感染症病床数ランキング、神奈川県はワースト1位だった

BedOfInfectiousDisease2017.png コロナ患者は、原則として法定の「感染症病床」に入院させなければならないこととなっている。
 しかし、今回のコロナ禍で全く足りなくなり、他の病床にも入院させたことはご存じの通りだ。
→厚生労働省「新型コロナウイルス感染症患者等の入院病床の確保について」

 今回、各地の病院で院内感染(いわゆる病院クラスター)がかなり発生してしまった。これは、設備と人員の整った感染症病床以外でコロナ患者を受け入れたことも大きな原因として考えられるのではないだろうか?

 ところで、この感染症病床について調査したところ、右表の通り神奈川県が人口当たりで最低だったことがわかった。
 作成したデータも共有しておく。
 →BedOfInfectiousDisease2017.xlsx

 なお、出典はe-Statの2017年度の情報だが、過去記事にも書いた通り東京都はその後大幅に感染症病床を減らしている。念のため、2019年度のデータでも見比べてみたところ、東京都がワーストNo.2に順位を上げたものの、栄えあるNo.1は神奈川県で不動だった。

 この感染症病床は、都道府県知事が指定することとなっている。
 黒岩知事は「未病」にご執心で、「me-byo valley “BIOTOPIA”」なるハコモノまで作ったが、「かかってしまった後の感染症への備えが、おろそかだったんじゃないか?」とのそしりは免れないのではないだろうか。
 もちろん、全てのコロナ患者を感染症病床で受け入れるのは無理だったろう。しかし、全国平均並みの10万人当たり1.48床であれば、感染症病床数は現在の74床の倍近い136床も確保していたはずで、医療現場の負担も軽減できた可能性はある。後知恵だが、コロナの第2波や新規感染症に備えるために重要な視点だと考えている。

 県議会議員のみなさま、よろしくお願い致します。


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 なお、今回の記事は4月から通っている大学院(正確には一度も通ってはいないが)の演習の一環として3人の仲間と一緒に調査をする中で得た気づきだ。他のメンバーは公人ではないので名前は伏せるが、私だけの仕事ではないことだけ申し添えたい。

 せっかくなので、調査概要を共有しておく。

 「新型コロナウィルスをはじめとする感染症への備えは十分だったのか?」
 我々はこの問いのもと、都道府県別の感染症病床数に着目して調査を進めることとした。

 ジャレド・ダイヤモンドが『銃・鉄・病原菌』で示したように、人類の歴史上、感染症流行は人口集住地域で発生し、戦争以上に多くの命を奪ってきた。また、3年前のNHKスペシャル「ウイルス大感染時代」が、現在のコロナ禍をきわめて正確に予測していたとして話題となっている。つまり、都市への集中を進めてきた現代社会の感染症リスクの高さに対しては、以前から何度も警鐘は鳴らされてきたのだ。

 こうした感染症に備え、我が国では「感染症予防法」を定め、国際空港周辺や各都道府県に「感染症病院」を指定し、「感染症病床」を配備してきた。
 そして、新型コロナウィルス感染者も、当然ながら感染症病床に入院することとなっていた。しかし、横浜港に寄航したクルーズ船内で多数の感染者が出て感染症病床が不足し、急遽、その他の病床も用いられることとなった。その後の感染拡大に伴い、全国では結核病床や一般病床の他、療養病床代わりにホテルなども活用して対応してきた。
全国の感染症病床数(年度推移).png

 こうした現状認識の下、我々はまず、全国の感染症病床の経年変化を見た。
 全国的には2004年度の1,690床で底を打った後、その後は2017年度の1,876床まで微増傾向にある。

地域別感染症病床数と人口.png 次に、経年のタテ比較だけでなくヨコ比較、つまり地域間比較を行った。都道府県別の感染症病床数を人口と対比させた結果、人口に応じて感染症病床が配置されていることがわかった。


 ただし、我々の関心は、人口集住と感染症リスクである。
地域別十万人当たりの感染症病床数と人口密度.png そこで、改めて、都市化や集住度合いを反映した人口密度と人口当たりの感染症病床数を対比させたところ、人口密度が高い地域でありながら、感染症病床数の密度が比較的に少ない地域が目立った。具体的に見ると、東京都・大阪府・神奈川県といった大都市である。
主要都道府県の感染症病床数(年度推移).png
 そこで、これらの大都市圏について経年変化を見てみた。埼玉県・千葉県・愛知県などは増加傾向にあるが東京都や大阪府は横ばいとなっており、増えていない。
 なお、グラフには表れていないが、その後、東京都は2017年度の145床から直近の2019年度には118床と、大幅に感染症病床数を減らしてさえいる。


 国の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で2月29日に西浦博教授が示した、いわば「最悪のシナリオ」では、ピーク時の入院患者数を全国で22万人以上、うち重症患者が7,500人以上と想定していた。しかし、不幸中の幸いというべきか、現在までのピークと思われる5月5日時点でも「入院治療を要する者等」は12,080名で済んだ。もっとも、この12,080には自宅待機やホテル隔離で大丈夫な軽症者も含まれているため、単純に12,000床を超える感染症病床が必要だという意味ではない。とはいえ、現在の感染症病床1,871床(2019年度)では全くおぼつかない。
*新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第5回)参考資料1 新型コロナウイルス感染症の流行シナリオ(2 月 29 日時点)日本医療研究開発機構 感染症実用化研究事業(新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業)「感染症対策に資する数理モデル研究の体制構築と実装」(研究開発代表者:西浦博)報告書

 そして、感染症病床の不足が、院内感染やいわゆる「病院クラスター」の発生につながっていた可能性はないだろうか?

 感染症病床は、他の病室に空気が流れ込まない陰圧(負圧)機構や感染管理区画など感染防止のための一定の設備や専門性を持った人員を備えており、整備には追加的投資が必要となる。
 国は2014年から「地域医療構想」の名のもとに病院の統廃合や病床の削減を進めてきたが、少なくとも感染症病棟については削減予定の一般病床を改修・転用するといった政策転換が求められるように思われる。

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