ざんねんなたてもの? 児童図書館はMICEにしちゃおう

●ざんねんなたてもの、児童図書館。
jido.jpg 児童図書館が建て替え時期を迎えようとしています。この土地をどうすべきか?

 横須賀中央駅の目の前という好立地にありながら、児童図書館は知名度も低く、一緒に行く親も手持ち無沙汰で、木や蔦が鬱蒼としていて印象が暗く、低利用だったのは否めないと思います。

 児童図書館の機能自体は継続すべきだと私は考えています。しかし、本当にあの場所がいいのだろうか?
 正直に言って、汐入ショッパーズ・モアーズ・リヴィン・久里浜イオンなど商業施設の中にあったほうが便利ですよね。子ども向けの図書館機能は、子連れで気軽に出かける場所にあったほうが、もっと多くの子に本の世界への扉を開いてあげられると思うのです。ちなみに、それは大人向け図書館も一緒かもしれない。

 じゃあ、残ったあの好立地をどうするか?
 私は、会議室&ホテルのMICEが正解なのではないかと考えています。
*MICE:(Meeting・Incentive tour・Convention/Conference・Exhibitionの頭文字の略

●児童図書館の概要
 ざっくり言うと、駅が目の前の商業地域なので「ガッツリ使いなさいよ」ということになっています。
 高さは20m以上にしなければいけないので、マンションならば最低でも6階建て以上ということになります。そして、最高50mまでなので、マンションならば15階建てぐらいまで建てられる場所です。
【現状の状況】
●敷地面積: 約2200㎡(教育委員会901㎡・公園管理課1,166㎡・資産経営課130㎡)
●施設面積: 645.15㎡(延床面積・二階建て)
●利用者数: 340人(1日平均来館者数。2015年度時点)
●蔵書数: 約54,000冊
●築年数: 45年(1974年度竣工)

【更新にあたっての基本的条件】
●容積率: 200%以上~650%以下
●高さ制限: 20m以上~50m以下
●建蔽率: 60%(防火地域から準防火地域への境界変更により70%の適用も視野に)
●用途地域等: 商業地域。地区整備計画区域。市街地総合再生計画区域。

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●過去の利用計画
 かつて沢田市長の時代に、施設寿命は残っているけれども、あそこを再開発をする計画がありました。現在のサンコリーヌタワーとの複合化による公民連携で新図書館をつくる計画でした。
 しかし、蒲谷市長時代に、当時の吉田議員ら議会側の反対もあり、何より民間との協議が折り合わず、お蔵入りとなったようです。
 →当時のタウンニュース記事(2007年12月7日号)

●外部調査結果から見えたもの
 その後、私が昨年まで組んでいた会派・研政では、2016年に児童図書館用地についての「公民連携導入可能性調査」を、公共施設問題の専門家・南学教授を擁する東洋大学PPPセンターに委託しました。これは、政務活動費という税金を使って依頼したものです。
 →「横須賀市児童図書館用地有効活用の構想策定にかかるPPP導入可能性調査」

 同センターには、民間企業の方々も大学院生として学んでおり、彼らの知見を得られることも魅力でした。実際に現地を含む横須賀中央周辺の状況なども視察して頂いて、地域として商業施設が飽和しており、車付けの良くないあの立地には商業施設との複合施設は難しいとの洞察を得ました。そのうえで、現在の用途から大きく離れず子育て世代の満足度向上となる方向性として、子育て複合館の提案を頂いていました。

●実現しなかった子育て複合館
 頂いた報告書については、今後の参考としてもらうために市長にも提出しました。しかし、その後、2017年6月の市長選と、新市長の誕生に伴う公共施設リストラ計画の撤回などもあり、陽の目を見ませんでした。
 加えて、(仮)中央こども園も一種の子育て複合施設であるわけですが、それが再三の計画変更となり、担当部署も手いっぱいになっていました。

●伊関議員のひらめき「ホテルがいいんじゃないか?」
 その後、ある日、研政で団会議をしていたとき、児童図書館用地の議論となり、伊関功滋団長がふと「ホテルがいいんじゃないか」と言ったのです。聞いてすぐ、私は面白いアイディアだと思いました。
 もともと、観光面でもホテルは求められていました。市の観光立市推進基本計画でも、「宿泊能力の向上」は明記された方針です。だからこそ、中央の再開発ビル「リドレ」の計画時にも市としては補助制度を設け、ホテル誘致を目指していたわけです(ただし、結果的には誘致できませんでした)。
 こうした観点から、会派で東海市の病院跡地へのホテル誘致事例について昨2018年5月に視察するなど、情報収集も進めていました。

●ホテルだけじゃない仕掛け、MICE
 ところで最近、「ホテルだけではダメなんじゃないか?」と考え始めました。

 私は若い頃、ホテルというものは泊まる場所だと誤解していましたが、実は違うんですね。もちろんホテルには宿泊機能がありますが、根本的には「人と人が会って集まる場所だったのか!」とある日気づきました。結婚披露宴や同窓会から政治資金パーティや男女の密会まで、私益や共益でも使える自由度の高い会合の場所なのでした。

 この機能と相乗効果のある機能を組み合わせるべきです。
 一般的にホテルには、劇場や数人規模の会議室はありません。採算性が低いからです。しかし、それらの社会的なニーズは高い。また、公益目的ならば、安く使わせたいものです。そこで、行政と民間が手を組んだ公民連携により、1対1の打ち合わせから300人規模のコンサートまで、人と人が会うという根源的なニーズに応える一大拠点を築くことができれば、まちの付加価値をかなり高めることができるのではないだろうか?
 そして、人と人が会う場所は便利なほうがいいし、市内で最も便利な交通結節点が横須賀中央駅前です。そして、意外にも、そこには貸館がない。最も近いのがヴェルクよこすか徒歩5分ですが、国道16号の先で、なおかつ途中に待ち時間の長い信号が2つあり、心理的な距離感がある。
 ちなみに、汐入駅前には芸術劇場・産業交流プラザなどがあってメルキュールホテルと結節しているため、本当はここも有機的につなげて活用しなければいけないのです。しかし、市の中心ではないこと、芸術劇場の2ホールが大きすぎて使いにくいこと、産業交流プラザが汚いこと、メルキュールホテルの部屋が米軍需要なのか人気でとりにくいこと、3施設間の連携が取れていないこと、等々のためMICE化はできていません。

 だから、児童図書館跡地に一大カンファレンス・センターをつくろうというわけなのです。
 公民連携で役割分担をします。200~300人規模の演奏会・演劇・上映会・講演会に使える小ホール×1と5~30人規模の会議室群を横須賀市が整備し、公設民営で運営します。一方のホテルは最初から民設民営とします。定期借地権契約で、躯体の建設は民間に任せ、市はテナントとして入る格好とします。会議室群とホテルの宴会場を共用とするのか別にするのかは民間提案に任せ、いずれにしても施設としては複合化します。これによって、相乗効果が生まれ、学会や合宿研修会などビジネス旅行を一層取り込むことができます。
 なお、駅と施設は平坂をまたぐ歩道橋で結節し、新しく改札口を設けることで、施設の利便性はいやがおうでも向上するでしょう。
 そして、駅のまわりは一大飲食店街です。ホテルにお泊まり頂き、夜もお楽しみ頂くことで地域も潤うことでしょう。

●貸館の総量は削減しなければいけない
 ただし、市内の貸館全体は減らさねばなりません。貸館が過剰だからです。同時に20,000人を収容できる125万㎡を超える貸会議室・ホールを保有し、中には年間1時間たりとも使われなかった部屋すらあります。
 ですから、その分、コミセンとみんなの家をゆくゆくは全廃して小中学校に集約するなど、果断に貸館の統廃合を進める必要があるでしょう。公共施設のリストラをずっと訴えてきた私ですから、そこは揺らぎません。
 とはいえ、だからといって暮らしは不便になるのでしょうか? いえ。むしろ利便性は向上すると思います。
 はっきり言って、野比に住んでいる私でさえ、北下浦コミュニティセンターよりも汐入駅の産業交流プラザのほうが心理的には近いです。そして、堀ノ内駅で乗り換えなければいけない汐入駅よりは横須賀中央駅前に貸会議室があれば便利だと、ずっと思っていました。そして、地域の大事な会議の多くが、野比小学校か町内会館で行われます。北下浦コミュニティセンターは年に3~4回程度しか足を運ばない場所であり、無くなってもちっとも困りません。

●10年後に向けて、いまこそ議論を
 いますぐMICE計画を立案しても、建設には時間がかかるでしょう。
 だからこそ、10年後の着工に向けて、サウンディング調査で民間の意向を確認したり、3つに分かれた土地の整理をしたり、敷地内に立地する町内会館(若松会館)との調整を進めたり、教育委員会の了解を取り付けたり、準備を進めておかなければいけないと思うのです。

 なにより、児童図書館の機能をどうするのか、考えなければいけません。現在、教育委員会は児童図書館としての建替えを考えているようですが、私はあり得ないと思います。
 中央図書館も、旧館は1962築で既に68年が経過しており、待ったなしです。新館は1982築でまだ37年しか経っていませんが、旧館を廃止すれば新館だけ残すわけにはいきません。
 私は、これら図書館については、横須賀中央駅前の再開発計画の一つに組み込んで民間商業施設との複合化を図るべきだと考えています。

 児童図書館をどうするか? そろそろ議論を始めるべきだと思うのです。ご意見をお寄せ頂けますと幸いです。

この記事へのコメント

  • 荒井三枝子

    ざんねんなたてもの?
    読ませて頂きました。私も賛成します。が、一つがっかりしたのは、『北下浦行政センターはいらない』発言にはとてもかっかりです。地域になくてはならない場所だと思います。
    それより、センター手前に道路が出来たおかげで、大通りに出るときの車の右左折が大変になった事は気付いてますでしょうか?行政離れになる一つの原因では?もっと、地元を見てほしいです。
    2019年09月29日 06:33