【委員会視察報告】柏にできて横須賀にできない創業支援拠点

img_map.jpg 2015年10月27日(火)~10月29日(木)の日程で、視察に行ってきました。横須賀市議会には分野別の常任委員会が4つあります。議員はいずれかに所属し、分担して市の経営をみることになっています。
 私は今年、都市整備常任委員会に所属していますが、この委員会では「今年も他のまちの事例を見て参考にしよう」という話になり、委員みんなで視察に行くことにしました。

 なお、この視察は議員各人の裁量で使える政務活動費ではなく、議会全体のおサイフでまかなわれます。いずれもみなさんの税金という意味では一緒です。税金をかけた分の知見を持って帰れるかが重要だと思います。


 初日は、千葉県柏市の「柏の葉国際キャンパスタウン」についてお話を伺いました。
 「柏の葉国際キャンパスタウン」に着いてみたら、半年前に来た場所でした(笑)。墓参りにレンタカー借りて近くまで来た際、「柏の葉国際キャンパスタウン」内の三井アーバンホテルに泊まり、ららぽーとでお買いものをし、柏の葉駅前にマンションを買って住んでいる友人を呼びだして駅前のチェーン店系居酒屋で呑んだのですが、「新しく開発した人工的な街だな」という感想しか持ってませんでした。

 ところが、話を聞いてみると、ここは環境省「環境未来都市」としてモデル都市に選定されており、三井アーバンホテルは公共的な施設と一体的に景観や機能分担を考えて建設されており、その隣には全国でも最先端のインキュベーション施設があって、公民学連携のコミュニティセンターがあり、ららぽーとには健康づくりの先駆的なテナントが入居していた。先日来た際には全く気付かなかった、先進事例の集積地でした。


 私は昔、つくばエクスプレスがまだない頃に筑波大学に通っていましたが、つくば学園都市も柏の葉と同じ匂いがしました。大学を中心に開発。元は田んぼや畑だった平らで広い土地をのびのび使う。道路は広い。土の香りがしない。近未来的。良さもあれば、馴染めないところもありました。
 同僚議員が「箱庭的空間」と評していましたが、言い得て妙です。駅周辺の中心部は、三井不動産が保有する土地であり、同社が主導的に先進的な開発をしている印象です。企業お抱えの、地域限定的な、エコでスマートでハイセンスで単一所得層・単一価値観のコンパクトシティ。


 柏市から学べることは色々な分野でありそうです。ただし、都市整備常任委員会の所管であるまちづくりという意味では、今の横須賀市に「柏の葉国際キャンパスタウン」みたいな開発をする余地はない。浦賀の現・住友重機械の工場が再開発されるか、米軍の横須賀基地と自衛隊の横須賀施設群がまとめて返還されれば、まっさらな所からの大規模開発もできるのですが、現時点でそんな話はない。


 その意味では、最大の収穫は、「やっぱり公共交通は大事だ」という視座です。田んぼと畑しかなかった場所につくばエクスプレスが敷かれただけで、突如として数万人規模のまちが出現してしまう。近くに高速道路のインターチェンジがあるという立地の良さもあって、大型ショッピングモールも出店してしまう。
 この意味では、横須賀市も公共交通を自前で投資するぐらいのことをしてもいいのではないか。具体的には、まず着手するならJR横須賀線の久里浜駅から久里浜港への延伸と市内の区間における駅の増設です。「横須賀は人口減少で大変だ」と言うなら、具体的な対策が必要です。議会も市長も「大変だ」と言うばかりでは「政治家なんていてもいなくても一緒」と言われても仕方ないのかもしれません。


 同行してくれた議会事務局の職員が、「柏市の担当者がうらやましい」と言っていました。「何もないところに、新しいまちをゼロから作れる。自分でまちの設計図に線が引ける。しかも、土地は三井不動産の土地で、開発の条件をつけていけば、まちづくりに必要なお金も三井不動産が出してくれる。担当職員は、予算の心配をする必要がなく、アイディアを出せばそれが形になる。そんな仕事、普通はない」と言うのです。なるほどと思いました。
 確かドラッカーの本で読んだのですが、かつてイギリスが植民地をたくさん持っていたころ、若い高級官僚をインドなどの植民地に送り出し、大きな裁量を与えて仕事させていたようです。そして、彼らもまだ公的事業のないまっさらなキャンパス上でのびのび仕事をして成長したし、非常に少ない官僚の数で実に効率的な行政サービスを提供して、まちも発展したと言います。おそらく、旧日本軍による植民地統治でも同じような面があったでしょう。侵略を肯定する気は全くありませんが、西洋的観点で公的サービスが遅れた国に、より進んだ国の若くて優秀な職員が行けば、大いに腕がふるえるだろうなと。


 また、都市整備常任委員会の所管から少し外れてしまうのですが、目を見張ったのはインキュベーション施設でした。
 柏市は人口41万人・面積115k㎡と、横須賀市とほぼ同じ規模のまちです。ただし、横須賀市との大きな違いがあります。大学施設の立地です。
 「柏の葉国際キャンパスタウン」には、千葉大学・東京大学があり、近隣市町村に筑波大学と東京理科大学も立地しています。いずれも、理科系の技術シーズを生み出す可能性のある学部や研究機関があります。一方、横須賀市にも神奈川歯科大学、県立保健福祉大学がありますが、理科系の技術シーズを生み出す雰囲気ではない。防衛大学校もありますが、開放的に外部連携するという雰囲気でもない。YRPも電力中央研究所も、垂直統合型で、シリコンバレーのような水平分業的・シェア的文化ではない。かつての横須賀海軍工廠時代に海軍学校があり、そこからスバル(富士重工)の前身の中島飛行機など技術型ベンチャーがいくつも生まれたような展開力は期待できないのが実際のところです。
 過去記事「会派視察報告【神山町】IT企業を呼び込む成功則はあるのか?」で、シリコンバレーを作るには大学が重要という話をしました。この意味で、横須賀はかなり不利だと思います。

 じゃあ、横須賀はあきらめて手をこまねいて見ていればいいのだろうか? そうではない。インキュベーション施設ぐらいあってもいい。特に、私は以前から提案してきましたが、3Dプリンタや3Dスキャナ、レーザーカッターなどを備えた工房を、早いところ公設で作るべきだと思う。横須賀総合高校の工業専攻の子たちも無料で使えるようにして、地元の金型企業の人たちと一緒に工房でコラボとかすればいい。

 そんなカンタンな事業ひとつできないのも、ひとえに議員と市長の力不足ということになるのでしょう。

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