かつて、議員の福利厚生的な物見遊山的な視察旅行をしていた議会もあったようだが、政策集団の会派・研政に大尽旅行は無縁だ。今回も、会派メンバー5人の予定が合った2日半に、議会事務局に無理を言って手配頂き、詰め込めるだけ詰め込んだ視察となった。会派の共通政策「政策提言」に沿って、一緒に先進事例を見て学び、知見を共有して実現の方策を探るためだ。
今回は、なるべく効率的に回れるよう、東海地区で学べるものを凝縮した格好となった。
視察項目は5つある。
5/22 午後
日産自動車(株)グローバル本社:自動運転の最先端と行政サービスとの連携の可能性について
5/23
岐阜県可児市:地域課題懇談会をはじめとする議会改革の取り組みについて
名古屋市:地域委員会のその後について
名古屋市:部活動の非常勤職員「外部顧問」の派遣事業について
5/24 午前
愛知県東海市:東海市民病院跡地のホテル・健康増進施設の整備について
上記内容での視察について、以下、詳しくご報告したい。
第一日 5/22(火)
5/22には日産グローバル本社に伺い、自動車の自動運転技術と、行政との連携の可能性についてお話を伺った。
結論から言えば、自動運転がズバリ適用できそうな市の事業分野としては、コミュニティ・バスではないかとにらんだ。
現代日本には多くの課題がある。とりわけ、労働力の不足、若者のクルマ離れと運転技術の低下、安全性への要求、環境負荷低減の必要性などについては、自動運転が課題解消に大いに役立つ可能性がある。
なんといっても、自動化(オートメーション)なので、人間が不要になる。労働力不足を補える。更に、ヒトという正確性を欠く生物よりも、事故リスクが低くなる。ルート間違いやうっかりミス、アイドリング時間も減る。そして、日産さんには嬉しくないだろうが、自動車台数も減り、資源消費もCO2排出量も減るだろう。もともと、既にクルマ離れが進んでいる。自動車を持たない人だけでなく、免許証を持たない運転できない人も増えている。もう元には戻らないことは織り込み済みで、自動車メーカーも自動運転に舵を切っているはずだ。
これまで、自動運転には2つの壁があった。技術の壁と法制度の壁だ。うち、技術面では、かなり仕上がっているようだ。あとは、法制度を緩和するかどうかだ。先に挙げた社会課題の解消のため、自動運転をいつまでも法制度で縛っておくこともないだろう。
自動運転が変えるもののうち、長距離輸送や宅配などの物流は、民間の分野だ。また、公共交通については、タクシーに最も大きな影響があるだろう。次いで、路線バスも自動運転に代替されていくはずだ。これらは多くの場合、民間が担っている。行政はこの間、これらの公共交通機関が埋められなかった移動ニーズへの対応を迫られてきた。コミュニティ・バスなどだ。
というより、公共交通は行政が担うのが世界の趨勢だが、日本においてはほとんどの市町村が民間に任せてきたため、行政にノウハウがなく、対応が後手に回っている。というほうが実情だろう。
コミュニティ・バスは、山を切り開いて宅地開発されたような団地とやや離れた駅を結ぶようなものが典型的だと言える。
→郊外型なので自動車通勤が想定されていたが、高齢化や運転手だった夫の死去などで自動車が使えなくなって困る。
→かつては路線バスもあったが、子どもたちが巣立って人口も減って、便数減や廃線となる。そうすると移動が困難となる。
→毎度タクシーを呼ぶほどの経済力はない。町内会・自治会の会費でバスを仕立てる力はない。
→行政に頼る。
→「みんなで乗って維持する」マインドが住民にあれば、導入(イニシャル・コスト)だけ行政支援すれば成立する。
→自助・共助マインドがなくても、運行(ランニング。コスト)まで行政支援する財政的余裕があれば成立する
→多くのまちでは、自助・共助も公助もないので、成り立たない。
大体の構造は、こんなところではないか?
そもそも話としては、公共交通のない場所に定住を誘導しないのが一番いい。しかし、今となっては後の祭りだ。こうした敗戦処理としては、行政が住宅開発を規制しなかった責任をとって、コミュニティ・バス等を走らせるより仕方ない。
この際に有効なのが自動運転なのだろう。
多くの場合、コミュニティ・バスにおいては、導入よりも維持が問題となる。コミュニティ・バスは定員11名以下の普通乗用車で間に合うことも多く、イニシャル・コストは何とでもなる。問題は維持だ。
・白ナンバーの場合
運賃無料で運行することとなり、運転手はボランティアか別財源で雇うことになる。いずれにしても、安定的確保は困難だ。
・緑ナンバーの場合
乗客を乗せる二種免許を持った運転手を雇わなければならない。そのための、相応の運賃×乗客数が確保できるなら苦労しない。
というわけで、自動運転なのだ。
現在のところ、日産追浜工場内では自動運転の車両が走っているが、それが可能なのは私道だからだ。いくつかの住宅団地で実証実験も行われているが、それが容易なのも公道ではなく私道だからだ。公道での自動運転を認めない限り、話は進まない。
近年、「人口流出日本一」に輝き「空家予備軍日本一」と報じられた横須賀市こそ、全国に先駆けて公道での自動運転ができるよう、規制緩和できないものか? 可能性を探ってみたい。
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高木一次