芸術劇場廃止論へのご意見と回答

 今年からタウンニュース横須賀版に月1回連載しているが、今回の9/18(金)号に掲載した「芸術劇場を廃止しコロナ対策を」の記事に対しては、とりわけ反響が大きかった。  多くは、賛同の声だった。 「その通りだ。芸術より、もっと切実なことにお金を使ってほしい」 「衣食足りて礼節を知る、という言葉もある。文化芸術を楽しむ余裕もない人に目を向けてほしい」  といった声が多かった。  ただし、反対意見や疑問の声の中にこそ、大事な洞察があるとも考えている。個別にお返事も差し上げたが、ここにも書き出して対話的に議論を深めてみたい。 ●1.芸術劇場は愛されているのか? 多くの人が足を運んでいるのならば、お金をかけてでも維持する価値はあるのではないか? ●2.芸術劇場があることにより、どぶ板通り商店会やコースカなど、近隣への経済波及効果もあるはずではないか? さいか屋も閉店し、廃止によりますます横須賀が寂しくなってしまう。 ●3.民間売却や無償譲渡は本当に可能なのか? ●4.芸術劇場で公演を観る市民もいる。コンサートを開催する市民もいる。廃止してしまったら、市民の文化活動のニーズにどう応えるのか? ●5.芸術劇場の他にもホールはある。芸術劇場だけでなく、人口減少を見すえ他のホールとの統合も視野に入れて考えるべきなのではないか? ●1.芸術劇場は愛されているのか? 多くの人が足を運んでいるのならば、お金をかけてでも維持する価値はあるのではないか?  このご意見は、もっともだ。  2019年度…

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横須賀美術館の美術品22億円は適切なのか?

 コロナ対策の財源が必要であり、コロナ禍で来年度税収も大きく落ち込む見込みだ。そのため、意外なところにムダと財源が転がっていないか、目を光らせて連日分析している。  今日は、横須賀美術館の絵画などの収蔵品を分析した。  過去記事「美術館撤退論(前編)」では、美術品を手に入れるために払ったコストを約16億円と積算していたが、今回、収蔵品リストを資料照会で入手したところ22億円だった。  →収蔵品リスト2019年度末小林加工版(Excel)  過去記事では開館準備が始まった1999年からのコストしか積み上げていないが、美術品は1980年代から収集していたようなので、そこを拾えていなかったようだ。  このリストを例によってデータ可視化してみた。良ければリンク先の動くグラフでご覧頂けると幸いだ。  →横須賀美術館収蔵品の分析  以下にも、いくつかのグラフを貼り付けながら、見えてきたことをお伝えしたい。 ●沢田市長が去ってからは継子のよう  美術館は沢田市長の構想と思われているが、横山市長時代から美術品を収集して準備していたことがわかる。当時から沢田氏は助役として市政に関わっていたとはいえ、横山市長も是としていたということだ。  ところが、2005年の沢田市長の退任後、美術館は不遇の時代を迎える。蒲谷市長も2006年度には1億円弱の美術品を購入したものの、これはおそらく基金に積んであった残りだろう。以降、蒲谷市長・吉田市長・上地市長の3代にわたり、一切の美術品を購入してい…

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芸術劇場廃止論(後編) ~総額1100億円超!775億円が支払済。今後315億円を払いますか?~

 過去記事「芸術劇場廃止論(前編)」では、芸術劇場のコストを公開情報から積算してお伝えした。これまでに658億円かかっている計算だった(正確にはこの時の計算は2021~2024年度の見込額を含む)。  その後、議会質疑(9/7総務常任委員会)を経て、公開情報だけではわからなかった利子償還金と改修費見込額を文化振興課が示してくれた。これにより、ライフ・サイクル・コストが明らかとなった。  結論から言えば、1100億円超。  これが芸術劇場の「生涯年収」ならぬ「生涯支出」だ。  従来より「芸術劇場の建設費は377億円」と、その巨額ぶりに批判が集まってきた。しかし、フルコストで見れば実際はその3倍に上るのだ。まさかこれほどとは、誰が予想していただろうか?  おそらく横須賀市政で後にも先にも支出規模最大の公共施設となるだろう。 イニシャル・コスト590億円  イニシャル・コストは約590億円。私が積算した428億円に、利子償還金(住宅ローンの利払いに相当)約160億円を加えた額となる。市債の返済も済んでいるため、全額が支出済だ。 ランニング・コスト500億円  ランニング・コストは約500億円。運営費で約350億円、改修費で約150億円を見込む。これは公共施設の寿命と言われる70年間稼働した場合の額だ。  運営費は開館から現在までの28年間で150億円を積算してあるため、残りの42年間では200億円程度が見込まれる。年間5億円弱の見込みだ。  改修費は28年間で34億…

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