2016年11月21日

横須賀市はB級観光地から脱却せよ 〜サンセバスチャンを参考に〜

IMG_2628.JPG 写真はサンセバスチャンのバル街
もったいない、横須賀市
 8年前に横須賀市に引っ越してから、「なんて、もったいないまちなんだ!」と思ってきました。要するに、いいまちなのに活かせてないのです。だから、市議にもなりました。

(1)定住で、もったいない。
 住む環境としてはいいのに、市のお金の使い方が悪くて制度が整っていないから、住みやすくない。

(2)観光で、もったいない。
 色々な観光資源があるし立地も恵まれているのに、上手く使ってないから、観光客を呼べない。

 逆に言えば、定住人口減を食い止め、交流人口増を目指す潜在力がある。これは、ずっと横須賀市に住んできた人よりも、よそ者のほうがむしろ気付き易いかもしれません。
 じゃあ、どうすればいいのか?

 定住面では、中学校給食導入や学童保育改革、教育改革など、色々な提案をして、少しずつ実ってきました。一方、観光面では、具体策が欠けていたと思います。

 もちろん、手をこまねいていたわけではありません。横須賀市議会は2014年に「観光立市推進条例」を議員提案で作って、「うちは今後、観光でメシを食っていくんだ!」という方向性を明確にしました。しかし、現時点では実力不足です。そして、条例は枠組を決めただけであり、具体策はまだ詰められていません。ただし、観光は生き物で、時の流れに応じて動いていくものなので、むしろ条例であまり細かく定めないほうがいい。
 とはいえ、観光には戦略と打ち手が絶対に必要です。それを市議会が条例でルールとして決めるのか、市役所が行政計画として決めるのか、観光協会や企業など民間が決めるのか、という違いはあっても、誰かが決めて実行しなきゃいけない。

 その戦略をどうすればいいのか?
 これについては、ずっと考えてきましたが、自分としては最近ある程度の方向性が見えてきました。以下、書き出しながら整理したいと思います。

なぜ観光なのか?
世界のインバウンド観光.png もはや改めて述べるまでもありませんが、なぜ横須賀市が観光に力を入れるべきなのか?
 現在、世界最大の産業は観光であると言われています。UNWTO(世界観光機関)の“Tourism Highlights 2016”によれば、次のような状況です。
●国際観光は、1950年・2500万人→2015年・11億8600万人へ急成長
●国際観光収入も、1950年・20億ドル→2015年・1兆2600億ドルへ
●いまや、世界のGDPの10%
●11人に1人は観光産業で雇用
●世界の輸出の7%。燃料、科学に次ぐ第3位。食料や自動車産業を超える

 横須賀市も、製造業はかつての輝きを失っています。その穴を埋めるために基地の拡大を目指すことも市是に反します。かといって、IT企業の立地やYRPのような研究開発拠点を増やせるかと言えば、以前考察したように(→過去記事)競争力に欠ける。しかも、相手あってのことなので、あてにはできません。
 だからこそ、資源にも比較的恵まれ、まだまだ伸び代のある観光なのです。観光テコ入れが、横須賀市の打ち手として最も確実な産業政策ではないかと考えています。

観光産業の特徴と戦略
 観光は、何で付加価値や競争力を生むのか?
 まず、技術志向ではありません。設備投資に比例する資本集約でもありません。労働分配率は比較的高いですが、労働集約とも限りません。もちろん資源は必要ですが、天然資源と違って新たな観光資源を生み出すこともできます。その意味で、企画力や広い意味のデザイン力に負うところが大きい。典型的な第三次産業だと思います。
 たとえば、個人が山に植えた花を見るために世界中から何万人もの人が訪れる時代です。何を発掘するか? 何に投資するか? それをどんなチャンネルでどう知らせるか? 観光には戦略が要ります。

横須賀市はA級で売れ!
 横須賀市の観光戦略は、B級ではなくA級でいくべきです。
 横須賀市は、日本だけでなくアジアの近代史に大きな役割を果たしたまちです。そして、三浦半島は良い景観や食材にも恵まれています。これらはA級の素材です。
 ところが、現在はB級に偏りすぎていると思います。軍港めぐり、海軍カレー、ネービーバーガー、アニメの「聖地」化などなど。もちろん否定するものではありません。しかし、残念ながら、これらはニッチなマーケットにしかなり得ない。一部の層しか取り込めないというだけでなく、単価も取れません。
 たとえば、戦艦三笠の甲板の上でアニメのキャラに扮する人々がどれだけお金を落とすのか? 衣装は用意してから臨むだろうし、入場料などの課金化も知れている。大きな市内消費は望めない。
 また、人はカレーやバーガーにどれだけお金を使うだろうか? 客単価と利益率を上げるにはF/D比的に酒を飲んで頂かねばならない。しかし、カレーやバーガーを食べながら酒を飲みたい人は少ない。しかも、観光消費の牽引役である女性は、可愛いものを色々少しずつ食べたいもの。どちらかといえばガッツリ系のファストフードじゃ、そもそも呼べない。

 B級グルメに手を出すのは、B級な物しかないまちだけでいいんです。宇都宮や浜松が餃子のまちで売っていますが、あれはあれでいい。一皿の量が少なくて食べ歩きができ、万人受けする料理で、何よりも「餃子といえばビール」という刷り込み効果があるので単価と利益を上げられる。これが焼きそばやラーメンじゃ、そうは行かない。いわんや、カレーやバーガーじゃ、どうにもならない。
 別に民間が頑張る分にはいいんです。それで儲かるなら、自前でやってくださるでしょう。ただし、いずれにしろ行政の仕事じゃない。市の各種リソースの割き方としては、海軍カレーとネービーバーガーにさっさと見切りをつけるのが正解です。
 三浦半島にはA級の商材が揃っている。わざわざB級の土俵に降りて戦う必要なんてないのです。

名勝史跡や神社仏閣だけじゃなく、グルメも大事。
 横須賀市の近代史の観光活用については、参考にすべきまちは多いでしょう。パリ・京都や呉市「大和ミュージアム」、広島・長崎の原爆資料館、アウシュビッツ強制収容所、ベルリンの壁などが参考になるかもしれません。
 また、景観の面でも、ミシュラン・グリーンガイドで三浦半島・城ヶ島・観音崎・葉山マリーナなどに星が付いたことは、もっと活かしたほうがいい。また、海岸線の電線地中化や歩道整備でもっと美しくなるはずです。

 一方、名勝史跡や神社仏閣だけでは人は来ないし、観光消費も増えない。人間は、三食食べて夜は寝る生き物だし、それが大きな楽しみです。美味しいものが必要です。
 この面で横須賀市が参考にすべきは、私はサンセバスチャンじゃないかと考えています。政務活動費で買った『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか』という本から引用する形でご紹介します。

世界一の美食の街、サンセバスチャンとは
IMG_2620.JPG サンセバスチャンは、スペインのバスク自治州ギプスコア県の県都となる人口18万人の港町です。
 バスク語を話すバスク人が多く住んでいて、スペインの中でも独自の文化を持つ。独立運動もある。美しい砂浜があり、欧州貴族の避暑地として歩み、ミシュランガイドの星付レストランが世界一ひしめく美食の街としても知られる。
 無理やり日本でたとえると、人口規模・県庁所在地や独立運動の感じから言えば那覇市みたい。金持ちの避暑地で小ぢんまりした美しい海岸の雰囲気から言えば逗子市みたい。歴史ある街並みの美しさやミシュランの星のあふれぶりは京都市みたい。そんな感じでしょうか。

 ここは今、世界一の美食の街と言われています。1980年代のフランス料理のヌーベル・キュイジーヌ(新しい料理)の流れを受け継いで、1990年代にヌエバ・コッシーナ(新しい料理)のムーブメントがスペインで花開きます。その中心となったのがサンセバスチャンでした。
 著者は、サンセバスチャンにおけるヌエバ・コッシーナを、シリコンバレーにおけるIT革命になぞらえています。
●規制概念にとらわれない型破りな人物たちの活躍
●世界中を旅して得た(とりわけ禅・和食からの)新しい感覚の導入
●情報・ノウハウをシェアするオープンな気質・文化
●それらが集まって交流する学校・企業などの場

 そうやって生まれた料理がいかに新しいかについては本を読んで頂ければと思いますが、横須賀市政にとっての要点はIT革命ならぬ調理革命のインパクトです。街のレストランのレベルを一気に上げ、世界中から観光客やコック・生徒が集まるようになり、世界中にノウハウや人材を輩出している。そして、行政側も料理大学の設立やグルメツアーのプロモーションなどの側面支援をして盛り上げました。
※追伸:若松マーケットの「横須賀ブラジャー」は良いモデルだと思います。競争力のあるカクテル。そのレシピを、開発者が抱え込むことなく公開し、近隣のお店と一緒に展開する。これはオープン&シェアのモデルです。こういうことを積み重ねることで、まち全体に付加価値をつけることができ、誘客効果を高め、みんなで栄えるモデルが最高ですよね。
IMG_2643.JPG
 そして、サンセバスチャン観光の最大の売りがバルめぐりです。バル(バーとカフェと居酒屋が一緒になったようなスペインで一般的な業態)ごとに自慢のピンチョスという一品料理があり、ちょこちょこ食べ歩きするのです。このピンチョスが進化し、ミシュラン星付の高級店でしか食べられないような独創的な料理が300〜400円程度で出てきたりします。バルめぐりのために、わざわざ飛行機で海を渡ってくる旅行客がたくさんいるんですから、要するに人間は美味しいものに目がない食いしん坊なのです。
※ピンチョスの写真は最後にまとめて掲載します。

 このサンセバスチャンのシーンに日本で一番近いのは、横浜の野毛でしょうか。ただ、ちょこちょこ感は薄いので、宇都宮の屋台横丁のほうが近いかなあ。
 うーん、そうですね。チケット一枚で一皿とワンドリンクを頼んでハシゴ酒する「ちょい呑みフェスティバル」を毎日やっている感じが一番近いかもしれません。

三浦半島の食材は武器になる。
 ただし、サンセバスチャンの強みは、料理法や料理人だけではありません。食材も自慢です。ビスケー湾でとれた魚介類やピレネー山脈の麓でとれた肉や野菜など、地元の豊かな食材を使うことにこだわっています。フランス発のヌーベル・キュイジーヌに加えて、イタリア発のスローフードの流れも取り込んでいる感じです。
 この観点では、野毛や屋台横丁にない食材の競争力が横須賀市にはあります。三浦半島には東京湾・金田湾・相模湾の「三つの浦」からの海の恵みと、三浦野菜や鎌倉野菜のような少量多品種の珍しい野菜たち、葉山牛などがあります。加えて、三崎から鎌倉にかけて、スローフードや農的生活を取り入れた、感度の高い人やお店の集積があります。
 これは、武器になります。横須賀市には野毛より化ける潜在力があると思う。しかも、僕は横須賀市に引っ越してきて、この地域の飲食店のレベルの高さに驚きました(おかげで飲みに行く回数が増えてしまいましたが苦笑)。東京・横浜に負けないと思う。

横須賀市は「日本のサンセバスチャン」を目指せ?!
 具体的には、民間のやる気のあるシェフ・経営者を公費でサンセバスチャンなどに派遣して、世界の最先端を観てきてもらうのもアリじゃないかと思っています。
 そのうえで、若松マーケット・ドブ板通り・逗子銀座商店会や、追浜・久里浜・衣笠などに飲み歩き文化を形成してもらう。必ず三浦半島の食材を使って、自慢の一品料理を展開してもらう。
 そして、交通網は恵まれているので京急やJRとも連携して、東京・横浜圏から週末は三浦半島に呑み歩きに来るイメージを刷り込みます。そして、定着してくれば、呑んだ後に帰るのもカッタルイので、泊って頂いて、翌日は(仮)近代歴史資料館や海で遊んでもらうパッケージなども展開できます。飲酒してもらい、宿泊してもらえれば、観光消費額はヒト桁違ってきます。

 いかがでしょうか?
 私は、横須賀市なら十分狙えるし、世界一の都市圏である東京首都圏でこのポジションを獲得すれば経済効果も大きいと思います。逆に言えば、こういう位置に立てない限り横須賀市の観光振興は中途半端で終わる気がします。
世界の上位10か国.png
 観光インバウンドにおいて、日本は世界の上位10位に全然届かない状況です。実力を考えれば、日本こそもったいない。とはいえ、そんなことを嘆いていても仕方がない。横須賀市は自前で頑張るしかない。そして、世界からお客さんを招くときに参考になるのが、次のデータです。
世界の支出上位10か国.png 世界の観光支出の多い国、上位10か国を見れば、自ずと戦略が見えてきます。UNWTO“Tourism Highlights 2016”によれば、国際観光の5分の4は域内観光だといいます。つまり、北米の人は5人に4人が北米に、欧州なら欧州に、東アジアなら東アジアに旅行に行くということです。私もヨーロッパに行った際、飛行機移動があまりに長くて「次は近場に行こう」と思ったので、よくわかります。近くがラクだし安い。
 ここから、横須賀市が狙うべきは中国・米国・韓国だと思います。域内で市場の大きい中国・韓国はもちろんのこと、日本一米国関係者の多い地域だからこそ“域内”感があると思います。「ヨコスカのトモダチに会いに行こう。景色のいいところで美味しいもの食べよう」というキャンペーンを、米海軍関係者の多い街で展開するのもアリかな、と思います。

 以上、私の政策提言でした。
 ぜひ一緒に考えていきましょう。

IMG_2633.JPG<左上>スイカ?味のナッツ入りゼリー、ベリーソースとカラメル?ソースにセサミがけ
<右下>コンソメ?味のジュレに黄身を入れた再構築玉子、卵か魚の白身?フレーク添え



IMG_2632.JPG<上>スモークサーモンとクリームチーズの何らかのソースがけ
<下>サーモン&イクラの親子とクリームチーズの何らかのソースがけ



IMG_2640.JPG<左上>カニと生ハムと海老入りガスパチョ
<右上>エビ、マッシュルーム、生ハムのピンチョス、ブルーチーズソースがけ
<下>ヒルダ(アンチョビ、青唐辛子、オリーブの定番ピンチョス)





IMG_2654.JPG<左>3種のキノコのタルト
<中央>やわらかいタコのマリネ(これを久里浜の地ダコに応用すれば、高齢者でも食べやすいと思う)
<右上>ヒルダ
<右下>カマンベールと生ハムの蜂蜜ソースがけ


IMG_2655.JPG地元の人に大人気の市場のバルの朝食(朝から呑んでる人多数)
<左>イワシマリネとツナ、イワシマリネと何か、ナスとハムのはさみ揚げ
<右>オイル漬けマグロとオリーブの玉ねぎソース、鳥胸カツサンド、タラのフライ

IMG_2653.JPG<左>ウナギの稚魚風カニカマ入りムースにトマト?ソースと卵か魚の白身?フレークがけ
<右上>マック神戸(ミニチュアのハンバーガーただしレア)のバナナフライ添え
<右下>スモークサーモンならぬスモークイワシを刻みパイナップルに乗せた寿司?

IMG_2718.JPG<左上>フォアグラ乗せカマンベールチーズのオーブン焼きメイプルソースがけと青リンゴ乗せカマンベールチーズのオーブン焼き青リンゴソースがけ
<左下>穀物と牛肉のハンバーグに青い豆かナッツのトッピングとベリーソースがけ
<右上>目の前でモクモクと追加スモークするスモークサーモンならぬスモークタラを乗せて食べる緑色のディップ
<右下>ココナッツ入りのクリームチーズにナッツとスプラウトまぶしカラメルソースがけ

IMG_2672.JPG<左>ヒヨコ?豆の辛くないチョリソ煮込み
<右>生ハムのチーズカツレツに赤ピーマン添え
posted by 小林のぶゆき at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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