
ちょうど、文化会館で中筋純『流転 The Silent Views ~福島&チェルノブイリ~』展が開催されているため、せっかくだから本日8/6に合わせて観に行ってきた。非常に見応えのある内容だった。明日16:00までなので、足を運ぶことをお勧めしたい。
さて、そこでヒロシマとフクシマについて、思うことを書き連ねたい。
改めて思うのは、「この国民は、忘れやすい国民だな」ということだ。
(1)ヒロシマについて
我々が被爆国であることを、どれだけ認識しているのかと思う。7/8の「核兵器禁止条約」の交渉会議の話だ。
日本国民は、核廃絶の意思を示している。2009年6月16日には衆議院で、翌17日には参議院で、ほぼ同趣旨の「核兵器廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議」を議決している。しかも、いずれも全会一致である。その後、否定する決議等はないはずだから、つまりこの内容は国民の総意であるはずだ。
ちなみに、神奈川県民も1984年7月5日に神奈川県議会が「神奈川非核兵器県宣言」を議決しており、横須賀市民も同年9月10日に横須賀市議会が「核兵器廃絶に関する決議書」を全会一致で可決している。
ところで、先日の「核兵器禁止条約」交渉会議での態度はどうか? 国連加盟国193か国のうち、122か国が採択したこの条約。だが、世界最大の被爆国である日本は会議を欠席したのだ。米国の「核の傘」に入っていることが理由と見られている。
1945年の敗戦時、主権は国民にはなかった。だからこそ、戦争責任は直接は指導層にあり、その責任が問われ、国民の責任は問われなかった。ところで、現在は主権は国民にある。だからこそ、今回の会議を欠席したのは、国民の意志であると言える。この政府の態度は、国民の意思を本当に代表していると言えるだろうか?
「核の傘」主義をとるならば、北朝鮮が「核の傘」を持とうとする姿勢を、日本が論理的に批判するには説得力が乏しい。こうした判断と行動をする政府を、主権者である我々は間接的に選択している。この国民にその自覚がどれだけあるだろうか?
(2)フクシマについて
中筋純さんの写真展で最も印象的だったのは、帰還困難区域の双葉町と都会の渋谷を並べて比較した写真だ。
「忘れゆくまち」としての大消費地
「忘れられゆくまち」としての被曝地
改めて、考えさせられた。
原発を推進したのは、誰か?
「正力松太郎が……」とか「田中角栄が……」とか、キーマンは何人もいただろう。裏には「宗主国」である米国の意向もあったかもしれない。しかし、いずれにしても、戦後の話である。日本国憲法が公布され、国民主権になった後の話だ。
つまり、原発を日本全国に54基もつくったのは、主権者たる国民の選択である。
つまり、フクシマの原発事故を起こした最終的な責任は主権者である我々にある。もちろん、第一義的な責任は事業者である東京電力にあり、賠償責任は株主と債権者がまず負うべきであるが、事業承認や監督は国民が雇った政府が行っており、最終責任は我々国民にある。
被曝者がいるところには、加曝者がいる。
そして、そのカバクシャは我々、日本国民である。ところで、この国民にはどれだけの自覚があるのだろうか?
なおかつ、東京電力から電力供給を受けていた私たち関東圏の人間は、消費者という意味でもカバクシャである。自分も含めたこの消費者たちは、どれだけの自覚があるだろうか?
加えて言えば、我々はヒバクシャでもある。フクシマの原発事故で放出された放射能の大半は、実は福島県外に降り注いだ。多くは太平洋に撒き散らされ、世界中を循環している。しかも、今なお放出は止んでいない。私たちは今も被曝をし続けており、自分たちも程度の差はあれヒバクシャである。そのことの自覚が、この国民にどれだけあるだろうか?
(3)ヒロシマとフクシマの「根っこ」について
結局のところ、ヒロシマに対する国民の態度が、フクシマを生んだと言っていい。「根っこ」は同じだ。
水が流れるように、過去を忘れていく日本人。そして、雨のように上から降ってくるものに、唯々諾々と従う日本人。この国民が、言葉の本当の意味での「主権者」であったことが、歴史的に一度たりともあっただろうか?
ヒロシマに続く8月15日の敗戦を「終戦」と言い換えた国民は、フクシマによる国土喪失と国民の流亡という「第二の敗戦」を避けられなかった。そして、その「第二の敗戦」すら反省しきれずに、現在の危機を迎えている。そして、現在の危機を、危機とも感じていない。このままでは、おそらく「第三の敗戦」が待ち構えているだろう。
とはいえ、我々は、傍観者でいるわけにはいかない。お上が決めてくれるお気楽な封建社会は江戸時代で終わったはずだ。何のために、明治維新から太平洋戦争まで近代史において多大な犠牲を払ってきたのか?
今こそ主権者に「なる」のだ。
来週、8月15日には「敗戦記念日」をみんなで迎えたい。
この記事へのコメント