2017年08月18日

【会派視察報告:後編】宿泊してもらうにはどうするか〜小樽市〜

IMG_3248.JPG※写真は出抜小路展望台から望む運河と倉庫群
 視察3日目は、小樽市を訪問し、観光基本計画についてお話を伺った。
 同じような課題を抱えてきたまちの先進事例として、効果のあった取り組み・なかった取り組み、創意工夫などを学ぼうというのが狙いだ。本市に読み替えて活かしやすいはずだからだ。
 なお、横須賀市の観光のあり方については、過去記事「横須賀市はB級観光地から脱却せよ 〜サンセバスチャンを参考に〜」でも取り上げている。よろしければご覧頂きたい。

小樽市の概観
 小樽市は、北海道の首府・札幌の海の玄関として栄えた。かつては札幌より大きなまちだったが、1964年の人口約21万人をピークに衰退し、現在では人口約12万人。
 一方、横須賀市は日本の産業革命の中心地として興り、その後は軍都として栄えた。日本のマザー工場・横須賀製鉄所の開設当初は横浜よりも大きなまちだったが、1992年の約44万人をピークに衰退。2013年には人口減少ワースト1位にもなり、現在は人口約40万人。
 いずれも、かつての主力産業の衰退と人口減少に見舞われてきた港湾都市という共通点がある。

 ただし、かつて「斜陽都市」と呼ばれた小樽市は衰退時期が早かったこともあり、早くから観光へと舵を切った。運河散策路とガス灯を整備した1986年を「観光元年」と位置づけ、現在では年間791万人(2016年度)が訪れる観光都市となっている。一方の横須賀市も、実は872万人(2015年度)で、ほぼ同水準。意外に思われるかもしれないが、横須賀市も健闘している。
 とはいえ、本市の場合は出張などのビジネストリップも多いだろう。また、まちの規模も違う。人口1人当たりの観光客数は、小樽市が約66人で横須賀市が約22人。つまり、人口規模でならせば小樽市は横須賀市の3倍のお客さんを呼び込んでいるとも言える。

 ところで、これまで私は小樽に対して別にいいイメージも悪いイメージもなく、いわば関心を持つ必要がないまちだった。だが、小樽のイメージは非常に良いそうだ。地域ブランド調査2016でも、函館・京都・札幌に次ぐ4位で、5位以下の横浜・富良野・鎌倉・金沢・神戸よりも上位だ。小樽以外はうなづける順位だが、小樽については全くそんな認識を持っていなかったので意外だった。TVなどでよく取り上げられているのだろうか? 私が他人と行動様式が大きく異なるのはTVを観ないことぐらいなので、TVをまず疑ってしまう。ちなみに、同ランキングで横須賀市は51位で、例年その辺りだ。
 この小樽の主要な観光資源は、食と景観だ。北一ガラスという一帯にある、運河と倉庫群などの歴史的建造物が人気であり、豊富な海産物を背景とした寿司のまちとしても知られるようだ。最近では、小樽のイメージの良さを狙って小樽で創業したLeTAO(小樽の逆読み)という洋菓子チェーンの売上も良いらしい。

 より立体的に小樽を理解するために、関東に無理矢理に引き付けてたとえれば、東京に対する横浜みたいな感じだろうか。日帰り観光にちょうど良いまち。
 大都市圏の札幌市から電車で30分の港町であり、海なし札幌から最も近い海だ。中をリノベーションされた古い倉庫群は、横浜の赤レンガに相当するだろう。「ちょっと中華街でおいしいものを」という感覚で、「ちょっと小樽でおいしい寿司を」食べに行ける。ついでに小洒落た店が建ち並ぶ北一ガラス地区で買い物をする感覚は、横浜の元町が近いだろうか。横浜のように、湾内クルーズ船にも乗ることができる。
 ただし、規模感は全然違う。横浜市は373万人都市。対する小樽市は12万人都市。

泊まってもらえないまち、小樽市と横須賀市
 このせいもあり、宿泊需要は全然違う。
 小樽に旅行に行くとして、小樽に泊まるだろうか? 札幌まで電車で30分である。飲み歩くにしろ、音楽ライヴや観劇にしろ、ナイトライフの充実度は比較にならない。札幌を選ぶ人が多いだろう。
 この点、先ほどたとえに用いた横浜市はまるで違う。日本最大の人口373万人を背景とした文化風俗の集積がある。ナイトライフの充実ぶりは東京に負けず劣らない。野毛で飲み歩くも良し、ジャズの生演奏や観劇もあり、夜景が自慢の横浜港をナイトクルーズしてもいい。また、神奈川県の県都として、ビジネストリップも多い。

 観光において、宿泊は非常に重要な要素だ。なにしろ、落とすお金がヒトケタ変わってくるのである。神奈川県観光客消費動向等調査によると、三浦半島(鎌倉地区以外)の宿泊客平均消費単価が22,007円であるのに対し、日帰り客平均消費単価は4,190円だという。実に5倍以上の開きだ。
 さらに横須賀市統計書の、「(124)延べ観光客数および消費額(推計)」2015年度の数字を見てみよう。横須賀市内の延宿泊客数は34万人で、日帰り客数は849万人だ。つまり、宿泊客数は観光客全体の4%に満たない。
 しかし、これを金額で見ると違う景色が見える。観光客宿泊費が約27億円、飲食費が13億円、その他消費額が8億円。割合で見ると、観光客消費額の全体48億円の56%が宿泊費であり、飲食費が27%、その他消費額が17%となる。滞在時間に応じて落とすお金は増えると言われており、宿泊客は飲食費やその他消費額の何割かも消費している。宿泊客1人あたりの宿泊額は7937円。これを神奈川県調査の22,007円と比べれば、宿泊以外の消費もある程度は類推できる。つまり、全体の4%に過ぎない宿泊客が、金額では7〜8割のお金を落としていると想定される。

 日本有数の日帰り観光地・鎌倉市は年間約2300万人を集める。だが、いかんせん首都圏からも横浜からも近く、泊まってもらえない。そもそも宿泊施設も少ない。そうすると、住民にとって観光客の存在は、メリット少なくデメリットばかりの「観光公害」でしかなくなる。生活の足となる江ノ電には乗れなくなり、道路にハミ出して邪魔だし、海岸では酔って騒ぎ殺傷事件を起こす輩まで出た。
 そのあたりは、もはやカネの問題ではない。一方で、産業としては金も問題である。
 そして、我が横須賀市も、横浜市に宿泊需要を吸い上げられているほか、そもそも宿泊ニーズを創出できていない。
IMG_3244.JPG※写真は、夜の運河と倉庫群

 さて、小樽市の宿泊客の状況はどうか?
 年間約791万人の観光入込客数のうち、宿泊客は約74万人で、全体の9%となる。つまり、横須賀市の2倍の水準で、泊まってもらえているということだ。「北海道全体が中国・韓国からの観光客が多いから、その分、横須賀よりも恵まれてるんじゃないの?」などと思ったのだが、そんなことではない。宿泊客74万人のうち、外国人は19万人に過ぎないという。つまり、大半は国内の方々だ。市内には約50宿泊施設に4,200室程度の容量があるという。
 ちなみに、北海道内から512万人(65%)、県外(道外)から279万人(35%)とのこと。まだまだ伸びしろはありそうだ。

小樽市の観光の打ち手
 そんな、魅力的なイメージづくりに成功し、横須賀の2倍以上の宿泊客を集める小樽市が、具体的にどんな取組をしているのか? 伺ったもののうち印象的だったものを紹介したい。

●小樽雪あかりの路
 運河散策路と倉庫群、そして運河の水上にまで、ロウソクの灯りを燈す企画。フォトジェニックで、行きたくなる。何よりも、夜しか見られないことも重要な点ではないかと個人的には思った。つまり、宿泊しないとゆっくり楽しめないわけだ。

●小樽運河クルーズ
 2012年より運航開始し、人気が高まっているという。特に、観光協会のポスターでも夜景を見る運河クルーズの写真をイチオシで使っていた。これも、先に述べた論理で、宿泊につながる。戦術としては正しいのではないか。

●小樽ショートフィルムセッション
 とりわけ海外での小樽のイメージ向上に大いに貢献したのが、小樽を舞台にした1995年の映画「Love Letter」だったという。これを受けてか、小樽を舞台に短編映画を製作してもらう企画。映画は、イメージ向上に役立つツールなのかもしれない。
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●「ユニーク・ヴェニュー」の開発
 ユニーク・ヴェニューとは、美術館でのバーティや、歴史的建造物等でのレセプションなど、特別な場所でのイベントを指す。小樽市では、旧銀行の洋館やニシン御殿で知られる豪商の元邸宅などで実績があるとのこと。とりわけ、企業などに人気があるという。そういえば、知人がルーブル美術館かどこかで学会のレセプションがあったときのことを嬉々として語っていたが、付加価値が高く単価も取れるだろう。
※写真は、旧日銀の金融資料館。このテの歴史的建造物がゴロゴロある。関東大震災と開発圧力で多くを失った横須賀市との大きな違い。

●小樽kawaiiティーパーティー
 元パンクロッカーの私にとって、どちらかというと苦手な耽美系・グラム系・ゴスロリ系の企画。ところが、集客や宣伝効果という面では馬鹿にできない効果があるとのこと。
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●6か国語展開の観光地図
 普通のまちの感覚であれば、日本語の他に、来訪者の多い中国語と、外国人一般用で英語、この3か国語ぐらいを用意するだろう。しかし、小樽では中国大陸系の簡体字、台湾系の繁体字、韓国語、英語に加え、タイ語でも展開。かつて、バスクのサンセバスチャンに行った時、日本語のガイドブックが用意されていて驚いたが、やはりうれしいものだ。ちなみに、小樽のインバウンド元は、中国、韓国、香港、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、米国……といった順らしい。なるほど。

 以上で、小樽市の視察報告を終える。

 横須賀市に、何を採り入れるべきか? 何を活かすべきか? それは今後、会派や議会の中で、また「よこすか未来会議」などの中で議論して考えていくことになるため、この視察報告の中で限定はしない。ただし、今回も非常に得るものの多い視察だった。以上で、今回の会派視察報告を終える。
posted by 小林のぶゆき at 23:59| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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