教育委員会の仕事ぶりを改めて考えよう

BoardOfEducation.png 8月1日に東京ビッグサイトで開催された「地方議会サミット2019」を聴講してきました。

 その際、元総務大臣の片山善博早稲田大学教授の講演を拝聴して、胸を突かれました。私が受け止めた先生のお話の大意は次のようなものです。
 近年、ブラック職場とも揶揄される学校教員の多忙化解消が叫ばれて久しい。しかし、一向に解消したという話を聞かない。この問題について、文部科学省の対応に問題があると言う識者もいる。ただし、よく考えてほしい。ほとんどの公立学校は市町村立だ。つまり、市町村の教育委員会の下で公立学校が運営されている。だから、この問題は無為無策の教育委員に責任がある。では、地方議会は教育委員の責任追及だけしていればよいのか? いや違う。それは天に唾するようなものだ。なぜなら、教育委員を選んだのは議会だからだ。市長から提案を受けたから同意しただけ、などという言い訳は通用しない。最終決定権者である議会の責任は重い。教育委員の品質管理は議会の仕事だ。議会会期の最終日に提案を受けて、何の質疑もなく同意していて、品質管理ができるか? 他の議案と同様に、きちんと会期初日に提案を受けて、候補者本人にも質疑をして選任すべきだ。逆に言えば、そんなことすらせずに選んでしまって議会として責任が取れるのか?


 私は、以前にも片山氏の講演を聞いて、教育委員の選任にあたっての質疑や討論はしてきました。全国でも、そこまでやっている議員はフジノ議員含め一握りではないかと思います。
 →Blog「告白。~私も「追認議会」の片棒を担ぎました~ (視察報告・前編)」

 しかし、そこで止まってしまっていました。横須賀市議会の現状は次の通りです。
 第一に、選任時です。本市では教育委員を選任する際に候補者を呼ぶ規定がありません。経歴書が一枚配られるだけです。仕方なく、かつて私とフジノ議員は市長に質問しましたが、ご本人に確認したわけではない市長の憶測の答弁しかありませんでした。
 第二に、選任後です。教育福祉常任委員会に教育委員を呼ぶ規定はありますが、何故か肝心の本会議に呼ぶ規定がないことがわかりました。これは制度上の不備と言えます。
 現行制度でできる範囲のことしかやらず、議会制度の改善提案を怠ってきた自らの怠慢を恥ずかしく思います。

 そこで、教育長以外の教育委員を8月30日本会議の一般質問に召集して、直接質疑できないかと画策しています。もちろん議会は慣例や手続きが大事なので、間に合わない可能性も高いのですが、今後もボールを投げ続けて行こうと思います。

 ところで、意外と教育委員会制度はフクザツでわかりにくいので、上記提案をするに際して、新任議員の方にもパッとご理解頂けるよう、わかりやすい解説を書きました。せっかくですので、市民のみなさんにも共有します。
 数年前に南学・東洋大学客員教授らのセミナーに政務活動費を使って参加して学んだことに、私なりの情報も加えた内容で、地方政治に関心ある方には「へー、そういう仕組みなんだ!」と面白く読んで頂けると思います。

 首長への過度な権力集中と利益相反を避けるため、地方自治法により、執行機関は分割されています。本市の場合、次の通りです。

 ●市長
 ●教育委員会
 ●選挙管理委員会
 ●公平委員会
 ●監査委員
 ●農業委員会
 ●固定資産評価審査委員会
(ちなみに、議会はこれら執行機関の経営監督をする立場ですので、ここには含まれません。GHQによって日本の地方自治法は、アメリカ型の「執行と監督の分離」モデルとなっています。なお、人権擁護委員も法務省の制度なので別です。)

 このうち、教育委員会は、5人の合議制です。
 ちなみに、アメリカの教育自治体(市町村に属しない郡直轄の学校区)を参考に日本に持ち込んだ制度だったため、かつては教育議員としてアメリカのように直接選挙で選ばれていました。しかし、本家アメリカと違って独自の財源を持たないことによる形骸化や、政治に左右されないための制度なのに逆に政治性を帯びるなどの問題により選挙をやめて、現在の議会同意によって教育委員が選任される形式に改められました。

 合議制ということは、つまり上下はありません。
 確かに、教育長は、教育委員会の会議議長として会議を総理し代表します。また、教育委員会の補助機関である教育委員会事務局の事務局長も兼ねています(制度変更で、旧教育委員長と旧教育長が一本化されました)。しかし、合議制ですから、市長のように独任制で権力の集中化が図られているわけではないため、教育長がいくらやりたいと思う案件があっても、過半数が反対すればやれない形式になっています。つまり、本市の場合5名ですから、過半数は3名ということになります。教育委員会をはじめとした行政委員会については、市長と違って、委員長が独断で決める権利はないわけです。
 ですから、「教育長さえ議会に出席していれば他の教育委員を呼ぶ必要はない」ということを主張する方もいますが、それは市長には当てはまっても教育委員会には当てはまらないと私は考えます。市長は独任制で、副市長以下は補助機関にすぎません。上下水道局長や消防局長も市長の部下です。最終的な執行の意思決定者は市長一人です。しかし、教育委員会は違います。教育委員は教育長の部下ではないのです。これは、議員が議長の部下ではないことと同じです。議長は議会を総理し議会を代表しますが、勝手に議決はできません。多数の議員の意思で最終決定します。これと同じなのです。

 ところで、教育委員会は英語で“Board of Education”と言います。「委員会」の訳語は“committee”が一般的ですよね。選挙管理委員会や農業委員会も、英語では“committee”です。でも、教育委員会は“board”なんです。
 この“board”は元々はテーブルの意味ですが、組織に使われるときは“Board of Directors”(取締役会)のように「重役」感を含んだ言葉だと私は解釈しています。つまり、教育委員会は経営者なんです。なまじ「委員会」という名称がついているから、市長の諮問機関である検討委員会の委員のような気持ちで教育委員をやっているような人も全国には多いのではないかと邪推します。でも、教育委員会は同じ委員会でも、諮問(アドバイザリーやコンサルティングと訳される)が仕事じゃないんです。経営責任のある方々だということを、我々議員はしっかり認識して教育委員を選任する必要があると考えます。

 ついでに、教育長以外の教育委員の身分は「非常勤特別職員」です。報酬は月額147,500円で、議員を除く非常勤特別職員で最も高額となっています。

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