6名中1名は、身体が震えるほどの重篤な状態だったという。学校の見立てでは、本来なら救急搬送が必要な生徒は2名で、残りの4名は保健室でも対応できる症状だったが、念のために6名全員を救急搬送したという。医療資源の適切な利用、という問題もあるものの、生徒の無事を願って大事をとったのは良かったのではないか。
しかし、良かったのは事後対応だけだ。熱中症を起こさせないための予防対策は適切だったのか?
本市では、6月にも他校で熱中症による救急搬送があったという。そうであれば、もっと抜本的な対策を全校でとっておくべきではなかったのか?
生徒を私立学校に通わせている知人の保護者から教えて頂いたのだが、その私立学校では暑さ指数(WBGT)が31度を超えると、部活動や屋外での活動を禁じているという。
→環境省「暑さ指数(WBGT)とは?」
この暑さ指数(WBGT)とは、熱中症予防のために1954年より用いられているモノサシだ。気温だけでなく、湿度や輻射熱なども測って、熱中症の起こりやすさの判断基準としている。これは、国際規格としてISO化もされており、国をはじめ多くの団体が採用している。つまり、歴史もあり、実績もあり、十分信頼するに足る基準だと言える。そして、下記の表のように、具体的な行動の指針まで示されている。
ところが本市では、WBGTを採用していない。「WBGTなども参考に……」といった通知文を各学校に送ってはいるらしいが、「WBGTが○○度を超えたら、部活や式典などを中止・延期する」といった明確な規制を行っていない。そして、対応を学校任せにした挙句、2度目の、しかも大量の救急搬送を招いてしまったわけだ。
これを受けて私は、本市の教育委員会・保健体育課長に緊急申し入れをした。「すぐにWBGTを基に、部活動・屋外活動・式典などを止める基準を設けて指示せよ」と。しかし、保健体育課長からは前向きな回答を得られなかった。
「部活動の体育大会などもあり、本市だけ別の基準では大会に出られなくなるなどの問題もあるので、国や県など統一的な基準が示されるのが望ましいのではないか」「各学校には通知も出しており、基本的には学校長が学校の状況に合わせて適切に判断する」「WBGTなどの基準を用いるのがいいのか、検討しなければならない」「測定器がある学校もない学校もあり、精度もまちまち」などと考えているのかもしれないが、一言で言おう。
甘い。
ことは、命の問題だ。生徒の将来がかかっている。
大会は、大会主催者の判断に任せたっていい。一時的に行われる大会よりも、日常的に行われる部活などのリスクのほうが高い。レアケースは別枠にしていい。国や県の動きを待たずに、暫定的でいいから本市の基準を定めるべきだ。
また、学校任せにされても、学校も困る。学校現場は目の前のことで忙しい。熱中症対策にどんな基準があるのか、それが妥当なのか、検討している時間的・気持ち的な余裕などない。科学的で客観的な見地から、基準を定めて教育委員会が各学校に指示してくれたほうが、正直ラクなはずだ。
加えて、歴史も信頼もあるWBGTを疑うほど、横須賀市に知見があるのか? どれだけ傲慢なのか、と言いたい。
しかも、測定器は100%の精度のものなどない。モノサシは、完璧じゃなくていい。あくまで判断の目安に過ぎない。測定器がない学校や精度が悪いものしかない学校は、隣の学校の情報を元にしても一向に差し支えないだろう。
* * *
市民のみなさんは、どう思いますか? 実際に、この夏に市内の学校で救急搬送が起こっています。そして、横須賀市の教育委員会は、どうしようもなく鈍感です。組体操事故が起こっても、3段タワーや5段ピラミッドなどを禁止しなかった保健体育課です。指示待ち体質なので、県が動かない限り、市内全校に統一基準を指示することは期待できないと思います。
だから、自分の子どもを熱中症から守りたければ、今すぐ学校に対応要求をしてみてはいかがでしょうか。
この記事へのコメント
小幡 秀樹
学校や部活動や企業は命を預かっている、もちろん国も国民の命を守らなければならない(まあ実際の各省丁は??)私は中学から社会人までスポーツをやってきたが、昔の常識は外して新たな基準を設けなければならないと思う。それは各スポーツスクール理事が取り組みを実施している。行政でもそれに対しての基準があるのならそれを基準に地域的に決めて命を守らなければならない。
それ以前に労働安全衛生法や労働基準法さえ守っているのか??と感じているので、今の横須賀市教育委員の現状が理解できた
太田肇
していますが、それでも発症します。
社長は従業員に働いてもらっている。
だから命を守らなければいかんと夏の
間言いっぱなしです。
将来のある子供達を守る意識がない!