【委員会視察報告後編2】佐世保で気付いた「ふるさと納税」の浅薄さ

IMG_2580.JPG 先日、ファミレスで朝飯を食べていて、テーブルに置かれていた冊子に何気なく手を伸ばしたら、たまげた。なんと、ふるさと納税専門のフリーペーパー!

 16ページもので30前後の市町村が掲載されている。ネットだけじゃなくリアルなチャネルを試したいクライアントのニーズに応えた、ということなのだろう。元フリーペーパーの広告営業マンとしては、少し透けて見える。しかし、こんなことまでするものかね?
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 だいたい、表紙の英文表記が腹立たしい。“FURUSATO SPECIAL GOODS”だと? 英語なんてただのイメージでみんな読まないとでも思ってるんだろう。本来、同じ頭文字なら“FURUSATO SUPPORT GIVING”とでもすべきだろうに。寄付の趣旨を完全に忘れて、ただの物品カタログに堕している。

 ふるさと納税といえば、2年半前に「ふるさとチョイス」のサイトを見てビックリしてこんな記事も書いた。
 →「仁義なき市町村バトル?~ふるさと納税のサービス合戦はいかがなものか会議~」 
 改めてサイトを覗いてみても、2年半前より、ふるさと納税の「オマケ商法」大合戦ぶりに拍車がかかっている。

 いったい、いつまでこんなことを続けるのだろうか? この国の為政者の責任は、いずれ検証されるべきだと思う。
 とはいえ、われわれ地方は法律上、国の敷いたレールの上で仕事しなければいけない。屈辱的だが、市町村間の分捕り合戦の中、一所懸命に領地を守らなければいけない。というわけで、横須賀市もまた「ふるさとチョイス」を使って「オマケ商法」に手を染めている。
 さて、視察。

 こうした中、佐世保市もふるさと納税の「オマケ商法」に参入した。時期は遅い。横須賀市と同じ2015年度からだ。
 ただし、大きな差が出た。2015年度の寄付額実績で、横須賀市が3088万円のところ、佐世保市は26億4759万円を稼ぎ出しているのだ。実に、我が市の86倍にあたる。
 →平成28年度“キラっ都”佐世保応援寄附金活用事業
 →平成27年度横須賀応援ふるさと納税活用状況報告書
 この差がなぜ生まれたのか? 大きく3つの理由が考えられる。

(1)おトク感(還元率)と方式の差
 横須賀市は10,000万円以上1回の寄付につき4,000円相当の商品をオマケにつけていた。40%還元である。50,000円寄付しようが、同じ4,000円相当なので、この場合は8%還元。つまり、おトク感が低い。ただし、10,000円を5回に分けて寄付すれば、4,000円×5=20,000円分もらえる。ただし、寄付控除は1回につき2,000円分引かれるので、2,000円×5=10,000円はバカにならない。20,000円-10,000円=10,000円のおトク感となってしまうのだ。
 ところが、佐世保市は50,000円寄付すれば、25,000円相当のポイントがもらえる。50%還元である。これだと、寄付控除は2,000円しか引かれないので、25,000円-2,000円=23,000円分のおトク感となる。差は歴然だ。
 また、ポイント制だから、25,000円相当のポイントを15,000円分と10,000円分に分けて引き換えることもできる。便利で、選びやすい。ちなみに横須賀市も、2016年度からこのポイント制を導入した。
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(2)商品とカタログの差
 佐世保市の「返礼品カタログ」を見て、少し唖然としてしまった。108ページ。全ページカラー刷り。どこのギフトカタログかと見まがうばかり。
 それもそのはず。このカタログのディレクションは、百貨店の食品部門でバイヤー元部長さんを定年後に嘱託で雇用して担ってもらっているという。
 返礼品の送り先を、自宅ではなく親戚など別のところにする人も多いらしい。そう言われれば合点がいく。これはそもそも、「ささやかながら寄付の返礼品を差し上げたいのでこの中からお選びください」というつつましいものではない。発想がそもそも違う。要するに、お歳暮のギフトカタログや結婚式の引き出物の選べるギフトカタログの発想なのだ。
 商品も、おいしそうな写真で長崎の山海の恵みがこれでもかというほど載っている。勝てる気がしない。ちなみに、カタログへの掲載は、出品する業者が1コマ9,000円払っている。つまり、フリーペーパーに近い。約1800万円の費用で14万部印刷しているが、うち1/3強の675万円程度は掲載料で賄っている。

(3)都市イメージの差
 横須賀市はCrazy Ken Band『タイガー&ドラゴン』でも「ドス黒く淀んだ横須賀の海」と歌われているように、軍港のまちという印象が色濃い。食べ物も、実はA級食材だって多いのに、マーケティングに失敗しているからカレーやハンバーガーなどB級グルメのイメージが根強い。
 一方、佐世保市はどうか?
 同じ、旧軍港4市でありながら、少なくとも関東に住んでいると呉や横須賀に比べて軍港のまちという印象は薄いのではないか? むしろ、ハウステンボスのまちとして知られているし、どこか九州の島がいっぱいの海のまち、程度の認識しかないのが大半だと思う。そうすると、軍港イメージが観光や定住の邪魔にならないだろう。事実、A級グルメもたくさんある。
 東京の人がふるさと納税するとき、横須賀か佐世保か迷う人なんかいなくて、マジョリティは迷わず佐世保を選ぶし、コアな興味関心のマイノリティが横須賀を選ぶのだと思う。

 さて、こうして比べてきたが、ここから横須賀市が参考にすべきことは何か?

 私は、横須賀市が佐世保型のきれいなカタログをつくる必要なんてないと思う。
 佐世保市を否定するつもりはない。佐世保市には、競争力のある沢山の物産があり、ふるさと納税による財源確保よりも物産の販促が主眼である。だからこそ、観光商工部ふるさと納税推進課が担当している。
 横須賀市は、財源確保が主眼である。だからこそ、財政部財政課が担当している。そして、市を挙げて物産振興をするほどの産業の厚みはない。過熱する「ふるさと納税オマケ商法マーケット」の中で勝てるだけの強みもない。ニッチなマーケットの中で、コアな横須賀的なものやサブカル的なもの、軍港的なものに関心を持つ層にきちんと訴求し取りこぼさないことで精いっぱいだろう。そのためには、カタログやフリーペーパーのような費用のかかるプッシュ型メディアではなく、ふるさと納税ポータルのようなプル型メディアで費用をかけずに情報伝達するのがやはり正解なのかもしれない。

 というわけで、横須賀市にすぐ活かせそうなものは、私は特に見出せなかった。ただただ「こんな不毛な仁義なき市町村バトルを早く終わらせてほしい」と国に願うばかりだ。


 以上で、委員会視察の報告を終える。

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