【委員会視察報告・後編】横須賀市はドギーバッグ運動をやるな~大津市~

doggydesign.png【三日目:10月25日】

 最終日には、滋賀県大津市を訪れ、食品廃棄物を減らす取り組みについて伺った。とりわけ、飲食店での食べ残しを持ち帰る「ドギーバッグ運動」が眼目だ。

 結論から言えば、本市では「ドギーバッグ運動」をやる必要はない。
 議員の仕事は、いい事業を市役所にやらせることだけでなく、不要な事業をやらせないことも大事だ。大津市では、議会提案や職員提案ではなく越直美市長のトップダウンで始めた事業のようだが、事業開始の経緯を私は評価できない。

 食品廃棄物は減らさなければいけない。この点は私も異論がない。
 ところで、食品廃棄物はどこから出ているのか? 農林水産省が発表している推計によれば、半分が家庭からで、もう半分が流通業や外食産業など事業者のようだ。
 →政府広報「もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう」

【家庭の食品ロス対策】
 家庭由来の食品廃棄物を減らすには、ただただ啓発しか打ち手はないだろう。生ごみを狙いうちで課金するわけにもいかないし、食べ物をムダにした人に罰金を課す制度設計も困難だ。

【事業者の食品ロス対策】
 一方、事業者由来の食品廃棄物はどうか?
 そもそも、事業種別ごとの排出割合がわからないと、施策としてどこに重点を置くべきかわからない。家庭系や事業系の一般廃棄物と違って、食品など産業廃棄物の処理フローは市内で完結しないため、大津市も本市も推計を作りにくいのだ。まず、これが大きな問題だ。本来なら、国が数字を示すべきだと思う。
 とはいえ、どの分野であっても対策をしないよりしたほうがいいのは確かなので、以下見ていきたい。

(1)食品製造業
 食品製造業の場合、基本的には材料をムダにしないインセンティヴが働いている。とはいえ、とりわけ日本人は見た目の形や色など過剰品質を求めるので、基準に合わない原材料は廃棄されることがある。この点は、消費者の啓発をするほかあるまい。

(2)流通業
 おそらくここが本丸だと考えている。
 流通業には、賞味期限がまだ来ていない食品でも、早めに廃棄する慣行がある。また、製造時点で容器包装の印刷が若干ズレたりすることがあって、中身には何の影響もないのに店頭に並べられないこともある。まずは、これらをやめさせなければいけない。
 これらについては、法で規制することも可能だろう。海外では同様の法律を持つ国もあると聞く。ただし、法がない以上、市町村ができる施策としては、それらを廃棄させないようフードバンクなど生活困窮者対策物資として活用するなどが挙げられるだろう。
 ちなみに、流通業の悪しき慣行については、やたら細かい日本的消費者が、賞味期限が近い商品や印刷ズレの商品を避けるからというのは否めない。めぐりめぐれば結局のところ、消費者の啓発をするほかないのだろう。

(3)外食産業
 外食産業での食べ残しは、主にアラカルト注文ではなく宴会で起こるはずだ。コース料理や立食パーティのビュッフェ方式の食べ残しをどうするか。
 まずは、ちゃんと食べてもらうことが大事だ。この点では、やはり消費者の啓発が重要となる。
 次に、消費の様子を見ながら供給量を調整することも有効だろう。この点でも、「金払ってるんだから、本来の品数と量は出せ」と消費者に言われるのが怖いわけで、消費者啓発が必要だ。
 3Rの観点では、上記のような削減(Reduce)がムリだった部分については、再利用(Reuse)することになる。つまり、ここでようやくドギーバッグが登場する。しかし、持ち帰るには、容器包装が必要となる。たいがいはプラスチック容器だ。近年、使い捨てプラスチック容器には厳しい視線が向けられるようになっている中、食品廃棄物を減らすために別な廃棄物を増やすのは、なかなか理解が得られないだろう。それに、事業者側も持ち帰りには衛生面から根強い抵抗感がある。良策ではない。ここはひとつ、消費者と事業者の自主性に任せ、市町村は廃棄物の堆肥化など再生(Recycle)を粛々とやるのがよかろう。


 ……というわけで、以上のとおりサプライチェーンに沿って一つひとつ検討を加えた結果、「市町村がやるべきことはドギーバッグ運動ではない」と判断せざるを得ない。
 一方、フードバンクについては一石二鳥の面もあるので、行政が積極的に関与することも考えてもいいのではないか。議論を整理でき、この視座を得られた、という点では今回の視察も決してムダではなかったと思う。

 以上で、本年度の委員会視察報告を終える。

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