芸術劇場廃止論(後編) ~総額1100億円超!775億円が支払済。今後315億円を払いますか?~

 過去記事「芸術劇場廃止論(前編)」では、芸術劇場のコストを公開情報から積算してお伝えした。これまでに658億円かかっている計算だった(正確にはこの時の計算は2021~2024年度の見込額を含む)。
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 その後、議会質疑(9/7総務常任委員会)を経て、公開情報だけではわからなかった利子償還金と改修費見込額を文化振興課が示してくれた。これにより、ライフ・サイクル・コストが明らかとなった。

 結論から言えば、1100億円超。
 これが芸術劇場の「生涯年収」ならぬ「生涯支出」だ。
 従来より「芸術劇場の建設費は377億円」と、その巨額ぶりに批判が集まってきた。しかし、フルコストで見れば実際はその3倍に上るのだ。まさかこれほどとは、誰が予想していただろうか?
 おそらく横須賀市政で後にも先にも支出規模最大の公共施設となるだろう。

イニシャル・コスト590億円
 イニシャル・コストは約590億円。私が積算した428億円に、利子償還金(住宅ローンの利払いに相当)約160億円を加えた額となる。市債の返済も済んでいるため、全額が支出済だ。

ランニング・コスト500億円
 ランニング・コストは約500億円。運営費で約350億円、改修費で約150億円を見込む。これは公共施設の寿命と言われる70年間稼働した場合の額だ。
 運営費は開館から現在までの28年間で150億円を積算してあるため、残りの42年間では200億円程度が見込まれる。年間5億円弱の見込みだ。
 改修費は28年間で34億円(建物の修繕積立金等7億円+設備更新費27億円)を積算してあるため、残りの42年間で115億円程度が見込まれる。年によって増減はあるが年平均3億円弱の見込みだ。

撤去費用は10億円以上
 撤去費用は見込めていないが、施設規模から考えると10億円以上、おそらくは数十億円規模になるようだ。
 建替え時に公民連携で解体込で民間に委ねるのも、コスト削減の面では有効かもしれないが、その時の状況次第だろう。

これまでに775億円。これから315億円超。
 イニシャル・コスト590億円と、28年間で既に支払済のランニング・コスト184億円を合計すると、既にかかってしまったコストは約775億円ということになる。
 また、今後42年間管理すればかかるランニング・コストは約315億円ということになる。これは、芸術劇場を廃止すれば避けられるコストでもある。年平均7.5億円だ。
 市民一人あたりで考えると、芸術劇場に一人20万円を支払ってきて、これから一人8万円を支払う計算だ。横須賀市民が28万円ずつ出し合って芸術劇場を維持することになる。
 さらに、撤去費用がかかる。これは芸術劇場を稼働し続けようが廃止しようが必要となるコストだ。ただし、もしも民間譲渡ができれば負わずに済むことになる。しかし、コロナ後では、もはや民間譲渡は望めないだろう。多少の持参金を付けて、ようやく引き取ってくれる会社があれば御の字ではないか。

小林の処方箋は「廃止」
 数字だけ眺めれば、「既に28年で775億円も払ったのだから、残りの42年間で315億円なら仕方ないかな」という気もしてくる。
 しかし、冷静に考えたい。こういう考え方を、経済学では「サンクコスト」の呪縛と言うのだ。
 315億円は、途方もない額だ。実に横須賀市の年間予算の1/5にあたる。市民一人あたりでは8万円だ。
 年間7.5億円超で、市民一人あたりでは毎年2,000円を払い続けることとなる。
 みなさんはどう思うだろう?

 私なら、芸術劇場に28万円も払う気はしない。だって、28万円あれば、大学の入学金が払える。お金が工面できなくて大学を諦める子もいるらしい。同じ税金なら若者に投資したほうが、その子の生涯年収が上がって納税額も増え、リターンが大きくなる。
 しかも、芸術劇場なんて無くたってちっとも困らない。芸術劇場でクレイジー・ケン・バンドやペレス・プラード楽団のマンボNo.5を聴いたのはいい思い出だが、別に横浜で観たって良かった。これまでに20万円を払ってきた計算だが、その2回の公演に10万円ずつ投じたと思うと釈然としない。
 しかも、今後30年で人口は2/3の27万人まで減る。税収も減る中、高齢化で支出は増え続け、とてもではないが贅沢品を維持する余裕などない。家計が苦しくなったら維持費の高い別荘や高級車を手放すように、芸術劇場は民間に持参金付きで無償譲渡してでも、切り離したほうが良い。
YokosukaTheaterCenterForecast.png しかも、冒頭のグラフに示したように、市では来年以降、大規模な設備更新を予定している。コロナ禍で芸術劇場の稼働率が大幅に低下している中、財政も厳しいわけだから、芸術劇場に投資するわけにはいかない。
 世に「見切り千両」と言う。今こそ、芸術劇場廃止の判断を下す時だ。

芸術劇場廃止論の具体的手法
 さて、その廃止の仕方だ。
 まずはサウンディング調査をすればよいだろう。「オペラホールをタダであげます!」という触れ込みで、民間の柔軟な発想でどんなアイディアが出てくるか、いったん受け付ける。もしも、良い提案が出てくれば、現在の委託先(指定管理者)である公益財団法人横須賀芸術文化財団との契約が切れる2022年03月31日を以って、その会社さんに委ねる。無償譲渡でなくても、10年以上の無償貸与でも良しとする。
 次に、良い提案が出なかったら、今ある設備を騙し騙し使って貸館営業に特化するほかない。チケット売れ残りリスクのある自前の興行などは即刻中止だ。そのうえで、現在の指定管理者である外郭団体に無償貸与する。この外郭団体には市職員の天下り2名だけではなく、自前で雇った職員が20名ほどいらっしゃる。彼らは転職するか、無償貸与を受けて独立採算で運営するか、どちらかしかない。だから、市から無償貸与を申し出る。
 無償貸与とは言っても、今までの委託料(指定管理料)4億円強を失って貸館業務の利用料金制だけでは、人件費は賄えても、設備の維持更新までできないはずだ。だからこそ、この外郭団体に出資してある11億円は引き揚げずに残しておいてあげる。「出資金11億円は、消費ではなく設備投資にのみ使うこと」という条件で出資金から資本金に切り替え、彼らに渡してしまうのだ。でなければ、とても引き受けてはくれないだろう。なお、この11億円は先のイニシャル・コストに含まれているので、市の追加的支出はない。
 ……この2段構えで、いずれにしても市の施設としては廃止し、市の財政から切り離すほかないと考えている。


 今後42年間、毎年7.5億円あれば様々な住民サービスを提供できるはずだ。
 私は現時点でこう考えているが、最後に判断するのは市民のみなさんであり、みなさんの代理人である市議会議員だ。
 どうぞご意見をお寄せ頂きたい。

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