【委員会視察報告:前編】ユニークな場所を使った集客を横浜に学ぶ

●委員会視察とはどういうものなのか
 1/20・21の行程で議会の総務常任委員会として視察に伺った。もともと10月に3件視察を予定していたが、台風19号に伴って延期し、再調整が叶った横浜市とNTT西日本さんにお邪魔することとした。
 会派視察は、会派としての政策づくりの参考とするために、会派内で議論して必要な場合に視察を組む。
 同様に、委員会視察は議会としての政策づくりの参考とするために実施するものだ。ただし、現在は先進各市のような「政策形成サイクル」として体系的に政策を具現化しようと取り組み始めたものの、広報広聴会議による市民意見の聴取、委員会視察による調査、政策検討会議での政策立案が、それぞれバラバラに動いており、十分なサイクルとはなっていない。だから、従来の「各委員のその時点の関心事を挙げてその中から絞り込んで予算範囲の3日以内で行けるだけ行く」という方式も悪くはないが、「政策形成サイクル」を目指す今となっては連動させるべきだろう。この点については、今後、議会内で改善提案をしたい。

●なぜユニーク・ヴェニューなのか
 今回、一日目には横浜市でユニーク・ヴェニューの展開について学んだ。
 ユニーク・ヴェニューはフランス語由来の英語であり、“Unique Venue”を訳すと「独特な場所」だろうか。
 観光庁の説明がわかりやすい。
ユニークベニューとは、歴史的建造物、文化施設や公的空間等で、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場のことを指します。

 では、どんな問題意識でユニーク・ヴェニューについて視察したのか?

 ちなみに、私は本年度、総務常任委員会の委員長を務めているが、委員長は基本的に委員各位の意見を取りまとめる役割であり、以下はあくまで私個人の問題意識だ。

 横須賀市は「観光立市」を掲げている。地域産業が縮小した穴を観光で埋めるため、観光で食べていくことにした。その後、延べ観光客数は大きく増えていないが、消費額は増加の兆しが出ている。議会が観光立市推進条例を制定した2014年の45億円から2017年には56億円まで増えた。2018年度は未発表だが、もっと増える見込みだ。
TouristAndConsumption2017.png
 ただし、横須賀市の観光には大きな課題がある。それは、観光消費額が小さいことだ。
 原因は明らかで、日帰り観光が中心で宿泊が少ないことにある。県内平均は観光客の27%が宿泊客だが(神奈川県観光客消費動向等調査の2018年度)、本市は4%にとどまる(横須賀市統計書の2017年度)。横浜でも20%、箱根・湯河原地区に至っては84%が宿泊であり、本市は川崎市の2%と並ぶ水準だ。そして、宿泊してもらうとホテルや飲食代で消費額が一ケタ変わる。本市だけの推計が見当たらないので鎌倉市を除く三浦半島で見ると、日帰りの単価が4,868円に対し、宿泊の単価は14,012円となっている。ちなみに、県内平均では日帰りが5,286円、宿泊が25,030円となっており、川崎と県央地区と鎌倉市を除く三浦半島の単価はぐっと低いようだ(神奈川県観光客消費動向等調査の2018年度)

 では、宿泊客を増やすには何が有効だろうか?
 泊まらないと参加できない早朝や夜にイベントを企画するなど様々な方法があるようだが、数日にわたる学会や研修会などの誘致は、まとまった数の宿泊を獲得できて魅力的だ。いわゆるMICEである。なお、MICEはMeeting・Incentive tour・Convention/Conference・Exhibitionの頭文字で、本市におけるMICEについては、過去の記事でも提案している。ご覧頂ければ幸いだ。
→「ざんねんなたてもの? 児童図書館はMICEにしちゃおう」

 そして、こうしたMICE誘致の目玉となるのがユニーク・ヴェニューと言われる。MICEの企画者も、参加者に喜んでもらえるよう様々な趣向を凝らすものだ。普段なら入れないような場所でパーティ等ができるとなれば、売りになる。

 その点、本市のユニーク・ヴェニューは、現状どうなっているのか?
 ????■年に横須賀美術館でのウェディングの事例があったようだが、他には聞かない。猿島での音楽イベントの事例もあるが、猿島は公園であり順当な利用方法と言える。
 会派としては、観音崎公園にある県所有の旧観音崎砲台火薬庫3棟の活用を「政策提言2020」に盛り込んでいるが、実現していない。

 現時点で私が想定する有力なユニーク・ヴェニューは次のようなものだ。
●横須賀美術館(市所有) パーティ/ウェディング
●戦艦三笠(防衛省所有) パーティ/ウェディング
●旧観音崎砲台火薬庫(県所有) 宿泊
●浦賀ドック&工場(民間所有) パーティ/ウェディング
●旧横須賀鎮守府長官官舎(防衛省所有) パーティ/ウェディング
●走水小学校(市所有) パーティ/宿泊
●横須賀スタジアム(市所有) パーティ/ウェディング
●横浜F・マリノス練習場(市所有・計画中) パーティ/ウェディング
●東京湾フェリー(民間所有) パーティ/宿泊

 観光客誘致の勘所を学ぶべく、横浜市に伺った。

●横浜市のユニーク・ヴェニューの取り組みからの持ち帰り
 横浜市内のユニーク・ヴェニューは、日本有数の集積度なのではないか。

 誰もが知っているのは、みなとみらいのドックヤードガーデンや赤レンガ倉庫だろう。私もライヴイベントに行ったことがあり、開放感があって気持ち良かった。
 そのほか、横浜能楽堂・三渓園・横浜美術館・大本山總持寺・伊勢山皇大神宮・八景島シーパラダイス・神奈川県庁・隣花苑などなど、数えきれないようだ。
→日本政府観光局
→神奈川県「Unique Venues of KANAGAWA」

 横浜市の担当者の方々のお話を伺って、本市に持ち帰ることのできた洞察は次の5点だ。

(1)世の中にはMICEに強い代理店がある
 世の中には、PCO(Professional Conference Organiser)と呼ばれる、会議運営サービス会社があるらしい。なんでも、日本では外資系を含め4社がしのぎを削っているという。
 本市としては、企業や学会などに直接売り込むだけでなく、こうした代理店にもお願いして誘致することになるだろう。

(2)外国人には「和」やアートが人気
 外国人が多く集まる国際会議などでは、横浜能楽堂・横浜美術館・三渓園などでのレセプションパーティが人気だとのこと。日本らしさや芸術の雰囲気が好まれるらしい。

(3)値付けは考えどころ
 民間の施設であれば、その施設の考えで使用料が決まる。では、市が保有する施設の場合は、どうすべきだろうか? 横浜美術館では百万円単位の使用料とも聞く。必ずしも、使用料で儲けなくとも、市内にお金が落ちることを考えた低廉な価格に設定することもあり得る。
 なお、手続き上の話だが、横浜市の施設では行政財産目的外使用料という形ではなく、何らかの名目の使用料をとっているとのことだった。

(4)ホテルからの距離も大事
 あまり宿泊場所から遠い場所でのレセプション・パーティ等は好まれないようだ。たとえば、横須賀美術館との組み合わせは観音崎ホテルだろうし、戦艦三笠ならばメルキュールホテルを始めとした中央地区のホテル群ということになろうか。
 とはいえ、三浦半島地域で最もMICEを誘致しやすいのは湘南国際村だろうが、いかんせん本市内ではない葉山町側であるうえ、立地が良くない。本市にお金が落ちない場所だ。本市として積極的に使うことはあるまい。
 なお、私はスペインで古城に泊ったことがあるが、宿泊型ユニーク・ヴェニューならば、この点は気にしなくていいだろう。

(5)委託契約でも想定しておくべき
 横浜F・マリノス練習場はおそらく民間に管理委託することになる。こうした施設では、予めユニーク・ヴェニューとしての利用を想定して契約条項に盛り込んでおかないと、「管理契約上使えません」というお断りをしなければならないかもしれない。

●まとめ
 視察して一番強く感じたのは、ユニーク・ヴェニューに過度な期待はできないということだ。
 はっきり言って横浜とは受け入れられるMICEの規模が違う。また、使えるユニーク・ヴェニューの質と規模も段違いだ。つまり、本市は横浜では拾えない比較的小さな学会や企業合宿などをとっていかなければならない。だから、単価が見合わないからPCOも入ってこないかもしれない。本市では多くの場合、直接、観光協会や市職員が営業しなければならないだろう。

 とはいえ、いざ引き合いがあったら使えるよう、ユニーク・ヴェニューの準備だけはしておく必要があると思う。また、横浜が相手にしないような個人のウェディングや宿泊のユニーク・ヴェニューも積極的に取りに行くべきかもしれない。
 ただし、よっぽど大きな学会等じゃなければ、あまり弱気の値付けはする必要がない。宿泊型やウェディングはそれ自体でお金を落としてもらわないといけないので、しっかりと頂くものは頂く値付けとすべきだろう。

 以上で、委員会視察報告・前編を終える。

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