【委員会視察報告後編1】佐世保で気付いた「日本遺産」制度の浅薄さ

IMG_2571.JPG 視察3日目は、佐世保市に伺った。横須賀市にとって佐世保市と言えば、何といっても旧軍港4市の仲間である。
 同じ軍転法の下で戦後復興を果たしてきた。まちの空気感も景色も、どこか似ているような気がする。
 旧軍港の近くにJR佐世保駅があり、市街地に私鉄の佐世保中央駅があるのも、JR横須賀駅と私鉄の横須賀中央駅の関係に似ていて面白い。
 さて、視察。

日本遺産について
 「日本遺産」なるものが2015年にできた。色々と言われているが、要するに「世界遺産」の弟分になり損なった制度だろう。
 →文化庁『「日本遺産(Japan Heritage)」について』

 「世界遺産」は、世界に1,000ヶ所以上指定されている。大きく、文化遺産と自然遺産とがある。
 「日本遺産」は、2015年に18件、2016年に19件登録され、計37件でまだまだ増えそうだ。しかも、「世界遺産」のように「その価値を評価して保護していこう」という話ではなく、「地域活性化に活用しよう」という話らしい。「地方創生」と軌を一にしているのだろう。そのため、どこかの時点の内閣が止めない限り、際限なく増えそうな気がする。
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 で、佐世保市・呉市・舞鶴市・横須賀市の旧軍港4市チームで登録した日本遺産が、「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」だ。
 このストーリーを構成する文化財が4市にたくさんあって、そのうち2つを、港を見下ろす丘の上から見せて頂いた。
IMG_2574.JPG また、その1つである旧海軍佐世保鎮守府凱旋記念館については、中に入れて頂き、見せて頂いた。
 以下、感想と横須賀市に活かせる視座を書き出してみたい。

 これらの構成文化財に価値はあるのだろうし、私には詳細まではわからない。ただし、問題は「日本遺産で、本当に地域活性化できるのだろうか?」ということだ。

 「世界遺産」登録された白川郷や白神山地などは観光客が一気に増えたという。しかし、石見銀山のように登録後にどっと増えたものの、登録前に近い水準まで減ってしまう「世界遺産登録バブル」みたいなことも起こっている。
 そもそも、「世界遺産」は観光振興が目的ではない。「世界遺産」登録されることで元々の価値が上がるわけでもない。「世界遺産」に登録することで、価値を認定し、むしろ保護していこうというのが本来の意図だ。

 一方、「日本遺産」は全く違う。ホームページから説明文を引用する。
世界遺産登録や文化財指定は,いずれも登録・指定される文化財(文化遺産)の価値付けを行い,保護を担保することを目的とするものです。一方で日本遺産は,既存の文化財の価値付けや保全のための新たな規制を図ることを目的としたものではなく,地域に点在する遺産を「面」として活用し,発信することで,地域活性化を図ることを目的としている点に違いがあります。

 要するに、文化財に「日本遺産」という箔をつけ、それを利用して観光客増など地域活性化しようということだろう。しかも、「世界遺産」には自然遺産部門もあって「自然保護をしていこう」というメッセージが込められているが、「日本遺産」には文化遺産部門しかない。自然保護の意識が低いから、ホームページにおける世界遺産の説明も、こんな一面的な間違った表記になるんじゃないか?
 日本はフロー型社会で流されやすいが、ストックがあってこそフローで食える。歴史文化的ストックと自然環境的ストックにきちんと投資して保護しないと、いずれフローが目減りすることを、この国の為政者はよく理解したほうがいいだろう。

 いずれにしろ、なんだか底が浅いし、これだけ乱発されると「箔」のメッキも褪せようというものだ。頑張ってアピールしている4市のご担当者には申し訳ないけれど、こんなものに踊らされなくていいんじゃないか? 「日本遺産」に登録されようがされまいが、価値のある文化財には価値がある。普通に、旧軍港4市共同で激動の近代史の物語を語って、観光と戦後日本の振り返りに大勢の方に来て頂けばいい。

 佐世保市では、他に「日本磁器のふるさと 肥前 ~百花繚乱のやきもの散歩~」というストーリーも登録されたようだ。お互い、文化財をしっかり守りつつ、磨き、観光振興にも上手に活用していきたいものだ。

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