スペインかぜとの戦いから、コロナとの戦い方を学ぶ

1919FluVictimsTokyo.jpg 昨日の記事「コレラとの戦いから、コロナとの戦い方を学ぶ」に続いて、今度はスペインかぜとの比較だ。
※写真はスペインかぜ当時のマスクを透けた人々の姿。Wikipediaより引用

 スペインかぜの際の状況について昨日、WINPECグローバル経済史研究部会「感染症の社会経済史的考察」(鎮目雅人 早稲田大学政治経済学術院) を聴講する機会を得た。講演資料は公開されていないが鎮目先生の論文は公開されている。

 スペインかぜは1918年から数年にわたって流行したH1N1型インフルエンザだった。日本でも約2400万人が感染し、35~45万人が死亡したと言われる。当時の人口は約5500万人であり、国民の半数近い方々が感染した計算だ。致死率は1.6%前後となる計算だ。

 とはいえ、今回の報告によれば、日本はアジアの中では死亡率が低く、欧州並みだったようだ。日本統治下の朝鮮と台湾も他のアジア諸国よりは死亡率を低く抑えられていたという。
 この際も、現在のように密集を避けることや、手洗いうがい、マスクをすること、距離をとることなどは啓発されており、対策としては似た面があった。当時の啓発ポスターなども紹介され、興味深かったし、公衆衛生の基本は時代が移っても大きくは変わらないのかもしれない。

 一方、最大の違いは、現在のコロナ対策では死亡者を最小にするために経済活動を犠牲にしているが、スペインかぜ当時は「インフルエンザで死ぬのは仕方のないこと」というような意識があり、都市封鎖、移動制限、営業自粛などの方策は取られなかった模様だ。あくまで公衆衛生分野の問題であり、経済活動縮小という総力戦の発想はなかったと見られる。

 人権意識や命の重さが当時とは異なるし、コロナが高齢者の死亡率が高い一方で、スペインかぜは若年層の死亡率が高かった(年配者には過去の感冒流行により一定の免疫があった可能性が高い)という違いもある。そのため評価は難しいが、興味深い報告だった。

 なお、スペインかぜを現在の人口で考えると5500万人が感染し、80~100万人が死亡した計算だ。コロナについてはスペインかぜよりも致死率が高い(1.9%前後か)のが日本の実情だ。コロナも対策を誤るとスペインかぜ以上の規模で死者を出す可能性がある。
 また、スペインかぜと同様に数年間の感染流行が続く可能性は想定しておかなければいけないだろう。

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