「安保法制の委員会採決は無効だ」地方議員から国会への異議&解説

UpperHouseSpecialCommittee.png 国は地方を下に見ているだろうが、はっきり言って多くの地方議会は国会よりまともだ。

 私は地方議会に身を置く人間だ。国と地方で、役割や動かしている予算額の差はあれど、位の差はないと考えている。そして、参議院特別委員会を観て、もはや今の国会議員たちに、自由民主な立憲政治をする能力はないのではないかと疑い始めている。
 なお、我らが横須賀市議会は、早大マニフェスト研究所の議会改革度ランキングで全国1700余の議会中17位を記録しており、民主的な議事運営をしているほうの議会と自負している。
 そして、9/16の市議会本会議では、「安全保障関連法案の廃案を求める意見書の提出について」という請願が、40名の議員中(議長を除く)18名の賛成で不採択となった。つまり、横須賀市民全体の意思としては、「安保法制に対して、横須賀市民は反対だとは言いません」旨の意思表示をしたということになる。これは、私個人の考え方とは異なるが、民主的で手続きにより正統に決定されたもので、私は受け入れている。

 ところで、国は民主的な意思決定の手続きができているのだろうか?

 参議院「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」(2015年9月17日)の動画を観た。以下、議論の経過を追いながら、若干の解説をしたい。
 →参議院インターネット審議中継


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 冒頭から、まともに委員会が始まっていない。理事会の開会場所が突然に委員会室に変更となったらしいが、放送開始から21分51秒まで理事会の開催場所についてもめている。

 と思いきゃ、なんと理事会を開かないまま、鴻池委員長が委員会の開会を宣言してしまう。会議の進め方の段取りを決めるのが理事会だが、段取りしないまま委員会を開会するのは国会では異例だ。とはいえ、地方議会の慣行では委員会前の理事会がない議会もあるので、国会で委員長権限がどこまで認められているか、という問題とも言える。

 開会宣言と同時に、委員長の不信任動議が提出される。着席していない委員が多数いるため、開会が正当かどうかはわからないが、不信任動議を出したということは野党側も開会したものと認識したらしい。

 動議は先議なので、鴻池委員長は他の議案より先に議論することにした。委員長自らの立場に関する動議なので、委員長は除斥(退席)対象となる。そこで、自ら委員長の職をいったん退き、委員長の職務代行者に佐藤正久理事(自民)を指名して退室。地方議会では、委員長に事故ある時のために副委員長を定めておくのが通例なので、職務代行者が自動的に決まらないことを意外に感じた。

 佐藤正久理事(自民)が委員長席に座るも、離席者多数で混乱。委員長が職務代行者を指名したことについて正統性があるかどうか「理事会にて協議しよう」旨の発言などがあるも、うやむやのまま30分40秒、休憩に入ったとのテロップ。この間、音声がないので何が起きているのかよくわからないが、32分55秒委員会が再開される。ということは、結局そのまま理事会が委員会室の委員長席周辺で開かれた扱いとなったか、職務代行者の指名を野党側も納得したと見られる。
 どんなやり取りがあったかわからないが、平穏に委員会が再開されて、佐藤正久理事(自民)を委員長の職務代行者として、不信任動議が議題となる。

 不信任動議の提案理由説明が福山哲郎委員(民主)からなされる。1時間20分過ぎまで約40分、ほぼフィリバスター状態で長い。
 これに対する討論が続く。討論は反対討論からなされるのが通例。慣例に基づき、塚田一郎委員(自民)から反対討論。前日に委員長を女性を以って閉じ込める振る舞いをした野党への抗議を含む。続いて、フィリバスター状態多数の賛成討論シリーズ。大塚耕平委員(民主)、清水貴之委員(維新)、井上哲士委員(共産)、水野賢一委員(無ク)、福島みずほ委員(社民)、山本太郎委員(生活)と、4時間10秒まで続く。

 鴻池委員長の不信任動議が否決される。これを受け、鴻池委員長が委員長席に戻ってくる。

 4時間1分11秒あたりで速記が止まり、あとはひたすら混乱の様子。4時間2分20秒あたりで、音声が回復したものの、速記が復活したのかどうかはわからず、怒号と拍手が繰り返され、何が進行しているのかわからない。ただただ、無秩序、無分別、無軌道。

 この間、いくつかの法案の採決をしたとの報道だが、着席者ごく少数。委員長の進行を聞き取ること能わず。採決を承認の拍手によってとったのか、挙手でとったのか、起立でとったのか、投票によったのか、不明。投票ではなかったらしいことだけはわかる。よって、賛成者が誰なのかも不明。というより、そもそも誰が採決に参加できる委員で、誰が答弁者なのかの判別も不可能なほどの混乱。そして、4時間9分50秒前後に音声が止まり、「散会」とのテロップ。いつの間にか委員長が散会の宣言をした模様。
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 我が議会であれば、というより、およそまともな議会であれば、こんな議事過程では採決が行われたとみなすことはできない。議事録も残せない。民主的な手続きとして、瑕疵がある。「強硬採決」とか「凶行採決」とか言われるが、「採決」ではありえない。ただただ「恐慌」。
 憲法違反疑惑の中でも顧みることがなかった与党に非があるのか、女性というジェンダーを悪用して委員長を閉じ込めるなど人権上問題がある対応をした野党がこじらせたのか、私にはわからない。ここではその判断をしない。

 言えることは、ただ一つ。「参院特別委での安保法制の採決は無効だ」ということだ。

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