【会派視察報告:後編】コミュニティバスの色々な方式を朝倉市に学ぶ。

 会派視察2日目には福岡県朝倉市に伺った。

■なぜ朝倉市に伺ったのか?
Asakura.jpg 朝倉市は、かつて邪馬台国の中心だったという説もあり、旧・秋月藩の城下町でかつては秋月県の県庁所在地だったという。
 しかし、そんなかつての繁栄とは対照的に、現在は苦境に立たされている。かつて8万人近くいた人口が、今や5万人まで落ち込んでいる。特にここ10年が急減している。そこへ追い打ちをかけるように、2017年7月の九州北部豪雨で多くの人命を奪われ、道路などのインフラも大きな被害を受けた。

 この朝倉市は、横須賀市の2.5倍の広さを持ち、人口は1/8。つまり、人口密度は本市の1/20となる。加えて、農業者が多く65歳以上の免許保有率が62%とのことで、自家用車を持つ割合も多いと思われる。本市から比べると、公共交通を導入するには極めて効率が悪い。
 そこへ、かつて西鉄バスと甘木観光バスが運行していた複数の路線が、人口急減に伴って採算が合わなくなり、相次いで廃線となった。これに対応し、交通空白地域を解消するために、市がコミュニティバスによって代替することとした。現在、様々な事業手法で10路線ものコミュニティバスを市が運用している。
 一方、我が横須賀市は、集住する住宅団地も多く、コミュニティバスを導入しやすい環境だ。しかし、市が関与するコミュニティ交通は一路線たりともない。現在は浜見台で住民と事業者が立ち上げた「ハマちゃんバス」のみだ。

 そのため、大変失礼ながら、苦境の中で歯を食いしばって地域公共交通を維持している朝倉市から学べるものは多いのではないかと考えて伺ったのだ。また、朝倉市はスクールバス共用を含め、同時にいくつもの方式を展開しており、一粒で二度おいしいとにらんだ。
 加えて言えば、本市では将来的に、いくつかの小中学校を統廃合せざるを得ないだろう。その際、いくら文部科学省の基準で4kmは徒歩圏としていても、場所によってスクールバスを走らせる必要があると私は考えている。その場合、朝倉市のようなコミュニティバスとの共用化は検討すべきだろうと考えている。

■朝倉市の事業手法
 朝倉市の手法は様々だが、全てを総称してコミュニティバスと呼んでいる。
 定時定路線型の「コミュニティバス」が1路線4コース、事前予約型の「あいのりタクシー」が8路線、事前予約型でスクールバスを共用する方式の「あいのりスクールバス」が1路線、計10路線ある。いずれも公設民営でタクシー会社に運行委託している。
 朝倉市では、自宅半径500m以内に交通手段がない地域を交通空白地域と定義しているが、市営のコミュニティバスに残存する民間路線バス路線を加えると、これらにより居住地域の98%を網羅するという。なお、福城線・馬田線・杷木東部線の3路線は、かつて路線バスの無かった場所だが、「あいのりタクシー」によりカバーすることとなった。また、山間部・田園部では、足が悪い人のためにバス停以外でも手を挙げれば乗車できる「フリー乗降区間」を設けている。

 正直言って、方式も様々なら、定時運行も予約制もある。料金体系もそれぞれ異なり、我々のような市外の人間でなくとも、住民にとってもわかりにくいようだ。ただし、朝倉市としては、車が無くても最低限の生活ができる交通空白地域解消を最優先に考えており、利便性が低いことは織り込み済みのようだ。それに、ほとんどの人は自宅近くの1路線しか使わないので、いったん慣れてしまえばどうということはない。

 路線やコースの設定にあたっては、17地区あるコミュニティ組織ごとに協議して地域の合意形成を経たうえで、法定会議の公共交通会議に諮ってコースを決めているという。
 ちなみに、利用者アンケートの結果では、9割の利用が買い物と通院のためだそうだ。

■事業費と採算性
 民間タクシー会社に委託するにあたっては、2階建ての委託料体系となっている。基礎的経費に加え、実際の運行距離に基づいた運行比例経費を、委託料として各事業者へ支払う契約となっている。運賃収入は、実態として市が歳入する格好だ。正直言って、ドライバー不足・人件費上昇・ガソリン価格上昇などがあるため、旧路線バス時代よりも経費は上昇しているという。

●全体
 2018年度の運行経費は4611万円。乗降客数は23,328人とのことなので、1人1回の乗車あたりで1,977円かかっている計算となる。かなり高めではないか。
 運賃収入は255万円なので1人1回の乗車あたりで109円。多くの路線が200円(区間によっては300円)だが、各種福祉手帳を持っていると無料とのことで、半分近い方が無料で乗っているのだろう。この運賃収入を運行経費で割ると採算性がわかるが、5.5%だ。圧倒的に不採算だということがわかる。
 運行経費から運賃収入を除いた市の持ち出し分は年間4356万円となる。1人1回の乗車あたりで1,867円であり、19/20もの費用を行政が負担してあげている格好となる。
 だからといって、運賃を上げると離れる乗客もいる。おそらくこれ以上の値上げは望めない。そうなると、経営改善の方策は、乗客増だ。多くの乗客に乗ってもらうために、地域と握って必要に応じて路線や運行時間を見直すことが重要で、まさに朝倉市はそうしているが簡単には上向かないようだ。
 なお、市からの持ち出し分を朝倉市の人口で割ると、市民1人あたり年間825円を払って10路線を維持していると言える。

●路線別
 路線別ではかなり開きがある。2018年度の1人1回の乗車にかかる委託料(市の持ち出し分)は次のとおりだ。
1 上秋月・安川線 3,168
2 馬田線 1,250
3 福城線 1,297
4 長淵線 1,988
5 矢野竹線 2,212
6 美奈宜の杜線 1,925
7 高木SB 0
8 朝倉地域CB 1,523
9 黒川線 3,359
10 杷木東部線 737

 なお、高木スクールバスの委託料が0円なのは、教育予算で運行しているスクールバスに年間わずか195人が無料で相乗りしている格好であり、事業費を発生させていないためである。また、杷木東部線が安いのは、何らかの理由で2018年度の委託料が例外的に安くなったためであり、前年度は2,141円だった。

 意外だったのは、利用者23,062人のうち約4割の8,610人が利用する唯一の定時路線・朝倉地域コミュニティバスでさえ、かなりの出費を迫られていることだ。運賃収入も運行経費の4.1%。行政がコミュニティバスに参入することには覚悟が迫られるのか。
 とはいえ、過去に視察した近江八幡市では、人口密度が横須賀市の約1/8、朝倉市の約2.5倍という中間にあるが、1人1回の乗車あたり517円の市からの持ち出しで運行していた(blog中の401円は国補助金を除いた額)。近江八幡市の負担は3/4という状況だ。
 →【委員会視察報告】近江八幡の市営バスと横須賀のNPOバスを比べて

 なお、定時運行の朝倉地域コミュニティバスのみの委託料は年間1311万円だ。乗降客数は8,610人。
 近江八幡市は定時運行12路線で6094万円だから、一路線平均508万円。乗降客数117,898人を12路線で割ると9,825人。 とはいえ、近江八幡市が朝倉市の2.5倍の人口密度であることや、そのため車両広告も成立して副収入があることを考えれば、朝倉市がむやみに高いとは言えないだろう。
 そして、本市の人口規模と人口密度と高齢者数を考えれば、もっと採算性を上げられる可能性は高いと見た。

■横須賀市への持ち帰り

●ルシア号の失敗に懲りるな
 横須賀市では、ルシア号という福祉バスを走らせていた。年間3000万円■の運行委託費をかけ、2010年度の乗客数は約33,000人。1人1回の乗車あたり910円近くかけていたこととなる。各種福祉手帳を持つ方を対象に無料で運行していたので単純比較はできないが、かなり効率の悪いお金の使い方をしていたこととなる。
 しかも、朝倉市が4356万円で10路線、近江八幡市が6094万円で12路線を維持しているのに対し、ルシア号は3000万円を投入しながら週1日だけ4便のバスを10コース展開するという不思議な運行形態だった。これでは、もはや路線とは言えない。大失敗の事業だったので、2012年4月に廃止した。
 ところで、「あつものに懲りてなますを吹く」ということわざがあるが、横須賀市ではこのルシア号の失敗もあってコミュニティバスに極端に後ろ向きだったのではないか。強調しておきたいのは、本市はコミュニティバスに失敗したのではない。ルシア号に失敗しただけだ。

●コミュニティティバスは、土木部に任せるな
 土木部に交通計画課があり、ここが地域公共交通を担当することとなっている。しかし、はっきり言って、公共交通は都市計画の一環だ。土木部にあると、道路の整備計画を立案ための交通量の調査などに比重が行ってしまっていたように思う。交通計画課を、都市部か政策推進部に移せ。それができないなら、公共交通の所管だけでも移せ。

●車両はワンボックス車に決まり
 使用する車両については、ワンボックス車の一択だ。
 朝倉市では、路線によってはタクシー車両を転用したセダンもあるが、カートを押しながら歩く高齢者は乗りにくいという。

●「乗らないなら廃止」という横浜市型の仕組みを導入せよ
 コミュニティバスには公費を投入することとなる。
 その際、どこにコミュニティバスを走らせるか、は公平性を保たなくてはならない。「なぜあそこの団地には導入したのに、うちの団地には走らせてくれないの?」ということが起きてはならない。
 朝倉市でも、路線バスが走っていた地域の住民には「あって当たり前」の感覚があると言っていた。そのため「乗らないと無くなりますよ」ということを、どう市民に説明していくかが課題だとのことだった。
 そのため、横浜市の「地域交通サポート事業」に倣って、手挙げ方式で実証実験をすると良い。
 町内会・自治会等の総意として導入を求める意思表示が成された地域には、初めから人口規模などで無理だとわかっているところは足切りしたうえで実証実験を行う。実証実験期間中に、ちゃんと地域住民が乗ってくれて一定の採算性を確保できる路線だけ本格運行に移行する。全然乗る気がなかった地域は市として応援せず勝手にしてもらう。
 こういう、始める時は温かく支援し、住民に「乗り支える」意識が低いところはドライにバッサリ切り捨てる仕組みが本市では必要だと思う。

 以上で二日間の会派視察報告を終える。

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