生物を殺す生物は人間だけ~小動物火葬の焦点と他市事例~

tdog17030729_TP_V4.jpg このところ、小動物火葬の問題について書いている。関心を持ってきたテーマでもあり、着地させる責任も感じているためだ。
 →過去記事「小動物火葬の廃止を訴えてきた議員からの理由説明」
 →過去記事「小動物火葬廃止後への提案」

 そして、市民や関係者と議論する中で、廃炉後の対応について、だいぶ焦点が絞り込まれてきた。

●1.ペットには関与しない
 ペットには、所有者がいる。そもそも所有者がいるものについて、行政が関与しようと考えるのはおこがましい。
 ペットが亡くなった後に火葬することについて「民間では高すぎる」「事業者の信頼性が低い」という議論は行政の関知する話ではない。民民で解決して頂ければよい。民間火葬サービスに依頼する費用が捻出できないなら、自ら火葬するか、土葬して頂く選択肢も残されている。土葬する土地もなく、火葬費用も工面できない低所得者については、誰かを頼って他人の土地での土葬か火葬をして頂くことになるだろう。それも難しければ、個別に行政に相談頂ければ個別に解決策を見出せるのではないか。
 ただし、原則は関与しないものの、もしも殺処分獣の火葬を市が手掛けるとなれば、行政支出を最小限に食い止めるための歳入確保としてペットも受け入れることは当然すべきだろう。この場合は現状継続と同じこととなる。

●2.斃死獣には中立的
 道で死んでしまっていたなど、行き倒れの生物を斃死獣と呼ぶらしい。ペットには飼い主がおり、殺処分した生物は行政に所有権があるが、斃死獣は無主物だ。所有者がいない。とはいえ、斃死獣を放置することは、衛生面で問題がある。だから、行政が処理するのは妥当だ。
 しかし、手厚く弔う道義的な責任はあるだろうか? 基本的にはない。そのため、多くのまちが廃棄物として処分している。
 とはいえ、もしも殺処分獣の火葬を行政が担うとなれば、そこで一緒に葬ってあげたい。しかし、そうでなければ他市同様で良いのではないか。

●3.殺処分獣が焦点
 生物を殺す生物は人間だけだ。
 より正確に言えば、食べるためではなく、意図的に他の生物の命を奪う生物は、ほぼ人間だけだと思われる。もちろん、草食獣が肉食獣に襲われて生存のために反撃した際に捕食者が死ぬなどはあるが、人間以外の生物は襲われてもいないのにわざわざ殺すことはない。
 外来生物には罪はない。人間の都合で連れてこられたり生息地を追われたりして、他の地域で繁殖しただけだ。ちなみに、人気番組『鉄腕DASH』の「グリル厄介」というコーナーでは「外来種を食べて減らそう」という啓発をし、批判も浴びている。しかし、食べるために屠るのは正しいと私は20代から一貫して提言してきた。根源的な問いを突き付ける優れた番組だと評価している。
 本市では、タイワンリスやアライグマなどを捕獲し、苦しまないよう炭酸ガスで殺処分し火葬している。ちなみに、イノシシはかつて三浦半島に生息していたという研究もあるようで、外来生物かどうかが判然としていないが、農作物被害や体当たりの危険などがあるため駆除している。ただし、現在は捕獲地で埋葬しているそうで今回の問題とは別枠となる。
 殺処分獣を、食べることはない。何かに利用することもない。本市が悪いわけではないが、連れてきた我々人間は連帯責任を負っている。そして、殺処分したのだから、所有権は本市にある。人間の都合で殺した者たちを、現在は火葬している。しかし今後、本市が弔うことなくゴミとして処分するとすれば、それは正しいことなのか? 私はそこがどうも引っかかっている。
 いずれにしても、倫理と論理から考えれば、今回の小動物火葬問題の焦点は、この殺処分獣だ。

●4.殺処分獣の火葬はペット火葬よりはるかに大変
 これは盲点だったのだが、斃死獣・殺処分獣を交えずペットだけであれば、費用が大幅に抑えられるようだ。斃死獣・殺処分獣は法律上は廃棄物なので、廃棄物処理法の規制対象となり、焼却施設建設時のアセスメントや排気ガス成分の排出規制など、環境規制を受ける。
 しかし、ペット遺体は廃棄物ではない。しかも、人間の遺体には墓地埋葬法の規制がかかってくるが、ペットは人間ではないのでこの規制もかからない。だから、ペット火葬は大きな労力もお金もかけずに導入できる。
 逆に言えば、殺処分獣のために火葬炉を作れば、建設地住民の合意形成や財政負担など、廃棄物処理法に対応するためのコストは大きくなるだろう。

●5.解決策は3つか?
 前回記事で、いくつかの方式を挙げたが、上記を踏まえた現実的な殺処分獣の弔い方は次の3つの方法ではないか。
A.中央斎場で火葬する。
B.殺処分獣火葬施設を移転新設する。
C.廃棄物として焼却処分はするが、弔意を別な形で表す。

 そして、ペット愛好家の方々が納得できる価格帯とサービスの火葬事業を自らも手掛けることができるよう、「2021年度までは小動物火葬事業を続ける」旨の公に約束していた方針を、炉が使える限りしばらくは継続して差し上げるのが温かい行政のあり方だと考える。ただし、受益者負担は100%求めることが条件だ。

 なお、以下に大学生インターン生が調べてくれた他市事例を紹介する。網羅的なものではなくサンプル調査だが、参考にして頂ければ幸いだ。
各自治体の外来生物の捕獲後の取り扱いについて

鶴田龍生

〇佐賀県 アライグマ対策
●捕獲後の処置
 捕獲したアライグマを殺処分する場合は、炭酸ガスなどのできる限り苦痛を与えない安 楽死処分により実施します。また、捕獲した固体や捕獲の状況などは、記録を行っておき ます。
●処分の例外
 捕獲個体について、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要性があると認められる目的で譲り受けたい旨の申し出があった場合は、外来生物法第5 条第1 項に基づく飼養等の許可(環境省)を得ている者に譲り渡すことができます。
●処分後の個体の処理
 殺処分後の個体については、放置せずに速やかに処分します。この場合、感染症の 危険性などを勘案し、原則として市町のゴミ処理場などで一般ゴミとして廃棄するな ど、各防除実施主体で定めた方法で適切に処分します。また、やむを得ず埋却する場 合には、感染症対策や悪臭の発生など、公衆衛生に配慮するとともに、野生動物による掘り返しがないよう注意します。

〇久留米市 アライグマ対策
●捕獲個体の取り扱い
捕獲個体は、できるだけ苦痛を与えないよう殺処分を行います。死亡が確認された後、体重の計測、頭同長の計測、雌雄などの判定を行い、捕獲場所、日時とともにアライグマ捕獲記録票に記録を行い、殺処分した個体は、一般廃棄物として処分 するなど適切に処理を行うものとします。

〇熊本市 アライグマ対策
●捕獲個体の取り扱い
捕獲個体は、できるだけ苦痛を与えないよう、炭酸ガスを用いるなどの殺 処分を行うものとし、殺処分の実施場所は、捕獲現場か、市が定める場所に、 箱わなに入れたまま運搬して実施するものとする。 死亡が確認された後、体重の計測、頭胴長の計測、雌雄などの判定を行い、 捕獲場所、日時とともにアライグマ捕獲記録票(様式4)に記録を行い、殺 処分した個体は、一般廃棄物として処分するなど適切に処理を行うものとする。ただし、捕獲個体について、学術研究、展示、教育その他公益上の必要が あると認められる目的で譲り受ける旨の求めがあった場合は、殺処分後に限 り、譲り渡すことができるものとする。

〇相模原市 鳥獣対策
●捕獲等をした対象鳥獣の処理に関する事項
捕獲した有害鳥獣について 捕獲後、速やかに衛生に配慮し、焼却処分又は埋設を行う。 ニホンザルについて 第4次神奈川県ニホンザル管理計画に基づき、個体の処分を行う。

〇東京都 アライグマ・ハクビシン対策
●捕獲した個体の取扱い
ア 捕獲した個体は、動物福祉及び公衆衛生に配慮し、麻酔薬の投与等できるだけ苦痛 を与えない方法により殺処分し、原則として焼却により適切に処理する。都又は区市 町村は、これらの処理が適切に実施されているかを監督する。
イ 飼養等について
ア) アライグマの場合 捕獲した個体については、学術研究、展示、教育その他公益上の必要があると認められる目的である場合に限り、外来生物法第5条第1項に基づく飼養等(飼養、 栽培、保管又は運搬)の許可を得て飼養等を行うことができることとする。捕獲した個体の飼養等を希望する者に対して、譲渡し又は引渡し(以下「譲渡し等」という。)をする場合は、その相手方が学術研究、展示、教育その他公益上の必 要があると認められる目的で、外来生物法第5条第1項に基づく飼養等の許可を得ている場合、又は同法第4条第2号の規定に基づいて特定外来生物を適法に取り扱うことができる場合とする。また、捕獲した個体を譲渡し等する場合、相手方は次の要件を満たすものとし、都及び区市町村は、譲渡し等の状況をとりまとめて、記録する。
<要件> ・外来生物法の規定に基づく飼養等に係る許可を受けていること
・捕獲個体を一定数収容できる施設を有していること
・捕獲個体を都又は区市町村から速やかに引き取りができること。
・引取後 30 日以内に不妊手術、マイクロチップの装着、感染症の予防措置を実施すること
・捕獲個体の引き受けの状況を記録、保管するとともに、引き渡し元に対して、一定 期間ごとに、個体の大きさ等、必要な情報(写真等を含む。)を提供すること
イ)ハクビシンの場合 鳥獣保護管理法に基づき適切な捕獲許可を受けた上で行う場合に限る

〇浜松市 アライグマ対策
●捕獲個体の処分
捕獲した個体は、原則として、できる限り苦痛を与えない適切な方法により殺処分することとする。その方法として、炭酸ガス等を用いた安楽死処分等を行う等適正に処分することとする。
●処分後個体の取扱い
殺処分後、頭胴長・体重の計測、雌雄の判定、出産歴(雌の場合)等の確認・記録を 行い(様式 3:捕獲状況集計表)、殺処分後の個体は、原則として、焼却等適切に処理する。学術研究、展示、教育、その他公益上の必要があると認められる目的で譲り受ける
旨の求めがあった場合は、殺処分後に譲り渡すこととする。

〇大分市 アライグマ対策
●捕獲個体の取り扱い
捕獲個体は、「動物の殺処分方法に関する指針」(平成7年7月4日総理府告示第40号)に従い適切に処置した後、焼却処分等により処理します。市は、死亡が確認された後、体重の計測、頭胴長の計測、雌雄の判定等を行い、捕獲場所、日時とともに記録します。

〇福岡市 アライグマ対策
●捕獲個体の取り扱い
捕獲個体は,できるだけ苦痛を与えないよう,炭酸ガスを用いるなどの殺処分を行うものとし,殺処分の実施場所は,捕獲現場か,福岡市が定める場所に,箱わなに入れたまま運搬して実施するものとします。死亡が確認された後,体重の計測,頭胴長の計測,雄雌などの判定を行い,捕獲場 所,日時とともにアライグマ捕獲記録票に記録を行い,殺処分した個体は,一般廃棄物として処分するなど適切に処理を行うものとします。

舞鶴市
〇アライグマ対策
●捕獲した個体の処分方法
捕獲した個体はすべて、できる限り苦痛を与えない方法(二段階麻酔または炭酸 ガス方式による安楽死)により殺処理することとする。なお、殺処理した後の個体 は原則として焼却処分するが、学術研究等のために必要と認められる目的で学術機 関等から譲り受ける旨の申し出があった場合は、譲渡できるものとする。
〇鳥獣被害対策
●捕獲等をした対象鳥獣の処理に関する事項
平成 27年9月に中丹地域有害鳥獣処理施設が設立され稼働開始し、舞鶴市も同年 10 月から使用開始し焼却処分を行っている。各集落に設置された大型捕獲檻(市認定檻)で捕獲された個体処理については、焼却又は埋設の他に地元農業者等が負担する埋設労力の軽減を図るため、事前に埋設用の穴を市が掘削する支援事業も実施している。捕獲された有害鳥獣は捕獲現場での処理を原則とするが、アライグマについては 「舞鶴市アライグマ防除実施計画書」に基づき捕獲された個体を、京都府の致死措 置支援業務により安楽死処理を施した後、研究標本として学術機関へ譲渡する

〇嘉麻市 アライグマ対策<
●捕獲個体の処分
(ア)処分方法
捕獲したアライグマ類は、原則として、できる限り苦痛を与えない適切な方法により殺処分し、焼却、埋設等適切に処理する。
(イ) 処分の例外
捕獲個体について、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要性があると認められる目的で譲り受ける旨の求めがあった場合は、外来生物法第5条第1項に基づく飼養等の許可を得ている者に譲り渡すことができることとする。
(ウ)殺処分後の個体処理
殺処分後の個体については、放置せずに速やかに処分する。この場合、感染症の危険性等を勘案し、原則として市のゴミ処理場等で処 分することとし、やむを得ず埋設する場合は、悪臭の発生や感染症など公衆 衛生に配慮するとともに、野生動物による掘り返しがないよう留意するもの とする。

ティアハイムにおける動物の取り扱いについて
●概要
 欧州にある民間の動物愛護団体が経営している「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設では、様々な事情で飼い主が手放さなければいけなくなった動物や野生動物が、殺処分を行われずに(厳密に述べれば,安楽死は行われている)生涯保護され、里親に引き渡している。死体の扱いについては不明なので述べない。
●詳細
 動物保護の先進国のドイツやスイス、イギリス。多くの街に「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が建てられている。
 このティアハイムは民間の動物愛護団体が経営していて、敷地内には動物の収容のみならず,常設の動物病院やカフェが併設されている。
 獣医局が押収した動物については、行政が保管を委託する料金として年間60万ユーロがティアハイムに支払われており、施設の年間維持費800万ユーロ(約10億4000万円)のうちの約7・5%に過ぎない。保管期間を過ぎた動物に対する不足分は、基本的に企業や市民の寄付金・遺贈金で賄われている。
 ここでは様々な事情で飼い主が手放さなければいけなくなった動物が保護されていて、
犬や猫だけでなく、ウサギなどの小動物や爬虫類なども保護されている。
 ティアハイムでは保護するだけでなく里親の募集も行い、ほとんどの動物たちが引き取られている。
 もし里親が見つからなくても殺処分されるようなことはなく(厳密に述べれば,安楽死や一定の行動障害を示す動物・深刻な傷病・緊急を要する危機の回避のための殺処分は行われている)ティアハイムが最後まで面倒を見るシステムになっている。
●参考資料
犬の譲渡システム ― ティアハイム・ベルリンを事例として― 岩倉由貴
時事ドットコム「ドイツ最大の動物保護施設を訪ねて」


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