「横須賀」でなく「三浦半島」で売れ!?【委員会視察報告】後編

※前回記事に引き続き、観光についての視察報告です。

 二日目8/5は、北九州市に伺いました。

 北九州市では、既に「観光振興プラン」というものを策定済みとのことで、これから作ろうとしている我が市の参考にすべくお話を伺いました。

 結論から言うと、北九州市は横須賀市がやろうとしていることよりも数段は先進的でした。しかし、個人的には横須賀市がマネをしないほうがいい事例なのではないかと感じました。私の視座を書き出してみたいと思います。
 なんだか北九州市さんには、歓待して頂いて貴重なお話まで伺ったのに失礼なようですが、「そういう見方をするヒネた観光客もいるかも」という気付きがあれば、ということでお許し頂きたいと思います。

 北九州市は、計画の策定にあたってアンケート調査に加え、GPSでの行動追跡も行ったようです。おそらく、全国でも先進的なほうなんだと思います。ただし、横須賀市と同じ轍を踏んでいると思いました。

 まず1点目は、アンケート調査において、なぜか市内外のギャップ分析をしていることです。市内の人にも市内観光をしてお金を落としてもらおうと考えているんだったら、市内外を比べることに意味はあります。しかし、市外からお客さんを呼んで来ようとしているときに、市内と市外を比べることにどれだけの意味があるのか? 横須賀市もすでに同様に実施しているのですが、確かにアンケート結果を見ると市民の立場としては興味深いし面白い。でも、大きな意味はありません。
 問題は、市外の人がどんな観光資源を認知していて、関心を持っているのか。実際に訪れた人は、何に満足していて、何にガッカリしているのか。自分たちが思ってもいなかった観光資源に関心を持っていないか。伸びしろの大きい観光資源は何か。―むしろ、こういったことを把握し、観光サービス供給側の認識とのギャップに気付くことに意義があるはずです。横須賀市も、市外アンケート結果を持って事業者をまわり、話を聞いて回ったら有意義だったのではないかと思います。

 第2点目は、策定の際の視点の偏りが懸念されることです。計画策定にあたって外部有識者を招いた「観光振興プラン方向性検討会議」や「アクションプラン検討ワーキンググループ」というのを開きながら策定しているのですが、メンバーが観光サービス供給業者に偏っている印象です。この点も、横須賀市は同様です。仕方ないのかもしれませんが、できあがったアクションプランを見ると、「ブランディング」や「プロモーション」という言葉が躍り、「あるものを売る」感が強いです。「観光客が欲しがりそうなものをマッチングする。商品を磨く」というマーケティング感が薄い。

 第3点目として、これがおそらく最も重要な点です。GPSでの行動追跡をしているのはいいのですが、エリア設定に「失敗」しているのです。北九州市内の枠で考えてしまっている。
 行ってみて気付いたのですが、北九州市は関門海峡のまちなんですね。私なんかは、北九州っていうと「高度成長期に公害があり、その後に環境対策の進んだまち」という印象が強いんですが、実は関門・小倉・八幡といった全国的に有名な地域ブランドを持っていたことを知りました。ただし、関門海峡というのは文字通り門司と下関の間の海峡であって、下関市側にも広がっている。なのに、北九州市がやるから、行政地区で線をひいて下関市側との周遊のGPS追跡はしないとは……。地元の人は何とも思わないのかもしれないけど、よそ者の僕からしたらアチャ~という感じです。
 なおかつ、彼らの資料からの引用ですが「門司や関門の認知度が高いが、それが北九州市だと認識されていない」「北九州市に観光に行こう!と言われる観光地」を目指す、といったことが書かれている。残念ながら、私は難しいと思います。関門海峡と北九州市を結びつける必要なんてないんですよ。
 ただただ、関門海峡や小倉に人を呼べればいいんです。そして、八幡の製鉄所や環境教育に修学旅行生が来て、工場夜景ツアーに萌える人が来てくれればいいんです。それが北九州市の中にあると知ってもらう必要なんてないと思う。多分、観光客の感覚ってそういうもんだと思います。行政区画なんてどうでもいい。
 幸いにも、行政区画とイメージが一致しているまちは幸せだし、やりやすい。横浜、京都、神戸、函館……。でも、北九州や横須賀は違う。

 私は北九州市を批判したいのではなく「横須賀市も同じ『失敗』を犯そうとしているんじゃないか」という気がするんです。
 あまり知られていないことですが、マグロの水揚げは三崎より横須賀港のほうが多く、三崎で並んでいるマグロも実は横須賀から運ばれていたりします。でも、「三崎のマグロ」と言うとおいしそうだけど、「横須賀のマグロ」と言うと鉄臭くて不味いイメージになってしまうから誰も言わない。
 佐島や長井、久里浜の地魚も、首都圏でブランド化しているようでうれしいですが、「実は市で言うと横須賀市なんだよ」と言うと価値が下がる気がしてしまう。
 「北九州市」は後からできた人工的な名前で、観光には不向きです。門司・小倉・八幡のように歴史を背負っていない。一方、「横須賀」は確かに歴史を背負った名前です。しかし、旧横須賀村が旧日本海軍の発展とともに拡大して軍関係の施設がある場所を横須賀市内に呑み込んでいっただけで、浦賀も久里浜も長井も佐島も、元々は横須賀じゃないし、元々は横須賀よりも大きな村でした。この辺の背景は、私が粗々でつくった「地図でめくる横須賀ヒストリー」を見てもらえるとわかると思います。

→紹介は過去記事にて

 つまり、うちも「横須賀市」で観光を売り出そうとすると、すれ違うお客さんが出るということです。観光ブランドとして「横須賀」を使うのは旧横須賀村から浦郷村の一帯にとどめたほうが良く、西地区は「三浦半島」や「南葉山」、あるいは長井・佐島・秋谷といった元々のブランドで勝負したほうがいい。黒船がやってきたのは「浦賀」だと日本人なら誰もが知っていて知名度が高いので、浦賀・久里浜地域は「浦賀」「開国」の独自ブランドで勝負し、横須賀を引きずらなくていい。
 そうすれば、市内全体に灰色のイメージがついちゃうんじゃないかと遠慮があって活用しきれてなかった「横須賀」ブランドも、武蔵野市における吉祥寺や渋谷区における代官山ほどではないにしても全国的に知られており、横須賀中央地区周辺を指す強力な地域ブランドとしてどんどん活用できる。
 さらに、首都圏の安近短観光を獲得競争するライバルは、房総半島であり伊豆半島です。その意味では、横須賀じゃなく「三浦半島」という枠で考えたほうがいい。房総に鴨川や九十九里浜があるように、伊豆に修善寺や熱海があるように、三浦半島に浦賀・三崎・横須賀・葉山がある。こういう建付けで考えるべきです。

 これを発展させて考えると、どうなるか?
 今は「横須賀」市で観光を盛り上げようとしていますが、おそらく基地、ドブ板、猿島、若松マーケットなど、横須賀中央周辺に重点が偏ってしまうと思います。「横須賀」市観光推進計画や「横須賀」市観光協会、「横須賀」市観光振興推進委員会の手になれば、そうなるのも自然です。でも、これはこのまちに移り住んできたよそ者の僕の目から見て、非常にもったいないんですよね。
 いま、この街に必要なのは、三浦市とがっぷり組んだ「三浦半島観光協会」です。逗子や葉山は住環境への意識が高く、最近の海水浴場問題を見ても鎌倉のような「観光公害」は望んでいないと思うので、お付き合い程度に関わってもらえばいい。
 重要なパートナーは、何といっても三浦と鎌倉です。三浦郡の中で浦賀に次ぐ第二のまちだった三崎を擁する現三浦市は、当然重要です。さらに、鎌倉市は、名越という難所があったために区切られて三浦郡ではなく鎌倉郡だったとはいえ、歴史的には結びつきは強かった。現在は希薄ですが、結びつきを強めることは互いの利益になるはずです。鎌倉市で飽和状態となっている日帰り観光客を三浦・横須賀に誘客し、できれば宿泊してもらうことで、鎌倉には安定的な発展をしてもらう。そして、三浦・横須賀への経済的な還流を目指す。
 このためには、横須賀市の市域にとどまらず、三浦半島をいかに観光で盛り上げるかという観点で考える組織が必要です。民間の観光協会に広域化して頂くだけでなく、市の商業観光課集客・プロモーション担当も、三浦市との共同事務局を設置したほうがいいと本気で考えています。

 いずれその先には、横須賀市と三浦市で合併して、「みうら市」などになることも検討してもいいかもしれません。定住ブランドを考えると「横須賀」より「三浦半島」のほうがいいですからね。

追伸:
 「フォトジェニック」という言葉がありますね。写真映りがいい、写真向き、という意味だと思います。今回印象的だったのが、神戸の担当者が「シェアジェニック」と言っていたことです。SNSでの「シェア」が重要な時代には、ただの写真映りだけでなく、共有したくなる見栄えや物語性などが大切なのかもしれません。
 北九州では、個人が開設した河内藤園という藤棚が、あまりに見事なので撮った写真がインターネット上で話題となり、拡散し、遠く海外からも何万人という人間を集め、ハイシーズンには渋滞まで引き起こしているそうです。
 三浦半島でも、全体に投資するのではなく、例えば花の国だったら「絶対にここは写真に収めるべき花のきれいなポイントをつくる」とか、「ここに来たらこれだけは絶対食べないと後悔する」とか、「長者が崎でダイヤモンド富士をバックに写真を撮ったカップルは結ばれる」とか何か「シェアジェニック」なものを徹底的に磨いて広めることは大切だなと思って帰ってきました。


 以上で、みなさまの税金によってまかなって頂いた委員会視察のご報告を終えます。

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