沖縄は本当に基地マネーに依存しているのか?(沖縄県庁)~琉球視察報告(7)~

 先日の記事「えこひいきされる理由もわかるけどうらやましいな優遇制度(沖縄県庁)~琉球視察報告(5)~」に続いて、沖縄県庁でのヒアリングの報告です。前回は、沖縄限定の特例・優遇制度についてでしたが、今回は、市町村課に沖縄県内の市町村における基地関連収入の全体像を伺ったので、その報告です。

 基地のまちには、ありていに言うと、いわゆる「迷惑施設」を受け入れていることへの「つぐない」のようなお金が入ってきます。横須賀市にも、まとまった額の基地関係のお金が支払われています。ただ、特に沖縄には、歴史的な背景もあり本土とは別枠の補助金などもあると聞いていました。この全体像を知って、横須賀市と比べてみたいと考えていました。

 結論から言うと、「沖縄ばかりが特別扱いされている」というような収入額は、それほど大きくはありませんでした。逆に言うと、沖縄の市町村は重い基地負担を引き受けて下さっている分、単純に基地関連収入の額も割合も大きいというだけの話でした。負担に見合っているかどうかは別ですが。

 ちなみに、主な基地関係収入を一覧表にまとめると、次のようになります。以下、それぞれについて概観していきたいと思います。なお、沖縄とひとくくりに言っても、基地のあるまち・ないまちでは状況が全く異なるのですが、個別の市町村との比較は次回以降に触れたいと思います。
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base.png●基地交付金
 「もし基地がなかったら、その土地や建物の税金、つまり固定資産税等がいくら入るハズなのか?」。そんな観点で、国から穴埋めしてもらうお金が、基地交付金です。このお金は、市町村が自由に使えるお金(一般財源)となっていて、基地関連予算の主力と言えます。国の資産(土地や建物・設備など)が対象の「助成交付金」と、米軍の資産(建物・設備など)が対象の「調整交付金」の、2種類に分かれます。
 ちなみに横須賀市の場合、助成交付金が19.2億円、調整交付金が2.2億円で、年間に合計21.5億円が2010年度の実績です。これは横須賀市の年間収入(歳入)の1.5%となります。ただし、まあ本来なら産業立地などに最適だった場所が基地になってしまったわけですから、十分な額には程遠いでしょうね。
 なお、助成交付金の支給額国内No.1は横須賀市ですが、調整交付金は7.9億円の沖縄市がNo.1というように、歴史的経緯もあって沖縄では米軍財産が多いことに気づきます。
(画像は「横須賀市所在米軍施設及び自衛隊主要施設位置図」より引用)


●再編交付金
 かつて、普天間基地の機能を普天間市から名護市の辺野古へと移転することを受け入れてくれること含みで、名護市を中心とした沖縄本島北部の市町村に対して「北部振興交付金」という予算が組まれていました。しかし、辺野古移転に反対の県民の声は大きく、国も移転を先に進めることはできませんでした。ところが、「北部振興交付金」は、あくまでも発展に取り残されている北部地域の経済振興の名目だったので、沖縄側は「これは基地移転と無関係で支払われるべきだ」と主張し、国もその正論を覆すことはできず、実際に2000~2009年度の10年間、支払われてきました。
 この反省から防衛省は、基地の受け入れとリンクした交付金制度をつくろうと考えました。特に参考にしたのが、田中角栄元首相が主導した「電源立地交付金」制度です。
 この制度は、電源(特に原子力)の立地を受け入れた市町村には、調査・計画・建設・稼動など、「出来高払い」で収入額が増えていき、稼動後は徐々に収入額が減っていくのが特徴です。ただし、この「収入額が減っていく」というところがクセモノでした。人間は、一度豊かな生活に慣れてしまうと、収入が下がってもなかなか生活レベルを落とせないものです。同じように、市町村によっては、収入が下がらないよう、第2、第3の原発を受け入れるところも出てきました。いわば、「麻薬」のようなもので、交付金漬けになってしまったわけです。
 同様の考え方で導入された「再編交付金」は、「再編」、要するに基地の受け入れに応じて支出される仕組みです。横須賀市は2008年、従来型の空母キティホークに代わって原子力空母ジョージワシントンの配備を受け入れました。主にこの原子力艦の受け入れを理由に、岩国市に次ぐ全国No.2の額の再編交付金が支払われています。ただし、これは2007年から10年間の一時的な収入となります。一方の沖縄では県全体でも横須賀市に及ばない額しか支払われていません。これは、再編、要するに辺野古移転が進んでいないことによるのでしょう。


●防衛施設周辺整備交付金
 これは、一般財源でなく特定財源です。……と言うと、わかりにくい方もいると思いますので、たとえ話にします。
 国が「親」で、市町村が「寮生活の子供」だとすると、「仕送り」のうち、基地交付金は「現金」です。つまり、子供が何にでも自由に使っていいお金です(一般財源)。一方、この交付金は「図書券」のようなものです。「本を読んで賢くなってほしいから、ちゃんと本を買うように」と、親の意向が働いていて、本以外のものは買えないよう、「ひもつき」になっているわけです(特定財源)。
 しかし、子供が自由にお金を使っていいからといって、そんなに変なお金の使いかたをするでしょうか? そりゃ確かに、以前は仕送りも多く、TVゲームを買ったり(スキー場やゴルフ場を整備)、遊びに行ったり(保養施設を整備)、とムダづかいもしていた子供も多かったのは事実です。でも、もうみんな分別のつく年頃になりました。それに、仕送りの額もどんどん減っていて、生活はカツカツ。ムダ遣いの余裕などありません。だから、正直言って、本しか買えない「図書券」(特定財源)じゃなく、「現金」(一般財源)でもらったほうが助かるのですが、親はなかなか信用してくれません。
 でも、ずっと「信用してよ!」と言い続けていたら、「ひもを緩めてあげよう」という時期もありました。2011~2012年度の、いわゆる「一括交付金」制度の導入です。これは、全てではないにしても9つの補助金については省庁を横断して、使途を定めずまとめて地方に渡そうという制度です。まあ本来なら、ひもをはずすだけでなく、財源ごと地方に渡すのが本筋ですが、過渡的な措置としては、当時の民主党政権が残した評価できる実績のひとつでした。しかし、対象となったのは、お兄ちゃん・お姉ちゃんたち(都道府県と政令指定都市)だけで、横須賀市など弟・妹たち(一般市町村)は含まれませんでした。なぜこんなことになったかというと、別に民主党をかばうつもりはありませんが、親が悪かったのではなく、弟・妹たちが反対したのです。理由としては「一括にされたときに総額としては減らされちゃうんじゃないか?」「自由に使っていいと言われても使い方がわからない」といったものでした。親への強い不信感と依存心がぬぐいきれなかったわけですね。ちなみに、私は2012年2月の一般質問で市長に「横須賀市も一括交付金のほうがいいですよね? うちの職員は優秀だから使い道に困らないですよね?」旨の質問をしたのですが、市長も「私もそう思う」という答弁でした。
 ところが、そうこうしているうちに、再び政権交代して、自民党は「2013年度からは一括交付金制度を廃止する」と言いはじめました。あれ!?確か、自民党も「地方分権」とか言ってなかったっけ? まあいいけど(苦笑)。というわけで、当面は図書券とかマクドナルド商品券とか、ドリンクバー半額券(補助率50%)とか、そういうものでの仕送りが続きますが、みなさんが自民党政権を選んだわけですから、文句は言わないでくださいね!
 と、だいぶ脱線しましたが、防衛施設周辺整備交付金は特定財源です。
 この支出は「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」で定められています。騒音対策や道路・河川への影響防止などの、いわば当然の工事にお金を出す部分が「3条交付金」・「4条交付金」と呼ばれます。横須賀の場合はほとんど関係ありません。そのほか、「基地があることで住民の生活や事業活動に影響が出るんだから、住民のためになることにお金を出しましょう」という部分が「8条交付金」「9条交付金」と呼ばれます。実際の使い途は、横須賀市のホームページでも紹介されています。
 →8条交付金
 →9条交付金
 横須賀市の基地対策課職員は、横須賀市がやりたいと思っていた事業を少しでもできるように、この交付金をなんとか当てはめて獲得しようと、足しげく横浜の南関東防衛局に通っているようです。それこそ一括交付金にしてくれれば、我が市の優秀な職員にこんなバカバカしいことをさせずに済むんですがね。
 出来のいい子供ほど早く親離れしたいわけですが、親のほうがなかなか子離れできないようです(皮肉)。


●防音事業関連維持補助金
 これは、航空機の騒音の問題がある市町村が対象なので、横須賀市にはあまり関係がありません。


●財産運用収入(基地の賃貸料)
 これは、厳密に言うと基地関係の収入というわけではありません。自分の土地を貸している相手からの「家賃」収入で、たまたま「店子」が基地というものです。
 ちなみに、横須賀市の場合、市の面積の約3.3%が基地ですが、そのほとんどが国の土地です。一部、民間の方の土地もありますが、基地全体のわずか0.03%。そして、横須賀市の土地は防衛大学校近接地のたかだか45㎡で0.0007%です。上下水道局が所管していますが、家賃は免除となっているので、0円です。
holder.png 一方、沖縄の場合は状況が全く違います。嘉手納町は、なんと町の面積の82.5%が基地。沖縄県全体では10.5%が基地となります。そして、基地全体では、国有地が34.0%、民有地が33.5%、市町村有地が29.1%、県有地が3.4%という割合。まあ、沖縄の方々にとっては、契約して貸したというより、強制的に占有されたという印象なのでしょうけどね。ただし、今では民間地主と市町村にはしっかり「家賃」が入ってくるようになっていて、最高額の名護市では19.4億円の収入となります。
 この「家賃」収入があることは、財政的には助かることでしょう。実際、嘉手納町では、町立小中学校の給食を2011年度から完全無料化したり、予防接種費用を完全無料化したりと「大盤振る舞い」しているようです。近隣の市町村はカンベンしてほしいと思っているようですが……。しかし、だからといって基地からの賃料を「うらやましい」と思う市町村は少ないのではないかと思います。


●SACO関連経費
 基地関連収入の中で、現時点でも支払われているもののうち「沖縄だけ特別にもらっている」と言えそうな項目は、このSACO関連経費だけでした。
 SACOというのは、Special Action Committee on Okinawaの略で、日米両政府が設置した「沖縄に関する特別行動委員会」です。1996年に最終報告が出され、これに基づいて様々な沖縄県民の負担軽減策がとられているようです。
 その一環として、交付金を受けている市町村もあるようなのですが、沖縄県に伺っても全体像の把握はしていないようで、今回の視察でもよくわからないままでした。帰ってから防衛省の資料などを読んだりしたのですが、いまひとつよくわかりません。というのも、「9条交付金」に特別加算されて支払われたりしている分もあるようなのですが、その額が「9条交付金」の費目に合算されているのかなど、判然としないのです。
 とはいえ、これは沖縄独自の制度ですから、横須賀と比べるべくもありません。また、時限的な予算で、いつ打ち切りになるかわからない状態とも聞きましたので、今回は割愛することにしたいと思います。沖縄市との比較の際にまた少し触れたいと思います。


●まとめ
 以上をざっとまとめると、次のようなことが言えると思います。
・沖縄が特別に優遇されているというほどのことはなかった。
・十分な「補償」かどうかは別として、
 再編交付金のように横須賀市が沖縄よりも交付額が多いものもある。
・多くが同じ制度に基づいて交付されているが、
 沖縄と横須賀市には違いも多く、費目によって大きな差が見られた。
・制度上の違いは、SACO関連経費の有無と、補助率の違いの、主に2点だった。

 なお、補助率の違いについて、簡単に説明しておきたいと思います。
 「再編交付金」のほとんどと「9条交付金」は、必要なお金は国が出してあげる、というタイプの「交付型」です。ただし、国が必要と認めた部分以外のお金は自前で出す必要があります。一方、「再編交付金」の一部と「3条交付金」「8条交付金」は、必要なお金のうち何割は国が分担してあげるけど何割は自分で出してね、というタイプの「補助型」です。補助率(何割を国が負担するか)は、ものによって違います。
 ところで、この補助率が、沖縄では高くなっています。「8条交付金」の場合、港湾施設だったら、横須賀市が75%のところ沖縄では100%国が面倒みることになります。ゴミ処理施設だったら、横須賀市が1/2のところ沖縄では2/3という具合です。

 これまで、基地関係の収入といったときには私を含め多くの方が基地交付金にばかり注目していましたが、改めて整理したことで全体像がわかりやすくなりました。横須賀市にとって、基地関連収入は年間38億円(2010年度)。これは歳入全体の2.7%にあたります。これを、多いと見るか、少ないと見るか。色々な評価があると思いますが、基地に関しては多角的な面から現状を踏まえて議論する必要があると思います。今回、その材料の一つが得られたと考えています。

この記事へのコメント

  • 花かつお

    はじめまして、沖縄の花かつおと申します。

    ご存知かと思いますが「政府は2015年度の沖縄振興予算を14年度の3460億円から約1割削減し、3100億円前後とする方向で最終調整。」

    政府は「基地と振興はリンクしない」と言い続けて来ましたが、権力はすごいですね。

    沖縄の現状を率直に分析いただき感謝いたします。
    勝手ながら本記事へリンクを貼らせて頂きました。

    今後のご活躍を祈念いたします。
    2015年01月09日 17:40

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