実なことにお金を使ってほしい」
「衣食足りて礼節を知る、という言葉もある。文化芸術を楽しむ余裕もない人に目を向けてほしい」
 といった声が多かった。
 ただし、反対意見や疑問の声の中にこそ、大事な洞察があるとも考えている。個別にお返事も差し上げたが、ここにも書き出して対話的に議論を深めてみたい。
●1.芸術劇場は愛されているのか? 多くの人が足を運んでいるのならば、お金をかけてでも維持する価値はあるのではないか?
●2.芸術劇場があることにより、どぶ板通り商店会やコースカなど、近隣への経済波及効果もあるはずではないか? さいか屋も閉店し、廃止によりますます横須賀が寂しくなってしまう。
●3.民間売却や無償譲渡は本当に可能なのか?
●4.芸術劇場で公演を観る市民もいる。コンサートを開催する市民もいる。廃止してしまったら、市民の文化活動のニーズにどう応えるのか?
●5.芸術劇場の他にもホールはある。芸術劇場だけでなく、人口減少を見すえ他のホールとの統合も視野に入れて考えるべきなのではないか?

●1.芸術劇場は愛されているのか? 多くの人が足を運んでいるのならば、お金をかけてでも維持する価値はあるのではないか?
 このご意見は、もっともだ。
 2019年度ののべ入場者数は、大ホール153,458人、小ホール35,693人。
 ただし、1月以降はコロナ禍の影響があり、3月に至っては閉館してほぼゼロだった。
 そのため4~12月に絞った9か月の平均は、大ホール16,313人/月、小ホール3,404人/月となる。
 これを30日で割って1日あたりで見れば、大ホール543人/日、小ホール113人/日、という具合だ。
 大ホールは2,000席、小ホールは600席。特に大ホールは、1日1公演しかできない興行も多く、オペラなどでは前後の搬入片付けで3日で1公演というものもあるらしい。そう考えていくと、意外と健闘している印象だ。
 ただし、人口39万人の市で、のべ15万人利用ということは、市外の利用を除いたり複数回利用を省いたりすると、ユニーク・ユーザーは1~2万人ではないだろうか?
 最も利用される公共施設は図書館と言われるが、どの市でもユニーク・ユーザー数は市民の10%以内だと言われる。だからと言って、図書館には郷土資料や公文書の保管という公共性の高い役割があり、廃止はできない。
 一方、数%の市民を対象とした、必須欠くべからざる事業というわけでもない大規模コンサート・ホールに税金を充てることは認められない気もする。

●2.芸術劇場があることにより、どぶ板通り商店会やコースカなど、近隣への経済波及効果もあるはずではないか? さいか屋も閉店し、廃止によりますます横須賀が寂しくなってしまう。
 これも、もっともなご意見だ。
 この点についてお答えするには、やや説明が長くなるが「芸術文化普及事業」について説明しなければいけない。

 「芸術文化普及事業」とは、要するに自ら興行主となり、チケットの売れ残りリスクを背負ってコンサートを企画する事業だ。オペラ、クラシック、バレエ、伝統芸能など売りにくい公演を中心に、市が指定管理者に事業を委託している。
 この収支が、2019年度は1億円弱の赤字だった。この赤字を、貸ホール事業と駐車場事業の売上で埋めてトントンにしている。
 ただし、その他に市から約4億円の管理料を払っており、実質的には芸術劇場は4億円の赤字事業となっている。
 これが、地方の県庁所在地のように「その劇場で赤字でもオペラをやらなければ県民にオペラの鑑賞機会がない」という場合には、自前で赤字興行を打つ必要性もあるだろう。しかし、横須賀市民の場合は東京でも横浜でも観に行ける。そもそも、本当のオペラ愛好家はニューヨークでもベルリンでも出かけるらしい。
 というわけで、必要性の薄い「芸術文化普及事業」を中止すれば、1億円弱の赤字が無くなり、興行系のスタッフも削減できるので、全体としては約2億円程度の赤字に抑えることができると見ている。
 2019年度の、のべ入場者数は153,458人で、そのうち「芸術文化普及事業」による入場者数は44,691人であるため、人の動きは29%減るようにも見える。しかし、自主公演を打たない分、そこに貸ホールとして借りる公演も入るはずなので、実際の減少幅はもっと小さくなるだろう。
 むしろ、費用を払ってホールを借りる興行主は黒字を出そうとするはずだ。とりわけ、オペラやクラシックよりお客さんの呼べるポップやロックの公演を増やすと思われる。実際に、横須賀市でホールを借りてオペラを興行する民間事業者などいない。大半がポピュラーである。
 つまり、民営化すると、来街者はむしろ増え、街にお金が流れる可能性が高いと考えている。

●3.民間売却や無償譲渡は本当に可能なのか?
 このご意見も、ごもっともだ。
 私も元々、民間売却ができるとは思っていない。
 コロナ前ならば、大規模修繕積立金0.5億円だけ市が負担し、その他一式を負担してもらう条件で、民間に無償譲渡することも可能性があったと思う。
 しかし、コロナ後では望めないだろう。
 なんなら、持参金を付けなければ「タダでも要らない」と言われそうだ。大規模修繕積立金0.5億円、設備修繕費平均2億円に加え、共用部分負担金約1億円も市が出してあげて、「純粋に芸術劇場にかかる光熱費や管理費だけ負担すればいいので運営してくれる会社はありませんか? 無償で貸与しますよ」と呼び掛けて、手が挙がれば御の字だと思う。
 おそらく、手が挙がるとすれば、横須賀市の外郭団体である現在の指定管理者・芸術文化財団ではないか。
 もし、この条件で引き受けてもらえるならば、市の支出は年間平均約7.5億円から約3.5億円まで削減できる。つまり、現在の指定管理料約4億円が丸々節約できる計算だ。芸術文化財団がこの条件を呑んでくれるならば、出資金11億円は引き揚げずにそのまま差し上げてもいいと思う。

●4.芸術劇場で公演を観る市民もいる。コンサートを開催する市民もいる。廃止してしまったら、市民の文化活動のニーズにどう応えるのか?
 これも、全くおっしゃる通りだと思う。

 まず、市民の芸術鑑賞機会については、上記の民営化で浮いた4億円のうち数千万円を使って「市民割」をすればいいのではないか。芸術劇場で興行する事業者に、市民割に対応すれば割引額を市が補助してあげればいい。興行主も、市民の来場が多く見込めるため、公演を組みやすくなる効果があるはずだ。ただし、申し訳ないがオペラは市外に観に行ってもらうことになるだろう。

 次に、市民の演奏機会については、これも数千万円を使って「市民割」をすればいいのではないか。民営化後の運営者は、貸ホール代をおそらく値上げするだろう。市民は借りにくくなる。そのため、市内の団体やアーティストが公演をする場合は、ホール使用料の割引をしてもらうようにするのだ。割引額は民営化後の運営者に市が払うこととすれば、運営者を支援することにもなるはずだ。

●5.芸術劇場の他にもホールはある。芸術劇場だけでなく、人口減少を見すえ他のホールとの統合も視野に入れて考えるべきなのではないか?
 これも、本当に重要な指摘だと思う。
 この論点については、主宰の「横須賀ハコモノ研究会」でも調査してきたことなので、以下、やや長文となるが、私が考えてきた統廃合の方向性を書き出したい。

 ホール機能は、横須賀市だけでなく、広域で考えるべきものだ。
 この点、都心以外は広域で1000人規模の大ホールが1つあって、地域ごとに100~300人規模のホールがあることが使い勝手が良いと言われる。
 現状では、横須賀市内には6つのホールがある。
・よこすか芸術劇場 2000席
・ベイサイドポケット 600席
・文化会館大ホール 1098席
・文化会館中ホール 250席
・はまゆう会館 516席
・青少年会館 240席
 合計約4500席となり、人口に比べ、かなり過大だ。

 加えて、三浦半島広域では、他に4つのホールがある。
・逗子 なぎさホール 555席
・逗子 さざなみホール 160席
・葉山 福祉文化会館 507席
・三浦 三浦市民ホール 470席
 合計約1,700席。それぞれの規模はやや過大だが、配置は合理的だと思われる。

 築年度は次のようになっている。
・文化会館(大小) 1965年築 9,153m2
・はまゆう会館 1983年築 4,589m2
・芸術劇場(大小) 1993年築 20,484m2
・青少年会館 築年不明 1,603m2 (1999年に県から無償譲渡)


 まず、広域対応の大ホールについては、民営化した芸術劇場を充てることになるだろう。

 次に、地域対応の中小ホールだ。
 配置を考えれば、中央に集中しすぎだ。そのため、追浜と久里浜に新しく配置する必要があるだろう。
 そう考えていくと、文化会館がそろそろ寿命であり、ここは廃止が適当だ。
 また、はまゆう会館は立地が適切ではなく稼働率も低いため、大規模修繕せずに廃止が適当だ。
 また、いずれ青少年会館も廃止となることを見すえ、児童図書館跡地か中央駅前の再開発に組み込んで、200~300人規模のホールを建設したほうがいいだろう。
 こうすることで、当面は次の布陣となる
・民営化後の芸術劇場 2000席
・ベイサイドポケット 600席
・追浜・新ホール 200~300席
・久里浜・新ホール 200~300席
・中央・新ホール 200~300席
 合計で3500席規模となる。

 その後、芸術劇場(大小)の建て替え時には、中央あたりに1000人規模の大ホールを配置するのが適当だろう。それにより、ホールは4館で合計2000人規模となり、人口に見合うはずだ。
 このくらいダウンサイズすれば財政にゆとりも出るので、その時には再び市主催の公演事業に税金を投入してもいいのではないだろうか。


 以上、みなさんからの声を受けて考察を深めてみた。
 さらにご意見を頂けますと幸いです。

この記事へのコメント

  • 一市民

    芸術劇場も美術館も今の横須賀市の財政状況、市民所得が県内ワースト2位であることを考えたら、
    一時的に解体費用の痛みが伴うものの全て廃止して解体するべきです。

    芸術劇場など無償でも引き取ってくれる人などいません。

    以前、群馬県旧倉淵村に所有していた「はまゆう山荘」について、藤野議員のブログ
    https://www.hide-fujino.com/dispute/discussion/2005/0613.html
    によると、
    「これは、はまゆう山荘の倉渕村への譲渡、
     つまり「はまゆう山荘」を無料で倉渕村へあげてしまう、
    加えて5年間分の運営費6600万円をあげてしまうという内容を含んでいます。」
    とのことだったそうで、
    芸術劇場を仮に引き取ってくれる方がいても、
    一定期間の運営費を支払わされるのなら、解体した方がトータル的には良いはずです。

    それ以前に、あなたは議会でこの提案をするつもりですか?
    只、ブログで騒いでいても意味が無いので、
    言ったことには責任をもって議会で提案して活発に議論して下さい。

    貴方はブログで騒ぐだけで、議会に提案する事が殆ど無いようですが、
    きちんと仕事をしないと次回落選しますよ!!
    2020年09月29日 17:28