2018年06月25日

【会派視察報告:中編1】追いつける気はしないが、この道しかない〜可児市議会〜

Kawakami.png 視察報告の続きです。

第二日 5/23(水)

 二日目の5/23には、岐阜県可児市へ伺った。

 可児市議会は、地方創生のモデルケースとして知られる先進議会だ。2015年のマニフェスト大賞でもグランプリに輝いた。
 その優れた点は、大きく2つだ。
(1)市民の声を議会全体で受け止め反映していること
(2)とりわけ、高校生の意見聴取に力を入れ、その結果、地域に若者が定着しつつあること

kani.png これらを学びに可児市議会に伺ったところ、なんと忙しい公務の合間を縫って川上文浩議長が自ら説明してくださった。昨年のマニフェスト大賞の授賞式の際に、研政メンバーで視察受入のお願いをしていたこともあり、特別に時間を割いてくださった。

 川上議長は、藻谷浩介氏が『デフレの正体』で描いた人口動態論と、増田寛也市が『地方消滅』で描いた消滅可能都市論を下敷きに可児市議会の取り組みを説き起こした。
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 日本全体で年少人口と生産年齢人口が減少している。トヨタの本社があり、かつて豊かなまち(不交付団体)として知られた豊田市も、今や財政運営に苦慮し、急激に若者が減っている。その一方で、東京23区では若者が流入している。全国のまちが、大都市圏に若者をさらわれ、将来のまちの維持が危ぶまれている。そんな中でも、海士町のように若者をとどめているまちがある。その違いは、まちの経営の差だ。地方創生が叫ばれ出した背景がこれだ。
 可児市は、横須賀市から見れば人口推計の減少ペースも緩やかで、若者も横須賀市ほど減らない見込みだ。しかし、若者をはじめとする市民をまちにとどめるため、必死だった。

(1)市民の声を議会全体で受け止め反映していること

 可児市議会は、2011年2月に議員全員の政務活動費を出し合って、アンケート調査を行った。20歳以上の市民を対象に無作為に2,000件を発送し810件の回答を得た。その結果が議員に衝撃を与えた。「市民の声が議会に反映されていると感じている」という設問への「はい」が6.4%にすぎなかったのだ。また、「今後の可児市議会が取り組むべき課題」として挙げられたのも「市民の意見を聴く意見交換会の充実」が44.9%と最も多かった。
 可児市議会の偉いところは、このアンケート結果を「恥ずかしい結果だから隠しておこう」と考えるのではなく、記者発表したことだ。この結果、中日新聞や岐阜新聞などに取り上げられ、広く市民の知るところになった。いわば、議会として取り組む決意表明だ。
 ちなみに、5年後にも同様のアンケートを実施したところ、大幅な改善が見られたという。可児市議会の努力がしのばれるエピソードだ。

 市民の声を市政に反映するために、可児市議会は何をやったのか? 同じ業界に身を置く者から見れば、思いつく限り何でもやっている印象だ。
 可児市議会では、4つの年間サイクル(議会運営サイクル、予算決算審査サイクル、意見聴取・反映サイクル、若い世代との交流サイクル)をまわしながら、様々な取り組みを進めている。

●議会運営サイクル
 可児市議会では、議長がマニフェストを掲げ、議会内選挙で選ばれる。慣例で一年任期のこの議長が、議会全体の改革を進めるのが議会運営サイクルだ。

●予算決算審査サイクル
 予算の使い方を決める予算決算委員会の中で、市民代表である議会の意思をまとめて市政に反映していくのが予算決算審査サイクルだ。
 市政に反映と言っても、具体的にどうするのか? まず、市民との地域課題懇談会の結果も受けて、市民の声を吸い上げる。その後、予算決算委員会として議論をし、提言をまとめ、市長に通知している。
 ちなみに、「提言」と言うと優しく聞こえるが、委員会全体として全会一致で出したものは、市長にとってほぼ「命令書」にあたる。それを飲まなかったら予算を通してもらえない、つまり仕事ができないからだ。

●意見聴取・反映サイクル
 いまや大半の議会が議会報告会を開催している。だから目新しいものではない。だが、ほとんどの議会は、やりっぱなしで議会として体系的に受け止めていく仕組みを持っていない。
 可児市議会は違う。
 議会報告会は、春に予算説明、秋に決算説明で行っている。もちろん、ただ報告するだけでなく、意見交換をしっかり行う。その他、地域別の地域課題懇談会と各種団体との懇談会を随時開催している。2016年度には、議会報告会を9カ所で開催、懇談会は常任委員会単位で5回開催したようだ。
 こうして受け止めた声を、議会の常任委員会で一年かけて調査・課題整理・提言作成していく。その際、他市への委員会視察なども、道楽的もしくは散発的に行くのではなく、議論したテーマに沿って行く。
 こうしてまとめた政策提言を市長に通知し、市長からの回答をまた市民に報告していく。いわば、私が所属する会派・研政の「市民と議員の未来会議」と同じような政策形成サイクルだ。
 また、驚いたのが、「委員会代表質問」制度だ。横須賀市でも、年に1回3月議会で、各会派を代表して政策提言型の質疑をする代表質問を行っている。ところが可児市議会では、常任委員会の委員長が委員会を代表し、委員会で出た論点について市長に質問していくというものだ。市長にとって、これは怖いだろう。提案型の質問を受ければ、それは事実上「議会の要求」だ。伝家の宝刀として、横須賀市議会でも抜けるようにしておいてもいいのではないだろうか。

●若い世代との交流サイクル 
 可児市議会は、とりわけ若い世代の声を取り入れることに熱心だ。だからこそ、高校生議会やママさん議会、若者らのNPO縁塾などとの対話を非常に重視している。


(2)とりわけ、高校生の意見聴取に力を入れ、その結果、地域に若者が定着しつつあること

 可児市議会の凄みは、理念だけの議会改革ではなく、若者をつなぎとめるために議会が必死になっていることにある。
 思えば、「消滅可能都市」論でも若い女性がいなくなることがまちの消滅を意味した。だからこそ、福井県鯖江市は女子高生(JK)課を設置し、愛知県新城市は若者議会を開催して、若者の提案を積極的に取り入れている。
 同じように、可児市議会の高校生議会やママさん議会も、高校生に議会を学んでもらう「おままごと」イベントでもなければ、若者の声を聴く姿勢を見せるためのアリバイ的イベントでもない。

 ママさん議会のテーマは具体的だ。当時建設していた可児駅前の子育て拠点施設「マーノ」についての要望をワークショップ形式で聴いた。それらの声を整理し、いくつもの要望事項にまとめて市に反映させた。
 印象的だったのは、「カフェでお酒も飲めるようにしてほしい」という声だった。当初、施設内に誘致するカフェでは、飲酒禁止とする計画だった。しかし、子育てママも友達と集まってお酒を飲むのが息抜きになるのだ。だからこそ、「公共施設で飲酒をするのはいかがなものか」という懸念を押し切って実現させた。おそらく、手を挙げる民間飲食店にとっても後押しになっただろう。アルコールを提供すれば売上もF/D比も利益率も上がる。小さいことのようだが、従来の行政の常識を打ち破り、市民の声を議会が束ね、市政に反映していく好例だと思う。

 そして、可児市議会の新骨頂が2014年から始まった高校生議会だ。
 最初に述べたように、地域の担い手である若者に地域に目を向けてもらうための取り組みであり、可児市の魅力を知る場と位置づけている。
 高校生は、見ている世界が狭い。だから、可児市などは実際には地域に雇用もあり豊かな地域なのに、「都会に行かないと仕事がない」という刷り込まれたイメージで出て行ってしまう。
 こうした中、地域の可児高校の教師がキャリア教育のために地域との接点を求めていたことから、可児市議会は、いわばそのコーディネーター役を買って出た。事業者団体や行政など様々な主体が意見を交わす「フォーラムとしての議会」の本領発揮だ。
 ここで可児市議会は、「大人」目線で「子ども」に仕事や社会について教える、というありがちな手法をとらなかった。高校生議会という場を設定して、地域の課題をともに見つめ、解決のために頑張っている大人の姿を見せながら高校生にも解決策を考えてもらうという姿勢で臨んだ。そして、高校生議会を地域課題懇談会の一環としてとらえ、市民の声を聴く機会として謙虚に耳を傾けた。これはきっと、高校生にとって自らも地域をつくる当事者として巻き込まれる体験だったろう。いずれ都会に出てそこで活躍するまでの時間を過ごす傍観者ではなくなった瞬間だったのかもしれない。

 具体的には、多職種間連携教育(IPE)という手法を用いて、介護の問題について、保険師、ケアマネージャー、大学生、議員と一緒に語り合い、その結果を高校生が議場で発表するといった形をとった。その他、子育て支援、防災、地域医療、税と行政など、様々なテーマで実施してきた。
 その後、別な枠組みで地元の医師会、金融協会、商工会議所とも、それぞれ高校生との意見交換会を開催し、参加高校も可児高校だけでなく可児工業高校、東濃実業高校へと広がりを見せた。
 こうした活動の中で、「医学部を出た後に、可児市に帰ってきて地域医療に携わりたい」「名古屋に出て就職しようと思っていたが地元の銀行で働きたい」という生徒が現れてきたという。
 また、特別編として可児高校と協力して18歳選挙権に向けた出前授業や模擬投票なども行ったところ、参院選2016での可児高校生徒の投票率は、なんと90.1%を記録した。

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 高校生議会は、多面的な事業だ。キャリア教育であり、主権者教育であり、社会教育でもある。だから、2年前に3分間のプレゼンテーションで話を聞いたときには、その価値がわからなかったが、今回、深く理解できた。社会について学び、政治について学び、仕事について学ぶ、優れた「よのなか科」の授業だ。

 我が横須賀市も、人口流出日本一に輝き、今後も人口減少に苦しみ続けることが予想されている。しかし、そのためにどれだけの打ち手を講じているだろうか。
 これは、ひとえに地域経営の差だ。可児市や海士町のようなまちは栄え、手をこまねいているまちは沈む。そして、横須賀市はどうするのか。市長や民間の個人的才覚に頼るばかりの人任せを続けるのか。結局のところ、まちのことを決めるのは住民だ。そして、住民の代表として地域経営をするのは、議会だ。議会の力と責任を改めて感じた視察となった。

<番外編>
 なお、可児市内で昼食をとった際に、住民の方とおしゃべりさせてもらったが、「可児市議会ってそんなにすごいの? 知らなかった。わざわざ横須賀から来るの? こっちから行くんじゃなくて? 全然、そんな印象なかったわ〜。議長は川上さん? あのお肉屋さんよね。おいしい飛騨牛、食べて帰って〜」と異口同音に言っていた。川上議長を先頭に可児市議会があんなに頑張っても、市民の評価がそんな程度なのだとすれば、二つの考え方ができる。

(1)どうせ頑張っても評価されないんだったら、多くの議会が頑張らないのもうなづける。所詮、市民が自治に関心を持たないなら、いくら頑張っても徒労に終わるので、議会力強化など諦めて議員個人でできることに注力する。

(2)取り組み内容がピカ一の可児市でさえ、市民に知られてない。そうであれば、横須賀市議会が力を入れる優先順位は、取り組みの強化よりも市民への広報だ。「やっている感」を出して市民の注目を高め、それをテコに取り組みをまた強化する、というサイクルを回す。

 私がどちらの手法を目指すのか? 今後の活動で表していきたい。
posted by 小林のぶゆき at 13:54| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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