上地市長の予算案2020を評価する

Questioning20191129.png 明日は、横須賀市議会の本会議で来年度の予算案2020の賛否を態度表明することとなる。

 私は、本当ならば議会で討論をしたい。しかし、横須賀市議会の慣行として伝統的に会派拘束性が強い。そのため、私のように会派に入っている議員が討論をすると、それは「会派の意思」と見なされてしまう傾向がある。
 そのため、私個人の考えは、ここで表明しておきたい。

●100%満足できる予算案などあり得ない
 まず大前提として、39万人の市民はそれぞれ違った価値観を持っており、全市民が満足する予算案というものは、そもそもあり得ないと思う。
 だから、市民から信託を受けた議員という立場から、予算案を見渡して、課題だと感じる点と評価できる点を天秤にかけて、最後は自らに託された民意を想像し、市民に選んで頂いた自分のモノサシを信じて、決断することとなる。

●賛成を考えている理由
 今回の予算案2020については、私は評価できる点のほうが大きいと判断した。そのため賛成したいと考えている。
主な課題点
1.オリンピックのチケットは民間に任せれば?
2.スクールコミュニティは整理しよう
3.保育料無償化は後でいい

主な評価点
・ムダを削って、活きたお金を投資

 これらを以下、それぞれご説明したい。

●課題点1:オリンピックのチケットは民間に任せれば?
 第一の課題は、オリンピックの「市民向けチケットの販売事業」だ。
 オリンピックは、巨額の放映権料とスポンサー料を基に、巨大な規模で実施される商業的イベントだ。基本的な性質としては、IOCという民間のNPO団体が開催する、あくまでも民間の祭典だ。意外かもしれないが、調べたらそうだった。
 もちろん、国家が誘致活動をするため、少しは公的な性質を持つが、言ってみれば横浜市がパシフィコ横浜に誘致した国際会議と本質的には変わらない。
 今回、本市が実施しようとする事業は、横浜市が誘致した国際会議の人気が高いからと言って、その入場券をわざわざ横須賀市が買って、売れ残りのリスクも負いながら、原価で市民に転売し、その事務経費や郵送料まで横須賀市が負担するようなものだ。本質的には何も変わるところがない。
 確かに、オリンピックには人気があり、チケットを手に入れたい市民も多いだろう。しかし、オリンピックのおかげで資材価格や人手不足が起こり、本市でも公共事業の入札不調や入札価格上昇が起こったことを私は忘れていない。また、「復興オリンピック」などと銘打ってダシに使っておきながら、逆に被災地の復興の足を引っ張ることになったことも、福島県出身の私としては絶対に忘れない。

 そんなオリンピックのチケットを、本市が167万円もの送料や手数料を負担して市民に転売することは、ふと冷静に考えてみると市役所の仕事ではないだろう。
 市内で開催される種目はないため、経済活性化という名目も立たない。購入対象者を絞ってもいないため、「青少年に本物を見せる」といった教育的効果もない。観戦するだけなので、生涯スポーツの振興にもならない。
 たとえ少額とはいえ、私には何ひとつ公的な政策目的を見出せない。「熱にうかされないで、ちょっと冷静になりませんか?」と思うのだ。

●課題点2:スクールコミュニティは整理しよう
 第二の課題は、スクールコミュニティ整備事業だ。
 このモデル事業は、2018年度から実施され、2020年度で3年目となる。しかし、実態として動き出したのは昨年10月からであり、半年の実施にとどまっている。しかも、この間、関係者の間で様々な議論があり、決して順風満帆とは言えない状況だ。そのため、モデル事業としての効果測定や課題の抽出ができたとは、とても思えない。
 にもかかわらず、来年度、対象校を2校増やそうとしている。増やすにあたっても、明確な企画案は示されていない。そして、議員同士でスクールコミュニティ整備事業について議論すると、異口同音に「何のための事業なのか? 誰のために何をする事業なのか? よくわからない」という声があがる。

 私が思うに、本事業には、(1)子どもたちの育ちに地域が関わる教育的側面と、(2)学校の校舎をコミュニティの拠点として使う施設的側面の、大きく2つの方向性があると思う。
 (1)教育的側面については、総合学習の時間での郷土教育のほか、放課後や休日のプログラムなどを地域と連携して試行錯誤しながら、できる範囲で行っていけば良いだろう。しかし、これらは学校現場の負担とならないよう、慎重に進めたほうがいい。そして、地域ごとに学校を取り巻く環境も違えば担い手も様々で、地域性に応じて変わってくるはずだ。
 (2)施設的側面については、状況が全然違う。小学校の中にコミュニティの拠点を設置するものであり、浦郷小のように余裕教室がない学校は今は無理だとしても、ほとんどの学校では迷うことなく全小学校に順次設けていけばいいはずだ。
 この2つの方向性については、分けて考えればいい話なのだが、混同したまま議論が進んでいるように思う。
 ともかく、事業目的や成果指標、効果検証などをしっかりするよう、釘は刺しておきたい。

●課題点3:保育料無償化は後でいい
 第三の課題は、保育料の無償化だ。
 私が属する会派・よこすか未来会議では、マニフェストに「待機児童ゼロを実現します」と掲げている。それは、このまちの将来のためにも、保護者のためにも、保育を必要とする子どもたちのためにも、それが喫緊の課題だと認識しているからだ。しかし、2020年度、待機児童は解消できない見込みだ。

 予算案2020では、2019年度同様に国の保育園無償化に市が単独で上乗せし、無償化対象を拡大する案が提示されている。確かに、保育料が無料となれば保護者は助かるだろう。
 しかし、保育は元々が福祉的な措置制度だ。この観点では、所得の高い世帯を経済的に援助する必要は全くない。ただし、その一方、少子化対策という観点では、無償化に一定の効果は期待できる。
 とはいえ、施策の優先順位としては明らかに間違っている。2019年度については、「待機児童解消に全力を尽くす」旨の説明があり、期待して予算案を可決した。しかし、結果としては10月1日時点で140人にまで膨れ上がった。これが現実だ。

 冷静に考えればわかるが、保育園に入れない子がいるそばで、運よく入れた子だけ無料となるのは、おかしいと思う。倫理的にも道義的にも筋が通らない。しかも、「タダで預かってくれるなら、ちょっと働こうかな」というニーズを、無償化によって掘り起こしている可能性も高い。
 もちろん、「働いて社会参加したい。収入を増やしたい」というニーズを満たすことも大事だ。しかし、保育が必要なのに預けられない切実な人が、目の前にいるのだ。無償化にかけるお金があるならば、まず保育園が必要な人に保育を提供することに注力したほううが市民満足は高まるだろう。

 せっかくなので、私が考える対案も示しておきたい。
 まず、大前提となるのが保育してくれる方々の存在だ。
 保育士確保はどのまちでも苦心している。背景として、保育士の待遇が全業種の平均給与よりも低いことも大きいだろう。
 そして、足元を見てみれば、市立保育園で働く保育士の待遇が低いのだ。ちょっと古い数字だが、抜本的には変わっていないと思われるので、2014年度の本市の調査結果を挙げよう。これによれば、12年前後働いている標準的な正規職員の保育士が513万円程度であるのに対し、非正規の保育士は同じく12年働いた方でも303万円となっていた。これに加えて、正規の場合、約215万円の退職金も支給されるが、非正規の保育士には退職金などない。※ただし、2020年度からは非正規公務員が「会計年度任用職員」という制度に替わり、退職金も出るように国が制度変更してくれた。
 しかし、同じように働いており、保護者から見ても誰が正規か非正規かなどわからない。同じように子どもに向き合ってくださっている。政府が推進している同一労働同一賃金の考え方から見ても、違和感がある。
 本来ならば、まず、労働契約法の精神に則り民間同様に、5年を超えて働いている非正規職員については、本人が望めば無期雇用に転換すべきだろう。地方公共団体には民間より重い責任が求められるはずだからだ。そのうえで、現在の正規職員と非正規職員の業務の違いを精査し、同一労働の部分には同一賃金で報いるべく待遇改善を図るべきだ。

 「先ず隗より始めよ」という言葉がある。「いい人材を集めたい」と言う王様に対して、「私の待遇をよくすれば、あの人でもあれだけよくしてもらえるのだから自分も応募してみよう、とみんな集まってくるはずだ」と説いた中国の故事だ。同様に、「近き者よろこび、遠き者来る」という言葉もある。遠くから保育士を集めようと努力するまちもあるが、まずは足元の市立保育園の非正規職員の給与を増額して、市内の待遇改善を牽引することが、本市における保育士確保の王道ではないか。

 また、保育士確保と並行して、受け皿となる小規模保育を公設公営で整備すべきだ。
 2020年度は、民間にお願いして127名分もの保育園定員を確保頂ける見込みと伺っている。本当にありがたいことだ。しかし、少子化の中、いずれ保育ニーズもピークを迎えるだろう。それを考えれば、民間の拡大投資にも限界がある。
 待機児童を真に解消するには、とりわけ0~2歳児の定員を、ある程度ザブザブに増やす必要がある。多少の余剰は仕方ない。しかし、民間ではなかなか余剰の人員や施設を抱えることができない。つまり、民間頼みでは待機児童を解消できないだろう。この余剰分は、市立の小規模保育園を調整弁として生み出すべきだ。ただし、余剰分の施設や人員は、一時保育や病児保育などにも転用できる。複数事業を手掛けている本市にとっては必ずしもムダにはならないだろう。

●評価点:ムダを削って、活きたお金を投資
 一方で、評価すべき点も多い。
 ザックリ言うと、財源を生み出すこと(行財政改革)と、生み出した財源を市民サービスに回すこと(投資)がきちんと回っている。コストカットばかりで投資ができない首長や、バラマキばかりで放漫財政になる首長もいるが、私の見立てでは上地市長はバランスがいいと思う。

 (1)行財政改革について、まず見てみよう。
 とりわけ、故・山城保男議員が主導した電力調達の入札化は、8年前に市立学校72校で導入したものの、その後は広がっていなかった。これが2020年度、いよいよ市長部局で初めて導入される。これにより、デメリットなしでコスト削減ができる。前市長は、市内に立地する電力会社関連企業に忖度して踏み出せなかったが、上地市長は、市内企業は大事にするが調達は別の話と、きちんと合理的に判断できる方のようだ。ちなみに、これによって同時に市役所の脱原発化が進むのもうれしいことだ。
 加えて、私が受けた苦情を元に会派で調査を進め、長谷川議員から提案していた残骨灰処理の業務委託の見直しも採用されることとなった。これが第3次行政改革プランの平成31年度改定に盛り込まれ、年間600万円以上の歳入増加が見込める。
 前例踏襲を廃して果断に行財政改革を進める市長の意志がよく表れていると思う。

 (2)投資の姿勢について、次に見てみよう。
 とりわけ、過去記事に書いた養育費の受取り保証支援制度については、自由民主党をはじめ小幡議員や私がしてきた提案にも応えるもので、大いに歓迎したい。全国でも事例が少ない中、必要な施策には率先して取り組む上地市長の進取の気概がよく表れた事業だと感じている。

●まとめ
 100%満足はしていない。だが、議会内外で提起された市民の声に積極的に応え、政策に反映する上地市長の姿勢を随所に見ることができる予算案だと私は評価した。
 そのため、予算案2020には賛成するつもりだ。

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