走り続ける会津若松市議会から凋落の横須賀市議会が学ぶこと

Ranking.png 2016年7月29日(金)に、議会運営委員会で会津若松市に視察に伺った。まず、つい視察報告を忘れていて、大変に遅くなったことをお詫びする。
 大変申し訳ありませんでした。

 横須賀市議会では、4つの常任委員会が「委員全員で先進事例を見て、共通認識をもってやろう」ということで、年に一回視察に行くことが多い。「今年も行きたい! ここに行きたい!」と言う勉強熱心な議員が多く、視察先候補も沢山挙がる。10日程ないと全部行かれないが、日程や予算の都合で3日間に詰め込めるだけ詰め込むのが慣例となっている。
 一方、議会の議論の進め方や段取りを決める議会運営委員会では、私が議員になってからの6年間で初めて視察に行くことになった。過去にも視察はあったようだが、惰性で毎年行ったりせず、必要に応じて行くのは良いことだと思う。
 今回は、会津若松市の先進的な取り組みが様々な議員の口に上ることを受けて、我が会派の研政から提案させて頂き、了承頂いた。

 なお、議会運営委員会は4名以上の交渉会派から選ばれる。
 →横須賀市議会の委員会
 交渉会派ではない共産党は残念ながらオブザーバーであるため視察には行かれなかった。一方、議会を代表しており議運にも出席頂いている議長には視察に帯同頂いた。

視察の背景

●議会改革の3段階
 議会改革は3段階に分かれるように思う。私なりの分類である。
 第一段階は、公開性・透明性の確保の段階。
 第二段階は、政策実現と市民参加の段階。
 第三段階は、市民と一緒になった民意反映の段階。

●第一段階:かつてはトップランナー
 横須賀市議会は1998年から実質的な議会改革を進めた。とりわけ、会議条例や委員会条例の制定、インターネット中継(本会議2003年~・委員会2008年~)の実施、政務活動費の領収書公開などは、注目を集め、全国有数の改革議会として日本中から視察が相次いだという。第一段階では、間違いなく日本のトップランナーの一角だった。

●第二段階:まだまだ先頭のほうの優等生
 その間に全国の議会改革の流れは進んだ。
・首長提出議案を修正や否決しない、「丸のみ議会」
・議員提案の政策条例を策定しない、「無提案議会」
・議案への議員の賛否を明らかにしない、「非公開議会」
 これら「3ない議会」への批判が相次ぎ、政策づくりをする議会が求められた。また、市民参加の重要性もより強調されるようになった。
 こうした中、横須賀市議会は元々賛否を明らかにしていたうえ、必要に応じて次のような政策条例を策定したり市長提案の議案を修正したりしていた。
・2011年 中小企業振興基本条例
・2012年 空き家等の適正管理に関する条例
・2013年 地域で支える条例
・2014年 観光立市推進条例
 そのため、これら批判とは無縁だった。また、議会報告会、傍聴者にわかりやすい一問一答方式、請願・陳情への意見陳述制度などの導入により、市民に開かれた議会づくりを進めてきた。
 こうした第二段階において横須賀市議会は、全国に先駆けるトップランナーでこそなかったが、先頭集団の作り出すトレンドから大きく遅れることのない優等生議会だったと言えよう。

●第三段階:ペースが落ちて抜き去られる
 しかし、ここ4~5年の全国の議会改革の進化のスピードは速かった。「議会に求められるもの」や「議会を測るモノサシ」も急激に変わった。
 第一段階・第二段階は、情報の公開や議会報告会の実施といった「形式要件」の改革で評価されたが、「住民の意向をどれだけ鏡のように市政に反映する取り組みをしているか?」という「実質要件」が重視されるようになった。
 この面において、会津若松市議会のような先進議会は常に実質性を追及していたため、「形式要件」でも「実質要件」でも評価され続けた。一方、横須賀市議会は「形式要件」の評価では高い評価となってきたが、「実質要件」の評価には耐えられなかった。

●数字で見る横須賀市議会の凋落と会津市議会の常緑
 ここまで定性的な議論をしてきたが、わかりにくい向きもあろうと思うので、一面的ではあるものの定量的な議論をしてみたい。
 早稲田大学マニフェスト研究所による「議会改革度調査」がある。
Ranking.png このランキング結果を、今回の視察対象である会津若松市に加え、直近の上位3議会も併せた表にしてみた。
 ここから見えるものは明らかだ。
 過去記事「17位から175位への転落。これが横須賀市議会の実力か?」でも触れているが、改めて整理してみたい。

 繰り返しになるが、横須賀市議会はかつて、議会改革の第一段階ではトップランナーの一角だった。この表の2011~2012年ごろまでの第二段階でも先頭集団に食い込む優等生議会だった。しかし、ここ4~5年の第三段階の議会改革の波には乗り遅れた。つまり、近年の「実質要件」による評価傾向に照らせば順位が落ちるし、先進議会を見習って急激に議会改革を進めた新鋭議会にも追い越される結果となった。直近のランキング2015の上位3議会は、いずれも横須賀市よりはるか下位に位置していた議会であり、実に対照的だ。

 こうした中、横須賀市とも上位3議会とも異なるのが会津若松市議会だ。このランキングが始まる前から、ずっと高い評価をされ続けてきた。
 ランキングは、実体の一面を切り取るモノサシである。エヴァーグリーンな会津若松市議会を訪問することで、横須賀市議会の改革を進め、実質的な住民満足の向上を目指すことが今回の視察の狙いだ。

視察の内容

●「カタマリとしての議会」から「市民と結びつく議会」へ
 会津若松市議会の優れた点は多方面にわたるが、今回は「市民参加型の政策形成サイクル」に焦点を当てて視察を実施した。
 会津若松市議会と言えば、「カタマリとしての議会」論の印象が強かった。彼らの言葉によれば「市長に対抗するためには議会が一つにまとまる必要性がある」ということだ。個々の議員の発言では「そんな声もあるね」で終わるところ、議会全体の声はすなわち「市民の声」となり、市長以下の執行機関に対して事実上の「命令」に近い強い力を持つ。
 しかし、会津若松市議会は、すでにその先を見据えていた。彼らの言葉によれば「議会だけでまとまるのではなく、議会は市民と結びついて、市民意見を後ろ盾にして、活動していくべき」ということだ。市の「株主」であり「オーナー」である市民の声を代表していることの自信は、議会の力をより大きくするはずだ。

●「政策形成サイクル」の特徴
政策形成サイクル.jpg 上記の考え方を下敷きにした会津若松型議会制度の最大の特徴は「政策形成サイクル」である。
 頂いた資料から模式図を転載する。
・市民との意見交換の中から、課題を発見する
・議会として何に取り組むべきかについても意見交換を通して明確化
・政策や条例づくりにあたっても意見交換をして市民を巻き込む
・最終的な議決前にも意見交換をする
・市長以下の執行機関に実施させた後も意見交換をしながら監視する

 ざっと言えば、このような流れだ。いわば民意反映のPDCAサイクルであり、その全てに市民参加の手続きを盛り込んでいくというものである。
 さらに、このサイクルの推進体制として、広報広聴委員会、各派代表者会議、政策討論会、議会の各種会議体を明確に位置付けている。役割分担が明確で、システムとして作り上げられている。

●年に30回以上の市民意見交換会で民意を汲み取る
 システムの全体像だけでなく、具体的な状況も紹介する。
 具体的な意見交換会の実施にあたっては、(1)地区別・(2)分野別に分けて行われる。
 (1)地区別においては、概ね小学校区ごとの15地区に分け年2回開催しているという。この議員30名を5班に分け、15地区を1班3地区ずつ手分けして担当するという。横須賀市の議会報告会が年1回であり人口が4倍でありながら市内5か所と1/3の実施箇所数にとどまることを鑑みれば、彼は密であり我は疎である。しかも、我が方は基本的に一方通行の「報告会」であり、彼が方は市民を巻き込む「意見交換会」だ。驚くべきことに、この地区別意見交換会には各会場合計で毎回160~300名もの市民の参加があるという。市民にとって「行けば声が反映される」感があるということだろう。なお、我が方の議会報告会への参加者数は各会場合計で数十名にすぎず、年々減少している。
 このほか、我が市では実施していない(2)分野別でも意見交換会を実施している。これは、必要に応じて随時開催するということだが2008年以降7回開催しており、ほぼ年1回のペースである。

●市の公共施設再配置計画も転換させた
 会津若松市議会は政策形成サイクルにより、実質的な政策へ落とし込んで、実際に市政を動かしている。
 一例として、公共施設の再配置がある。市長が提案した計画素案に対して、市民との意見交換をふまえて検討し、報告書と決議にまとめて市長に提示し、結果として別案に転換して実施させた。
 この他、水道未整備地域の解消や、公共性の高い私道の除雪実施など、議会が主導して市政を動かしている。政策形成サイクルが実質的に機能している証左といえる。

●増える仕事量。減る報酬。
 その他、お話を伺いながら印象に残ったことを記しておく。

・「既存の問題」と「将来の課題」がある。「既存の問題」に対処するのが政策形成サイクル、「将来の課題」に対処するのが総合計画の議決であろう。

・もはや、「通年議会」どころか4年間の「通期議会」になっている。

・かつてと比べ、議会としての仕事量は4~5倍になっている。広報広聴委員会メンバーに至っては10倍位になった印象。

・会津若松市議会が全国で評価されているとは言っても「報酬下げろ」議論はある。地道に仕事していくしかない。

 ちなみに、「報酬下げろ」議論どころか、調べてみるとむしろ2013年1月1日以降は従前の7%減となる月額447,000円としているようだ。
 公募委員や有識者などによる「特別職報酬等審議会」を開催し、その答申に沿って、議会が自ら決めたという。仕事が5倍なのに報酬減では、なんだか割り切れない思いがする。だが、それはそれぞれの市町村の住民が決定することであり、私が口を挟むことではない。
 なお、我が方は2010年4月1日より従前の2.4%減となる月額646,000円である。議員の仕事は何なのか。それに見合った報酬はいくらなのか。そこから自ら決めればよいだろう。いずれにしても、市の人口や予算規模と相関させるべきではない。

視察からの洞察

●横須賀市議会も政策形成サイクルの導入による議会改革第三段階へ
 以上を受けて、我が議会はどうするべきか?

 まず、最大の課題は公聴機能がほぼないことだ。市民の意向を汲み取って、政策づくりや意思決定に反映するための、議会としての体制がない。現在では、議員個人や会派に委ねられている。
 議会報告会の場で、若干の意見交換の時間があるが、あくまで報告会の付属物という雰囲気だ。公聴や意見交換の場としてふさわしい設えをしていない。しかも、その場で頂いた意見は各議員に後日共有されるだけであり、議会という機関として受け止める格好ではない。

 ついては、議会報告会等準備会、議会だより編集委員会、議会IT化運営協議会を発展的に統合・解消して「公聴広報委員会」をまず作る必要があるだろう。

 併せて、大津市議会「政策検討会議」や会津若松市議会「政策討論会」にならった、政策検討の会議体を作る議論も進んでいる。この会議体と「公聴広報委員会」との業務連携の仕組みも「政策形成サイクル」に習って作るべきだろう。

 実際にどのような提案を議会内でしていくか、という点については、会派内や議会内での議論を経て調整していく必要があるが、視察をした時点での一委員としての洞察はこのとおりである。

 以上で、議会運営委員会視察の報告を終える。

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