自民党の矛盾(3) ~主義主張の旗~

 過去記事「自民党の矛盾(2) ~改憲問題(前編)~」に続いて、自民党の矛盾について書く。

 自民党は、ご存じのとおり「自由民主党」の略だ。1955年に当時の自由党と日本民主党が合流してできた。その名の通り、自由主義(リベラリズム)と民主主義(デモクラシー)を重んじる政党だと理解している。

 このうち、自由主義とは「なんでもかんでも自由にして、政府は何もしないほうがいい」というような自由放任のことではない。ざっくり言うと、「誰もが自分で選ぶことができ、その責任も自分で引き受ける、そんな自由を持っている。だから、誰もが門地や出自、金持ちか貧乏かを問わず、頑張ったら報われるよう、同じようにチャンスがある社会にすべきだ」という考え方だと理解している。
 実際、自由民主党の特に「保守本流」の方々は、「均衡ある発展」を重視し積極的に再分配をしてきた。利益誘導的な側面もあったにせよ、基本的には、その名に違わぬ「健全なリベラリズムの政党」だったと思う。

 ところが、中曽根首相あたりから、社会的公正を重んじる自由主義(リベラル)ではなく、自由放任(レッセフェール)を良しとする新自由主義(ネオリベラル)に近づき始めた。その後、揺り戻しがあって、特にバブル前後には大規模な公共事業バラマキをする「大きな政府」へと逆戻りするが、再び小泉首相の時には新自由主義的「小さな政府」の傾向が鮮明になる。

 ところで、小泉構造改革時代は、新自由主義に振れ過ぎて弱者救済がおろそかになったとは思うが、その方向は一貫していた。しかし、現在の第2次安倍内閣では、新自由主義(ネオリベラル)的な「小さな政府」論と「大きな政府」論が併存して、なおかつ保守主義や国粋主義・復古主義の味付けもまぶしてあり、よくわからないことになっている。そして、もともとの自由主義は片隅に追いやられているように思われる。
 どういうことかといえば、TPPへの参加姿勢を持ちながら、「国家強靭化計画」に200兆円などと公共事業の増額を謳う。これでは、市場に任せる「小さな政府」路線なのか、政府が大きな予算と責任を持つ「大きな政府」路線なのか、よくわからない。また、公共事業への投資は増やしても、社会保障を増やす声は聞こえてこない。ざっくり言うと、中央から地方への公共事業系再分配には熱心かもしれないが、富める者から弱い者への社会保障系再分配には冷淡に見える。
 さらに、かねて「美しい国」「日本を、取り戻す」というフレーズを多用してきた安倍総理には国粋主義(ナショナリズム)や復古主義の傾向が見られる。しかし、その割には対米追従の姿勢が目立ち、アメリカ様の要求に基づくTPP参加や、日米関係の重視など、ホンモノの右翼的思想とは言えない。

 はっきり言って、一貫性が見られない。どんな主義主張の下に集っている党なのか、つかみどころがない。「ぬえ」のようである。
 ひょっとしたら、そうした主義主張がないのかもしれない。人気をとるために変幻自在に立ち位置を変える、大衆迎合主義や日和見主義を信奉しているのかもしれない。

 現在では、主義主張の旗がはっきりしているのは、みんなの党・共産党ぐらいではないか。
 日本維新の会は、水と油ほどにも違う橋下系と石原系が、挑発的国粋主義と大衆迎合主義という変な共通点だけでくっついてしまった。
 民主党は、2009年のときにはそれなりに旗が立っていたと思う。イギリスのブレア労働党が進めた「第三の道」のように、新自由主義の構造改革・効率性と、自由主義の再分配による社会的公正を、両立しようとしたはずだ。ところが、この方向性を理解できないままだったか、面従腹背だったのか、路線対立があらわになって分裂に分裂を重ね、現在も主義主張の旗の下に集っているようには見えない。
 社民党に至っては、欧州の社会民主主義が直面した行き詰まりにどう対処するのか見えてこないので、もはや小泉改革後の日本では迫力不足だ。

 願うらくは、前回、民主党が分裂を重ねたように、自民党にも分裂していただき、政界ガラガラポンをして、主義主張の旗の下に集まり直してほしいものだ。
 「参院選、どうやって選べばいいの?」と、国民の声が聞こえてきそうだ。


 なお、自由民主党が自由主義と民主主義を掲げた政党だと私が判断している理由としては、ぜひ結党時の「立党宣言」と「綱領」をご覧いただきたい。

自由民主党「立党宣言」昭和三十年十一月十五日
政治は国民のもの、即ちその使命と任務は、内に民生を安定せしめ、公共の福祉を増進し、外に自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立するにある。われらは、この使命と任務に鑑み、ここに民主政治の本義に立脚して、自由民主党を結成し、広く国民大衆とともにその責務を全うせんことを誓う。
大戦終熄して既に十年、世界の大勢は著しく相貌を変じ、原子科学の発達と共に、全人類の歴史は日々新しい頁を書き加えつつある。今日の政治は、少なくとも十年後の世界を目標に描いて、創造の努力を払い、過去及び現在の制度機構の中から健全なるものを生かし、古き無用なるものを除き、社会的欠陥を是正することに勇敢であらねばならない。
われら立党の政治理念は、第一に、ひたすら議会民主政治の大道を歩むにある。従ってわれらは、暴力と破壊、革命と独裁を政治手段とするすべての勢力又は思想をあくまで排撃する。第二に、個人の自由と人格の尊厳を社会秩序の基本的条件となす。故に、権力による専制と階級主義に反対する。
われらは、秩序の中に前進をもとめ、知性を磨き、進歩的諸政策を敢行し、文化的民主国家の諸制度を確立して、祖国再建の大業に邁進せんとするものである。
右宣言する。
自由民主党「綱領」昭和三十年十一月十五日
一、わが党は、民主主義の理念を基調として諸般の制度、機構を刷新改善し、文化的民主国家の完成を期する。
一、わが党は、平和と自由を希求する人類普遍の正義に立脚して、国際関係を是正し、調整し、自主独立の完成を期する。
一、わが党は、公共の福祉を規範とし、個人の創意と企業の自由を基底とする経済の総合計画を策定実施し、民生の安定と福祉国家の完成を期する。

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