【会派視察報告】前編:データに基づく文化は根付くか~前橋市~

 2019年10月9日~10日の旅程で、以前から関心を持っていたテーマについて髙橋議員が手配してくれたため、会派の有志で同道した。
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 9日は、前橋市に伺い、EBPM(科学的根拠に基づいた政策立案)の取り組みの一端を伺った。

■前橋市を視察した理由
 群馬県の県庁所在地である前橋市は、人口が減っており、今後も減り続ける見込みだ。横須賀市と同様の状況と言っていい。
 成長局面では、財源も増えるので様々な課題への対応もしやすいが、減退局面ではそうはいかない。複数の課題を総合的に考えて全体最適を目指さなければならない。また、行政が何でもやるのではなく、「情報は出すからあとは民間にお願いします」という公民連携も必要となる。
 こうした中、コストを削減したり企業かNPOかを問わず民間の力を借りたりするには、行政はデータを公開しなければならない。オープンデータやオープンガバメントの文脈となる。そして、公開はしないまでも、役所自身もデータを使って効率的・合理的に政策を立案し、ムダのない税金活用をしなければならない。そこでEBPMとなる。
 とはいえ、EBPMなどと改めて横文字で言わなくても、そもそもテキトーに税金を使ってはいけないのである。きちんと根拠がなければならないのは当たり前の話だ。しかし、横須賀市は実際にできていないと思う。かつては正当だった根拠も、時代とともに薄れ、惰性で使っているお金もまだある。切り込んではきたが、まだまだメスは入れられる。そこで、先進的な前橋市の事例を伺いに行った。

■「官民ビッグデータを活用したEBPM推進」の始動
 前橋市が取り組むきっかけは、市長のネットワークだった。ビッグデータを使うフィールドを探していた事業者をマッチングしようとする国から声をかけられ、市長が手を挙げた。その結果、三菱総研・帝国データバンク・東京大学空間情報科学技術研究センターと前橋市で「超スマート自治体研究協議会」という組織を2017年11月に結成した。
 市側の担当者としては、政策部・未来の芽創造課という市長の特命課が担当となった。

■前橋市の事例
 前橋市では、次の3つの事例を紹介頂いた。
●モデルケース1:赤城山の人の流れの分析
●モデルケース2:中心市街地の人の流れの分析
●モデルケース3:電話帳データを活用した空き家の推定
 いずれも、東京大学空間情報科学技術研究センターと組んでいるだけあって、地理情報を駆使した素晴らしい成果物だった。
 とりわけ、ケース2については、自動車保有率が全国1位の群馬県にあっては、朝の通勤時間帯に慢性的な渋滞が発生していることから、有用だと思われた。公共交通の利用が低迷しているため、バスのルート設定、便数増の時間帯、輸送量の目安など、交通計画に活かせる様々な洞察が得られるだろうと思われた。

■横須賀市への持ち帰り
 お話を伺って、横須賀市に持ち帰ることのできる洞察は4点あった。

(1)できるところからやればいい
 前橋市のような共同研究の場が本市にはないため、前橋市のような精緻で感嘆するような成果物を本市が得ることは難しい。しかし、政策判断にあたって、必ずしも詳細な分析結果が必要とは限らない。事業を実施すべきか否か、たとえ定性的ではあっても、きちんとした判断材料さえ手に入れられればよい。だから、それは徹底したい。

(2)コスト削減よりも業務量削減
 市長の意を受けた特命課でさえ、行政の縦割りの中で、横串を通していくことが大変なようだ。それは、必ずしも各所管課が抵抗勢力となっているという意味ではない。近年は、どのまちでも業務量が増え、新しいことに取り組む人手不足感を抱えている。そこへ「これによって業務量やコストが下がるかもしれないから協力してくれ」と頼んでも「目の前の仕事で手一杯でちょっとムリ」と言われることは容易に想像できる。市長も忙しいだろうが、時にどちらを優先するかを示してあげなければ組織は動かないのかもしれない。そして、その意味では議会側も「これを改善してコスト削減をしては?」という提案よりも「業務量の負荷を低減しては?」という提案をするほうが響くかもしれないと思った。

(3)EBPMは行政側の政策判断だけでなく、住民間の合意形成にも役立つ
 前橋市の情報政策課では、「まえばしデータマップ」というものを整備しており、お話を伺ったところ私の「横須賀データマップ」も参考にして下さったとのことだった。マニフェスト研究所の北川先生の講演で「これからは議員もGISくらい使えるようにならないと」と聞いて、マニフェスト研究所にお願いしてGISの無償提供を紹介してもらって一念発起して取り組んだ成果物だが、こうして他のまちでも参考にして頂けたのは望外の喜びだった。
 また、その話をきっかけに新たな情報に触れることができた。情報政策課の方によると、アメリカでは固定資産税の課税情報について、この地区に年収いくら位の人が何人住んでいる、この地区の平均年収は低くこの程度だ、といった内容も、個人特定できない範囲ならばどんどん公開しており、実際に引っ越す人が参考にしているという。
 ひいてはEBPMは、行政側の意思決定だけではなく、住民間の合意形成にも有効だと言える。われわれ議会も、EBPMのためにデータを集めるだけでなく、データを提供することにも意を用いなければならないだろう。

(4)統計部門と企画部門の連携
 質疑の中でわかったのが、前橋市では情報政策課の中に統計部門があって、今後はEBPMに活かしていこうという展望を持っていることだった。横須賀市では、統計係は総務部総務課の中にあり、国に頼まれた調査を粛々とやっているが、それが有機的に市の政策判断につながっているような気はあまりしない。であれば、統計係を都市政策研究所に移すことも考えてもいいのではないか。これは少し調べてみたい。
*10/10追記 市職員の方で教えて下さった方がいて、2019年4月から既に統計係は総務部総務課から政策推進部都市政策研究所に移管していたとのこと。今後が楽しみだ。

 以上で前橋市の視察報告を終える。

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