【委員会視察報告】近江八幡の市営バスと横須賀のNPOバスを比べて

IMG_1820.JPG 委員会視察最終日の10月29日には、滋賀県近江八幡市で「市民バス運行事業」についてお話を伺いました。
 近江八幡市は、琵琶湖南岸の京都・大津の衛星都市です。人口約8万人のまちで、人口は増加傾向で若い世代が比較的流入しているほうですが、高齢化は進展していく予測です。
 こうした中、過度に自動車に依存せず公共交通機関で暮らせるまちづくりのために導入されたのが、市民バスです。民間バス会社が路線バスを運行するには採算が合わない地域の足を確保する、いわゆるコミュニティ交通にあたります。

横須賀の現状
 なぜ、近江八幡市の市民バスを見に行ったのか?

 横須賀市でも、コミュニティ交通はあります。現在、浜見台近辺で「ハマちゃんバス」をNPO法人ふぉーらむが、三春町近辺ではNPO法人つばさ福祉送迎が運行しています。ただし、大きく2つの問題があります。
 第一の問題は、運営が不安定で法的にグレーなこと。いずれもいわゆる白ナンバーで、運賃をとって客を乗せる緑ナンバーの運送業者ではないため、乗車代は無料にしなければならない。とはいえ、それでは運営が成り立たないので、寄付を頂いて運営しています。そうするとドライバーがボランティアで引き受けてくださる間はいいけれど、もしも引退したとき有償ドライバーで補充できるかといえばムリでしょう。それに、国交省も緑ナンバーの手前、この方式には難色を示しています。
 第二の問題は、コミュニティバスのニーズをまだまだ満たせていないこと。公共交通を必要としているけれど担い手がいない団地等は、まだまだ市内にたくさんあります。
 そこで、ヒントを探りに近江八幡市に来たわけです。
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近江八幡の事例
 近江八幡市の市民バスは12路線あります。いずれも市営です。ただし、市の直営ではなく、市内で路線バスを運行している緑ナンバーの業者に委託しています。だから、横須賀のような法的グレー問題は無関係です。
 そして、なんといっても驚いたのは、その運行経費(ランニングコスト。イニシャルコストも伺ったが、ややこしくなるので取り上げない)の安さです。
 2014年度の経費総額は8174万円/年。収入総額は、運賃1981万円+国からの補助金1364万円+広告料99万円=3443万円/年。差し引きすると、市の持ち出し(赤字補填)は4730万円/年。
 つまり、市の持ち出しを12路線で割ると、一路線あたり394万円/年の市税投入で運行できているわけです。
 また、乗客数は年間11万7,898人ですから、市の持ち出し総額を割ると乗客一人あたり401円を市から市税投入している計算になります。乗車料金は基本的に大人200円なので、ザックリ計算で受益者負担率は1/3程度となります。
 また、市の持ち出しを人口で割ると、市民1人あたり年間573円を支払うだけで、12路線のコミュニティバスを維持できているとも言えます。

 これをどう見るか?
 私は「安い」と思いました。もし、市の直営だったら、この費用でこのサービスは提供できないでしょう。地域内で既存の路線バスを走らせている事業者が担ってくれたからこそ、同社の設備・人員・ノウハウなどを有効活用して一定品質のサービスを低廉に提供できた。

コミュニティバスへの市税投入は是か非か
 さて最後に、税金を投入して市の持ち出しでコミュニティバスを運行することをどう考えるか?

 「みんな居住の自由で勝手にそこに住んだんだ。歳とって移動が辛いからって、行政にもたれかかるな。自己責任だ。必要ならタクシーを呼べ!」という考え方もあるでしょう。確かに、1乗客あたり401円の市税投入は「一部の乗客にだけ運賃の2倍もの市税を払ってあげるのは不公平だ!」とも言えます。もっともな考え方です。

 一方で、両備グループ代表の小嶋光信氏が唱えるように、「日本は公共交通のガラパゴス。民間だけで担えない地域公共交通は、行政支援してまちづくりを進めよ」という考え方もあります。
 私も、政策目的があって、それに合致するならば、積極的に投資していいんじゃないかと考えます。

 横須賀市は、人口が減っています。高齢化もしばらく進み続ける。経済も落ち込んでいる。空き家も増えている。健康寿命も短い。何とかしなきゃいけない。
 こうした中、公共交通への投資は様々な効果が期待できる。高度成長期に造成された住宅団地は、高齢化が進み空き家も増えている。そこへコミュニティバスをめぐらせることで、団地の魅力を上げ、子育て世代の転入もあるかもしれない。住宅団地から市街地に人が動けばお金も動き、地域経済の活性化にもなる。買い物難民も解消できる。家に閉じこもりがちだった高齢者がコミュニティバスで出かけるようになれば、体も心も刺激され健康寿命が延びるかもしれない。
 こういう、複合的な効果が期待できます。だから、テコ入れすべき地域と難しい地域を仕分けし、効果の高い地域に優先的に投資してコミュニティバスをめぐらせることは、政策目的に合致するし、税金投入の価値があると思う。
 はっきり言って現行の、住宅団地に他市から移住してくると補助金をもらえる事業は、特定の個人にお金をあげる仕組みであり、公平性や効果の観点で疑問が残ります。それよりは、その地域の全員に恩恵がある公共交通のほうが政策手法として筋がいい。

具体的な横須賀への導入手法
 具体的には、近江八幡市のように公立民営にするのがやっぱりいい気がしています。公募で、京急バスや人と車が余剰になっているタクシー会社などに手を挙げていただけるといい。
 ただし、お金を出す事業主体は、横須賀市ではなく、各地の地域運営協議会のほうがいいかもしれない。今後、地域運営協議会に財源・権限・人間の3ゲンが委譲されていけば、そういうことも視野に入ってくるんじゃないか。

 ところで、現在の横須賀市役所の考え方は、全くの逆方向を向いています
 市は2015年12月議会で「地域交通支援事業」というガイドラインの素案を発表しましたが、これが墳飯モノなのです。「横浜や川崎も、公共交通に対して運営費補助をしていない。だから横須賀市も運営費補助をしないこととする」という内容です。
 →「地域交通支援事業」ダイジェスト版
 →「地域交通支援事業」本編
 ちょっと考えればわかると思いますが、人口密度が高く人口が今なお増えている横浜・川崎と、「人口減少日本一」との光栄な称号を賜った横須賀とでは状況が全く違う。定住促進など色んな政策課題を抱える横須賀は、余計な政策手法の縛りを入れないほうがいい。
 ひょっとしたら、東北みたいにJR横須賀線に公費投入が必要な事態が来るかもしれない。コミュニティバスは団地再生に有効だという成功事例が次々と明らかになるかもしれない。政策の柔軟性は残しておかないといけないので、このガイドラインに対しては強硬に改訂を迫ろうと考えています。これが今回の視察の最大の収穫かもしれません。

 そんなことを考え、整理できた視察となりました。

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