鴨居保育園は鴨居小か鴨居コミセンに移転を

IMG_5143.JPG 2019年9月9日に襲来した台風15号により、市内で様々な被害が出た。このうち、市の施設で最も被災の影響が大きかったのが鴨居保育園だ。

 鴨居保育園は、屋根が吹き飛ばされ、施設が使えなくなり、同日から隣接する鴨居小学校で運営しているという。
 市は現在、鴨居保育園を修繕すべきか建て替えるべきか移転すべきか、検討しているようだ。
 →「園舎の屋根損壊 近隣小に間借り 横須賀」神奈川新聞2019年9月13日
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 市の経営をする人間の一人として、以下、私も対応策を整理し提言したい。

 どういうわけか、横須賀市は鴨居保育園の被災を9/12(金)16:39まで議会に報告しなかった。
 →20190912鴨居保育園園舎の損壊について(教育福祉).pdf
 私は同日昼に市民の情報提供で先に知った状況だった。明るいうちに現状視察する時間が9/14(土)にとれたので、状況を確認してきた。

 予断としては、「いずれ廃止するだろう鴨居老人福祉センターを前倒しで廃止し、隣の鴨居コミセン前の広場を園庭にすれば転用可能かなあ?」などと考えながら出かけた。


●近隣施設の概況
 まず、判断材料とすべく近隣施設の現状をおおまかに整理してみよう。
★鴨居保育園
・園舎:1965年建設(築54年)/426.50㎡/平家/補強コンクリートブロック造鉄板葺外部モルタル
・別棟:2000年建設(築19年)/101.52/平家/軽量鉄骨プレハブ造
※ちなみに、屋根が広範囲にわたって剥がれていたが、残った屋根を見ても痛みが激しかった。市に確認したが、予防保全はされていなかったようだ。ただし、予防保全していたからといってあの風で屋根が剥がれていなかった保証はない。そのため、責任追及しても詮無きことだろう。

★鴨居コミュニティセンター
1983年建設(築36年)/1,382.49㎡/平家/鉄筋コンクリート造陸屋根建
※もともとは旧・独立行政法人雇用・能力開発機構の中高年齢労働者福祉センター(サンライフ横須賀)。譲渡を受け、2002年に取得して転用した歴史を持つ。

★鴨居老人福祉センター
1993年建設(築26年)/996.97㎡/2階建/鉄筋コンクリート造地上2階塔屋1階建
※2階建の2階部分に入居しており、1階はデイサービスセンターで屋上はゲートボール場。

★鴨居小学校
・仮称A棟:1966年建設(築53年)/1,146.88㎡/3階建/鉄筋コンクリート造
・仮称B棟:1970年建設(築49年)/1,295.36㎡/3階建/鉄筋コンクリート造
・仮称C棟:1971年建設(築48年)/1,096.23㎡/3階建/鉄筋コンクリート造(渡廊下は軽量鉄骨造平家建)
・仮称D棟:1974年建設(築45年)/1,039.36㎡/3階建/鉄筋コンクリート造(渡廊下は鉄骨造平家建)
・仮称E棟:1981年建設(築38年)/2,263.72㎡/3階建/鉄筋コンクリート造

★小原台小学校
・A棟:1976建設(築43年)/4,114.47㎡/4階建/鉄筋コンクリート造
・B棟:1976建設(築43年)/1,269.07㎡/3階建/鉄筋コンクリート造
・仮称C棟:1981年建設(築38年))/822.10㎡/3階建/鉄筋コンクリート造

★鴨居青少年の家(鴨居みんなの家)
1975年建設(築44年)/390.88㎡/2階建/軽量鉄骨造カラー鉄板葺


●修繕や現地建て替えは×
 まず、修繕はあり得ない。鴨居保育園の古くて傷んでしまった建物に更に投資をして生き長らえさせる価値はない。
 次に、現地建て替えもありえない。解体撤去と再建には、最低でも1年はかかるのではないか。その間、ずっと鴨居小での仮住まいでは落ち着かないだろう。そして、何と言ってもカネの問題だ。国は、公立保育園には国庫負担金を支出せず、今後は子ども園への一本化へと誘導する方向だ。つまり、現在でも運営費用の国庫負担金が受けられない公立園なのに、建設費用も受けられない(ハズ。再度確認して後日追記予定■)のならば市立鴨居保育園としての建て替えなどあり得ない。


●統合移転も×
 保育園再編実施計画に沿って考えれば、鴨居保育園の機能は当面存続させる方針だ。そこで、他の保育園と統合して子ども園に移行することも選択肢としてはあり得る。
 しかし、中央子ども園では、調整にあれだけの時間がかかり、まだ着工にすら至っていない。南子ども園も、作るかどうかも含め調整に相当な時間を要することが容易に想像できるし、おそらく鴨居とは生活圏の違う場所に立地するだろう。
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●老人福祉センター移転は×
 現地視察をして考えてみると、まず鴨居老人福祉センターは選択肢に入らないと思った。1階部分に必要不可欠なデイサービスという機能が入っていたのを忘れていたし、それは性質上2階に移すわけにはいかない。かといって、2階に保育園が入るのは不便だ。しかも、1階は市の直営ではないので、調整が必要となる。
 今後、2階は子育て施設やコミセンなど、もっと利用価値の高い機能と入れ替える方向性が良いのではないか。


●鴨居コミセン移転は△
IMG_5150.JPG 次に、鴨居コミュニティセンターは建物として理想的だと思われた。
 他のコミセンと違ってエントランスが三角屋根の開放的な作りで、しかも木があしらってあるので温かみがある。体育館も園庭も音楽室も和室もあり、ちょっとだけ手を加えてリフォームすれば、子どもたちがのびのびと育つのに良い環境だ。駐車場も車付けも申し分ない。給食室に転用できる調理室もある。現在の機能は、そっくり鴨居小か鴨居中に移転できるので問題ない。
 加えて言えば、鴨居コミセンは元々なかったはずの施設だ。人口バランスや面積バランスを考えて計画的に配置したわけではなく、たまたま譲渡を受けられたから設置しているのみで、幸運なのだ。
 ただし、物件としては理想的だが、いつもママパパ目線で市政へのご意見を頂く方からは「津波が心配」との声を頂いた。基本的には、病院や避難場所など災害時に不可欠な機能以外は、津波がかぶる場所にあっても仕方ない。いざというときに、そこを捨てて逃げることさえできれば問題ない。とはいえ、保育園には乳児も幼児もいる。つまり、逃げるのが大変だ。
IMG_5152.JPG そして鴨居コミセンの海抜は6.5mで、記録が残っている限り過去にここまで津波が来たことはないが、市のハザードマップでも大津波警報10m時の浸水区域に入っている。だったら、最初から逃げなくていい場所のほうが望ましい。ちなみに、現在の鴨居保育園も10m時の浸水区域に入っているが、小学校は入っていない。
 ついでに言えば、いくら保育園のためとはいえ、いくら元々なかったはずの施設とはいえ、コミュニティセンターの玉突き移転には反対運動が起こるかもしれない。納得を得るまでに時間がかかるとすれば、それは面倒だ。


●鴨居小は◎
IMG_5147.JPGIMG_5149.JPG こうして考えていくと、最善の移転先は鴨居小だろう。現在、一時的に身を寄せているのも必然だと言える。
 第一に、保育環境だ。保育園と小学校が隣接していることは、教育上よい効果を生むと聞いている。小1ギャップなども起きにくいそうだ。それが学校の中となれば、なおのことだろう。加えて、訪れてわかったのだが、鴨居小には敷地内の公園(旧鴨居公園)もあり、すばらしい環境だ。鴨居コミセンでは園庭も狭くなってしまう。
 第二に、施設過剰だ。1972年度に生徒数2,178・54学級だったのに対し、2019年度は生徒数412人・クラス数15(学年2クラス×6学年+特別支援級3)まで減っている。しばらく学年80名前後で学年2クラスか3クラスかの分かれ目にあったが、最近では生徒数は減少傾向にあるため当面は学年2クラスで落ち着いていくだろう。
 当然、余裕教室も潤沢となる。普通学級数33-実学級数15=余裕教室数18。実学級数より余裕教室がはるかに多い。その結果、図書室と家庭科室が2教室ずつあるほか、無くても困らない学習室7、会議室2、相談室2、ランチ室1、英語室1という具合に、割と贅沢な使い方が可能となっている。
 ちなみに、隣の小原台小も同様の状況で、今年度は、生徒数410名で普通学級数12。つまり、鴨居小と統合することは当面ないし、余裕教室数は鴨居小のほうが多いため小原台小への統合は検討対象外となるだろう。
 →児童・生徒・学級数調査
 第三に、安全性だ。鴨居小はそこそこ古いが、全棟が新耐震基準に対応しており、耐久性に問題がないはずだ。また、高台なので津波の心配もない。
 第四に、定員増の可能性だ。鴨居小の余裕教室は潤沢だ。保育士さえ確保できれば、さらに転用して定員増を図ることもできる。
 第五に、調整の手間だ。コミセンと違って学校の中なら地域の反対運動は起こらないだろう。それに、これだけ余裕教室があるなら学校管理者も文句を言うはずがない。

 具体的には、現在の利用状況から見て玉突きを最少に抑えるとすれば、真ん中の棟の1階全て(給食室を除く)と2階部分の2教室を保育園とするのが良いだろう。


●鴨居小の改修期間には鴨居青少年の家に移転を
 鴨居青少年の家は、現在の園舎よりも若干狭い。とはいえ、家庭的な雰囲気もあるし、和室も遊戯室も体育室もあり、基本的には改修不要で保育園として使えるはずだ。
 鴨居小の一部を保育園に改修するまでの期間は半年~1年程度かと思うが、応急避難先は鴨居青少年の家がうってつけだ。園庭がないが、代わりに近隣の鴨居1丁目公園を使えばよいだろう。駐車場がないのは我慢してもらう他ない。それが無理なら鴨居コミセンか、小原台小の余裕教室か鴨居小の他の余裕教室がよいだろう。
 なお、鴨居青少年の家は、必須の機能ではない。そもそも、市内の大半の小学生には青少年の家の機能は届いていない。大人も使える施設だが、本市の貸館は潤沢だ。だから代替施設を用意する必要はない。強いて言えば、小原台小と鴨居小に全児童対策を用意すればよい。これは、既に市の方針として持っているので、2校を優先して急げばよいだけの話だ。


 以上、鴨居保育園の早期再建に向けて市に提言しようと思う。鴨居保育園や鴨居小の保護者や鴨居近隣の方々のご意見をお伺いできると幸いだ。

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