2015年07月23日

会派視察報告【神山町】IT企業を呼び込む成功則はあるのか?

IMG_1646.JPG 前回に続き、会派視察報告です。

 3日目最終日は、徳島県神山町です。
 企業誘致は、大きな工場だけじゃない。小さいけど若くて強い会社に移ってきてもらったり、市内で起業してもらったりすることも、まちを元気にします。
 そこで、IT企業のIターン型誘致で全国から注目を集める神山町に行ってヒントを探りました。
※写真は、転入企業が整備した施設で最も有名な「えんがわ」

 結論から言うと、ヒントはよくわかりませんでした。
 「は? オマエ、税金使って視察行っておいて、よくわかんなかったじゃ困るんだよ!」とお叱りを受けそうですが、正直言ってそうなんです。それに、私はよくわからないものを、もっともらしく知ったかぶりするほうが害が大きいと考えています。ソクラテス的に、何がわからないかをわかるようにしておくことって大事だと思うんです。

 「わからなかった」というのは、神山町での取り組み内容ではなく、企業、特にSOHO(Small Office Home Office)的な会社が何を重視して立地を選ぶのか、ということ。色々な要因があるので、「こうすれば、誘致成功まちがいなし」みたいな定理や方程式はないんじゃないかな?と思ったんです。

 多分、教科書的に言えば、生態系(EcoSystem)が大事ということになるのでしょう。
 以前、うちのインターン生の勧めで『「シリコンバレー」のつくり方』という本を読みましたが、シリコンバレーにはスタンフォード大学やカリフォルニア大学群があり、テキサスにはテキサス大学がある。こうした大学が重要らしいんです。大学が技術の種(Seeds)や人材の供給源として生態系の中心に位置し、そこにエンジェル投資家やベンチャー・キャピタル、先輩起業家、スタートアップ企業などが集って生態系を形成する。結節点(Node)に、エネルギーの高い人と最先端の情報が集まり、化学反応や核融合を起こして新しい技術やサービスが世に送り出される。その対価として売上金と資本金、大学には寄付金が集まり、それを燃料にイノベーションのエンジンが加速していく。
 たぶん、集積地にはこういう構図が一般的なんでしょう。
 日本でも、多くの大学・企業が集まる東京は、大きすぎてやや拡散気味ですが、当然その構図がある。戦後、多くの世界的なベンチャーを生み出した京都も、京都大学をはじめ多くの大学が人材と出資者を集めたことでしょう。最近だと、つくば学園都市もアツいようですが、そこには日本のパデュー大学と言われる筑波大学がある。
 一方、日本でも各地でナントカバレーが一時期流行りました。かつて隆盛を誇った渋谷ビットバレーも、最近の人には「何それ?」状態だろうなあ。いったんブームが去った観がありますが、たぶん永続きする生態系にはならなかったのでしょう。
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 その観点で、神山町と横須賀はどうなのか?
※写真は上から、サテライトオフィス、オープンした宿泊施設の宿泊棟、食事などの棟、「えんがわ」のバックアップ用電源としても使われている日産LEAFの充電器

 神山町には、大学なんてありません。人口約5千人。町内には電車もなく、県庁所在地の徳島市内まで車で50分、徳島空港まで70分。行政が特別な優遇策や進出支援のメニューを持っているわけでもない。徳島県内には高速インターネット回線が張り巡らされて日本一ということ以外に、特に優位性はない。
 神山町を選んだ多くの企業は、NPO法人グリーンバレーを中心につくられたアーティストやリノベーションをする建築家などのコミュニティを気に入って移転している感じです。グリーンバレーは、アーティストに滞在してもらって創作してもらうArtist In Residenceなどアート系の取り組みからまちづくりを始め、現在では神山町の農村環境改善センターという施設の指定管理者として、「人材誘致」に取り組んでいるようです。
 ただし、説明してくれた担当者に聞いて驚いたのが、グリーンバレーは「ぜひ神山町に来てください!」という勧誘はしていないとのこと。「フィーリングが合えばどうぞ」ぐらいの感じみたいです。最も中心的な「えんがわ」という所に立地する(株)プラットイーズという会社も、「熱心な勧誘をされなかったのが良かったから神山にした」旨のことを言っているらしい。

 この話に教訓があるとすれば、よくある成功譚みたいに「担当者の熱意が伝わって誘致につながりました!」みたいな根性論の前に、まち自体に魅き付ける力が必要ということかもしれません。何でも売れる強い営業をつくるのも大事だけど、誰でも売れる強い商品をつくるほうが楽、というよくある話ですね。


 最近だと、お隣の鎌倉市でカマコンバレーと称してIT企業の方々が集まってまちづくり的活動をしているようです。
 鎌倉に技術的シーズを生み出すような大学はない。企業の研究所は少なくないけれど、それが外部と連携して生態系を形成している感じもない。けれど、鎌倉に集まってくる背景には、鎌倉の住むまちとしてのブランド力があるのでしょう。
 また、カマコンバレーの場合は、ここから企業を世に送り出すというより、集まった企業で鎌倉のために何かをしようという感じなので、他のナントカバレーたちとは方向性が違うみたいですね。

 一方で、横須賀はどうか?
 大学は県立保健福祉大・防衛大・神奈川歯科大があります。ただ、いずれも技術的シーズを生み出して開放的に外と連携するという感じではない。
 ただし、研究所は充実しています。YRPにNTTの通信研究所があり、多くの大企業が通研を取り囲むように研究所を構えました。今でこそ停滞気味ですが、ここはケータイ発祥の地と言われ一時期は世界のケータイのトレンドを牽引した場所です。電力会社が出資しあってつくった電力中央研究所や海洋研究開発機構(JAMSTEC)も立地しています。これらは、関連産業を引き連れて通信技術や原子力などそれぞれの生態系を築いています。ただ、国を背負った大企業による垂直統合的生態系なので、シリコンバレーのような開放系の水平分業的生態系ではない印象です。

 こうした中、ヨコスカバレー構想という動きがあります。IT企業を中心に10年・100社・100億円の集積を目指す市の狙いに賛同して、市内のIT系を中心とした小粒ながらキラリと光る企業も集っているものです。
 谷戸地区を谷(Valley)に見立ててヨコスカバレーと名付けたようです。市はスタートアップ企業支援制度を各種取り揃えました。私が最初に務めたベンチャー企業で同期だった相澤謙一郎くんの率いるタイムカプセル(株)が市内谷戸立地企業第一号のようで、新聞やTVでもよくとりあげられていて誇らしいです。というか俺も見習わないと(苦笑)。


 ヨコスカバレー構想は、このまま成功できるでしょうか?
 神山町みたいにアートで魅き付けるべきでしょうか?
 それとも鎌倉みたいに住むまちとしてのブランドで魅き付けるべきでしょうか?
 シーズを生み出す大学を誘致すべきでしょうか?
 私は、答えや確信を持っていません。でも、成功の確率を上げる方法ならいくつかある気がします。

 横須賀に鎌倉みたいな住環境ブランドはないですが、実態としては負けてないので、優れた住環境をきちんと伝えていく努力は今後もすればよい。

 シーズという面では、供給元の大学誘致を待っているわけにはいかない。かといって、市内の研究機関に過度な期待もできない。だからこそ地域特性に目を向けてはどうだろうか。
 横須賀には常にアメリカとの接点があります。保守の僕としてはフクザツですが、米軍基地内はアメリカの慣習や法律が適用されており、いわば目の前にある外国です。基地内に入るときにパスポート持参を求められるくらいですから。そこで、アメリカのモノやコトを日本に持ってきたり、日本のモノやコトをアメリカに持って行くような中に、技術シーズはなくても商売シーズならたくさん見つかるんじゃないか?
 貿易は、常に差のある間で成立します。価格差、需給ギャップなど、日米の差の「断面」が目の前にあるまちなんてそんなにないハズですから。

 そして、重要なのがコーディネーターと溜まり場の存在だと思います。横須賀の中で生態系の結節点となりハブとなる人と場。
 横須賀には、既に産業交流プラザという施設が芸術劇場下にあり、スペースもあり人もいる。でも、基本的に貸館に過ぎず、いる職員も施設管理の用務員でしかない。産業の交流を促進してイノベーションを生めるか、という観点では死んでます。創業支援オフィスという名目のレンタル事務所も間に合わせに過ぎず、インキュベーション感が皆無。横須賀市産業振興財団が所在しているのが唯一の救いで、ここはきちんと産業交流をしていますが、どちらかといえば既存の中小企業を対象としていて、ベンチャーやスタートアップのインキュベーション系の雰囲気ではない。
 民間では、とあるNPOがヨコスカテラスというコワーキングオフィスを市役所隣に開設し、ビジネス生態系のハブになるかと私も期待していました。ただ、せっかく市内の篤志家や実業家の協力で開設できたのに、管理者が排他的かつトラブルメーカーなので、今のままなら期待薄と私は見ています。
 市民活動においては、市民活動サポートセンターという場があり、歴代有能な方々が管理者を務めてきたことで、横須賀の非営利組織や市民社会の発展に大きく貢献したと私は見ています。これの営利版・ビジネス版が必要です。
 いわゆる行政施設の雰囲気ではない場を用意し、いわゆる役人風ではないコーディネーター的な人を見つけてきて、のびのび楽しそうにやってもらうこと。これができるかどうかがヨコスカバレー構想の分かれ道かもしれません。

 市長には、アドバルーンを上げるだけでなく、実を込める気迫があるか? 腹をくくってやる気があるなら、議会だって後押しするはずです。「子供が主役になれるまち」イメージ先行事業だけでなく、このヨコスカバレーなる創業支援事業でも、市長の本気度が問われています。
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2015年07月15日

会派視察報告【南国市】食育と炊飯器給食 You are what you eat.

IMG_1620.JPG 前回に続き、会派視察の報告です。
 2日目は、高知県南国市です。ある方に、「Blogは結論から先に書いた方がいい」とアドバイスを頂いたので(笑)、結論を言うと「横須賀市も食育&地産地消に力を入れたほうがトクかも」というハナシです。
※写真はいただいた給食。一食270円也。南国市産のコメ、トウモロコシ、ブリ、ゴボウ、キュウリ、牛乳、その他こまごました食材も市内産らしいが忘れた。

 さて、南国市は、給食のご飯を学級別に家庭用炊飯器で炊いていることで有名なまちです。以前、川名ゆうじ武蔵野市議のBlog記事を読んで関心を持っていました。そして、横須賀の公営保育園ではどういうわけか副菜のみで主食を提供していないので、私は保育園完全給食を実現するために南国市のように家庭用炊飯器で炊きたてゴハンを提供するよう提案してきました。ただし、実際に自分で見たことはありませんでした。


 今回、南国市を訪問して、いい意味で裏切られたのが「南国市のスゴいところは、実は炊飯器給食じゃなかった」ということです。
 南国市からの説明を聞いてみると、食育の話から始まり、なかなか炊飯器の話にならず、後半ようやく触れられて説明が終わりました。その間に、すっかり南国市の食育の取り組みに魅了されました。一つ一つの事業については触れませんが、まあ〜「教育のど真ん中に食育を」と謳うだけあって、素晴らしかったです。そして、炊飯器給食は、食育の一環としてのシンボル的な事業でしかなかった。

 私は、ずっと食育には否定的でした。別に「食育なんて大事じゃない」という意味ではありません。食についての理解は重要です。でも「それは家庭の仕事でしょ?」と考えてきました。
 過去記事で「なんでもかんでも○育や○○教育と、後ろに教育の文字がつくと学校の仕事になってしまう……」と嘆く学校関係者の声を紹介しました。食育しかり、徳育しかり、最近では眠育などということまで言われています。本来、それらは学校の仕事ではなく、家庭や地域社会の仕事だと思います。私は今でもそう考えています。

 でも、南国市の話を聞いて、食育には大きな可能性があると思いました。
 子供のときからきちんとした食についての知識を身につければ、健康も維持され、長期的には医療費や介護経費も下がり市の財政も助かることでしょう。医療経済学や予防医療の観点で投資となります。
 また、おそらく生活習慣の改善により、学力も底上げされるでしょう。出来のいい子がさらに伸びることはあまりないでしょうが、生活習慣の悪い家庭の子が落ちこぼれることが減りそうな気がします。
IMG_1621.JPG さらに、エディブル・スクール・ヤードなどとも言いますが、南国市のように学校で食べられる作物を育てることは、最近注目されています。理科・家庭科・環境教育・情操教育・生きる力の醸成など、複合的な教育効果が期待できそうです。
※十市小中庭の花壇。というか畑。中庭以外も花壇。というか畑。
 加えて、農業が盛んな南国市では、食育の一環で給食に地元産品を「これでもか!」というくらいたくさん使っています。子どもたちの郷土愛や地元産業の理解を深めるだけでなく、農家さんにとっても仕事の誇りや安定した需要の確保に役立っているようです。

 南国市では、こうしたことを明示的に意識して狙っているわけではなく、ただただ子どもたちの教育の観点で進めてきたようです。ただ、説明のはしばしから私はそんな意図も感じました。
 そういう意味では、「食育は家庭の仕事なんだけれども、行政側も取り組む価値のあるリターンの大きい投資かもしれない」と思ったのです。

 ところで、なぜ南国市では、こんなに食育に力を入れることができたのか? はっきりとは伺えませんでしたが、当時の教育現場のボトムアップとトップの教育長の想いが重なったようです。そして、市長も理解ある財政的配慮をしてきた。また、2005年に教育委員会からの提案で「食育のまちづくり条例」を可決しており、市民代表たる議会も「うちのまちは食育で行くぞ!」と方向性を定めたことになります。横須賀が「観光立市推進条例」をつくって「観光で身を立てるぞ!」と表明したのと少し似ているなと感じました。
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 さて、炊飯器給食についても触れないとですね。食育の取り組みの一環に過ぎないとはいえ、興味深い内容でした。市立十市(とおち)小学校にお邪魔し、見学させていただきました。
※ちなみに校舎は県内産の木材がふんだんに使われた、素朴で天然生活系の雰囲気。生徒の机や椅子も県産材とのこと。かつて視察した高知市の行政センターもそうだったが、高知県の補助制度などがあって利用促進を図っているようだ。
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 クラスによっては(低学年?)、給食をカートで運びます。カート下段に炊飯器。
IMG_1625.JPGIMG_1628.JPG クラスによっては(上級生?)、カートの他に炊飯器を手で運びます。写真のような棚で炊飯&保温されていて、そこからこんなふうに持っていくらしい。

 やっぱり炊きたては美味しいみたいです。ご飯を残さなくなったそうです。
IMG_1636.JPG こうやってご飯を2人がかりでよそう。

 基本的に、南国市の給食は米飯です。月に1回だけ米飯以外なんだそうです。そして、基本的に和食です。はっきり言って「素食」と言っていいと思います。
 かと言って、決して粗末ではない。伝統的な食材を奇をてらわずに素材を活かして調理する。マクロビに近い印象を持ちました。
 近年、市町村によっては、「これってファーストフード? お祭りの屋台?」と見まがうような「トンデモ給食」を出すまちもあるようです。『変な給食』という本を読んで驚いたのですが、こんなものを日常的に食べていたら味覚がバカになるし、栄養も偏るだろうと思われる、「本当に栄養士がついててコレなの?」と目を疑うような献立です。
 家庭の食事もマトモじゃなくなっている家も増えている中では、給食ぐらいは南国市みたいに保守的にいきたいものです。


 話は変わって、南国市ではこれまで中学校給食を実施していませんでしたが、2017年度から導入するとのことでした。南国市で食育条例づくりと中学校給食導入に携わってこられた方にお話を伺う機会があったのですが、こうおっしゃっていたのが印象的でした。
「給食の力ってあるんですよ。給食が食べたくて学校に来る、そんな子もいるんです」
「確かに、我が市でも中学校の教員の中には、給食の指導を負担だという声もありました。でも、生徒を中心において考え、一つ一つ問題を解消していったら、最後には教員も反対できる理由がなくなって理解してくれました」
「みんな、すぐに『財源がない』って言うんですよ。でも、先に財源ありじゃない。先に事業ありです。生徒のために何が必要か? そのための事業なら、財源はつくればいいんですよ。政治家はそのためにいるんじゃないんですか?」
 俺も同じようなことを議会で言ってきたけど、やりきってきた人の説得力は違うな……。ガンバロー!

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 最後に。
※写真は十市小学校の食育啓発用の黒板
 “You are what you eat.”という英語の諺がありますね。私も好きな言葉でたまに使いますが、たぶんダブルミーニングです。
●イミ1:「あなたは、自分が食べているものでできている」
 人間の体は、食べた物のアミノ酸からできた細胞でつくられています。福岡伸一氏『生物と無生物のあいだ』によると、人間の体は1年も経たずに入れ替わっているようです。だからこそ、体にいい食べ物を摂りましょうね、ということ。
●イミ2:「あなたが食べているもので、人となりがわかる」
 イギリスなどの階級社会では食べる肉の部位も違うそうです。上流階級はフィレなどを食べ、ワーキングクラスは脂身の多い部位・内蔵・挽肉などを食べる。日本でもかつてモツなどは被差別部落の人々の食べ物でした。今の日本では、金持ちから貧乏人までハンバーグやホルモンなどを喜んで食べるので、いい社会だなと思います。でも、一億総中流から格差社会に変わり、生活水準によって選ぶ店や食材が違ってきている実感が私にはあります。
 いずれにしても、「何を食べるか」には、その人の考え方や生活水準が反映されますよね。


 どんなものを、どう食べているか?
 食育によって子供たちの将来は大きく左右されるのでしょう。
posted by 小林のぶゆき at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月02日

会派視察報告【大田区】横須賀の5倍も学童保育に注ぎ込む大田区との彼我の差に涙

 6/29〜7/1の日程で、会派・研政の5名で視察に来ています。互いの希望を出し合って、「子育て支援&人口減少対策」をテーマに予定を組みました。
●6/29 東京都大田区:放課後子ども教室
●6/30 高知県南国市:炊飯器給食
●7/1 徳島県神山町:生産年齢人口流入策
ということで、楽しみな内容です。

 昨年までの無会派時代も、一人で視察には行っていました。現地で「ついでにこれも見よう」と思えば自由に動けて機動力があった反面、孤独なのは別にいいとしても多様な視点が持ちにくかった面はあるかなと思います。
 会派だと自由な予定変更はできない面は確かにあります。でも、ある程度問題意識の近い人が集まっているとはいえ、同じものを見て同じ話を聞いても着目点が違ってきますし、道すがら振り返りしながら政策論争できるのも利点だと感じています。
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 初日は、東京都大田区です。ちなみに、大田区役所は元は民間物件だったとのこと。「言われてみれば、なんだか造りがデパートっぽいな」とか思ったのですが、それもそのはず。後で調べたら、もともと商業施設用に作られ、一度も使われないまま市役所に改築されたそうです。写真は本会議場ですが、元々ここはプールだったらしい。天井も開閉式で、開けたら気持ちいいだろうな。でも「議場などという休眠資産にしないで、そのままプールとして活用したほうがよかったのに」と思わずにはいられませんでした。
51XTBMGJT0L._SX324_BO1,204,203,200_.jpg しかも、以前知人に勧められて読んだ『蒲田戦記』のまさに舞台だった桃源社のビルでした。

 さて、閑話休題。大田区では放課後子ども教室についてお話を伺いました。時間の都合で、現地は見られなかったのですが、担当者がわかりやすい説明をしてくださり、通り一遍の質疑応答ではなく、意見交換に近い形でお話を伺えて有意義でした。

 放課後子ども事業には、学童保育と放課後居場所事業の両方を含みます。
●学童保育
 学齢前の保育園と同様に、学齢期の児童に見守り・食事(おやつ)・生活の場を提供するもの。多くの場合は希望者限定の有償サービスです。
●放課後居場所事業
 保育の必要がない子どもに対して、習い事やクラブ活動などに行くことも特段ないなら安心な居場所を確保しましょう、というもの。多くの場合は全児童が対象の無償サービスです。

 大田区は、この学童保育と放課後居場所事業を一体的に提供し始めたので、それを見に行ったわけです。どちらも中途半端な横須賀市は、どうすればいいのか? 考える材料にするのが狙いです。


 まず、横須賀市の現状はどうなってるのか? おさらいしてみましょう。
●学童保育
 そもそも、自前では実施していません。民間が民設民営で開設してくださっている学童クラブにいくばくかの補助金を出している形です。1施設あたりの平均で約480万円/年で、1施設あたりの児童数が平均29人ですから、単純計算で1人あたり約16万5千円/年ということになります。そして、利用者が払う保育料は学童クラブ側がそれぞれ決めているわけですが、平均20,000円前後という全国一高額な水準です。また、学童クラブがない学校も少なくありません。
 昨年、教育福祉常任委員会の視察で鹿児島市に伺った際、他市と比べた横須賀市の特徴を詳述しているので、詳しくは過去記事に譲ります。逆に言うと、横須賀の切ない現状は、この1年間改善していないとも言えます(苦笑)。
●放課後居場所事業
 これも「まともに実施していない」と言っていいでしょう。
 確かに、「みんなの家」15カ所で「ランドセル置き場」事業を実施はしています。しかし、学校から遠く離れているので、近くに「みんなの家」がある子は通えますが、不公平なサービスとなっています。実際に日々利用できる児童の地域カバー率で言えば1割くらいじゃないかなあ。
 また、「わいわいスクール」という大田区や横浜市と同じように学校内で実施しているサービスもありますが、小学校46校中、6校に過ぎません。不公平であり、先行した6校が良かったのか悪かったのか振り返りもないまま。そして、市の事業となった2005年からズルズルと10年も続けていながら、てんで進展がない体たらくです。


 一方、大田区はどうか? その放課後児童対策の手厚さには、あまりの彼我の差に一同、嘆息を禁じえませんでした。
●学童保育
 もともと58学校区全てに公設で82施設を設置。ただし、学校外にある施設が大半で、放課後に学校から移動する際の安全性が懸念されるため、現在は全校で学童保育サービスを学校内に移転する計画です。ただし、子供の数が増えているため学童保育の待機児童も発生しており、学校外の施設を廃止するのはニーズを見極めてからの模様。なお、公設の他に、民間が独自に高付加価値な学童クラブをいくつも開設していますが、大田区の事業とは無関係。
 保育料は4,000円(延長+1,000円)。単純計算で、1施設あたり1人月4,000円×12カ月×50人=年間240万円程度の収入でしょう。ちなみに、公設民営の施設(42/82施設中)の場合、平均で1施設あたり年間約2400万円の委託料を支払っているとのこと。横須賀市の学童クラブより1施設あたりの定員は多いようなので単純比較はできませんが、実に横須賀市の5倍の額です。
 そうすると、受益者負担率は10%。要するに、利用者は本来かかるコストの1/10程度しか負担していないことになります。逆に言えば、大田区は「学童保育は、行政が9割を負担してでも提供すべきサービス」と認識しているということを数字が物語っているわけです。
●放課後居場所事業
 現在は、58校中23校でしか提供できていませんが、大田区は既に、学童保育と放課後居場所事業をセットにして、全校展開すべき事業と位置づけています。
 さらに、事実上は保育的に使われることも否定していないようです。まあ、そうでしょうね。子どもを保育する学童保育と、子どもを安心して遊ばせられる居場所づくりに、質的な差はほとんどない。「16:30まで子どもを安心して遊ばせられる場所があればいい」という家庭は、放課後居場所事業だけで十分かもしれません。
●「放課後ひろば教室」
 大田区では、学童保育と放課後居場所の両方のサービスを学校内で一体的に提供しているものを「放課後ひろば教室」と呼んでおり、2015年度から開始して58校中14校で展開しています。残りの44校でも段階的に設置し、全校でこのサービスを提供する計画です。
 ちなみに、学童保育を利用していてお金を払っている子どもにはおやつを提供し、放課後居場所事業のみの子にはおやつがありません。そうすると、学童保育じゃない子どもは「おやつ、いいなあ……」と思うんじゃないだろうか? どうやって解消しているのかと思ったら、「私たちもその点は課題を感じていますが、現時点ではおやつは別室で提供することで対応しているところ」とのことでした。なるほど〜。
 おそらく、いまは子供の数が増えている大田区も、いずれ児童数減少が始まります。そのときを見据えて、増えるであろう余裕教室を有効活用しようという狙いもあるでしょう。また、金食い虫の公共施設を減らすために、学校外にある児童館を廃止して学校内に集約したいという思惑もあるでしょう。とはいえ、生徒の安全も向上しながら財政縮減も図るのは悪い発想じゃないと思います。

提言:横須賀版放課後児童対策の進む道
 さて、「大田区を見てきて、横須賀市と比べて、講釈はわかった。それで、小林くんは具体的にどうすればいいと考えるのよ? それを聞かせてくれよ」という話だと思います。
●横須賀に大田区並みのカネを投じる体力はない
 大田区は他の東京23区に負けじとサービスを充実させているようですが、なんのかんの言っても東京23区は財政面で恵まれています。横須賀が背伸びしても限界があります。
 横須賀市が市内54の学童クラブに支払っている補助金は合計で約2億6千万円/年にのぼります。これを、大田区並みの水準に増やすと約13億円/年になってしまう。子どもたちのためには惜しまずに予算をつけたいところですが、さすがにキビシイです。だから、発想の転換が必要です。
●管理型から粗放型へ。カネをかけずに実をとろう。
 私は、手間をかけない放課後居場所事業を公設公営で全校展開すべきだと思います。
 かといって、現在の横須賀の学童クラブのように高いスキルを持った指導者による高付加価値のサービスも否定しません。でも、ハイエンドのサービスは、当然ながら高コストになります。誰もが利用できるサービスではなくなってしまっている。民間への補助金は段階的に廃止しつつも否定することなく、所得の高い世帯が納得して利用する施設として引き続き運営頂けるところは運営してもらえばいい。
 横須賀には、ローエンドの普及価格帯のサービスが必要です。ズバリ月額5,000円。生活保護および就学援助世帯は無料。学校内の余裕教室を、学童クラブと全児童対象の放課後居場所事業で兼用します。なおかつ、昼間は学校の相談室や授業準備室としても兼用します。教育委員会に「空き教室はありません」などという逃げは打たせません。
 民間委託の公設民営ではなく、直営の公設公営とするのには理由があります。公設民営だと、委託部分の施設部分と学校長管理の施設部分とをキッチリ分ける必要が出てきます。でも、公設公営なら学校を比較的自由に使えるハズです。教育委員会か市長部局かという所管の問題はありますが、例えば火災が起きて物損があった時に誰が払うかと言えば横須賀市役所で、サイフは一緒だからです。学校側や教育委員会も、市長部局の職員が放課後の学校を歩き回っても抵抗感はないでしょう。兼用にするなら、公営のほうがいい。
 ただ、「学童保育」とは言っても、現在の民間学童クラブのように丁寧に面倒を診る「管理型」ではなく「粗放型」のサービスとします。指導員は、安全面で大丈夫かどうかだけを部屋と校庭(もしくは体育館)に分かれて監視するだけです。積極的に子どもに関わることは基本的に業務とはしない。子どもたちが子どもたち同士で学び合う場とします。昔の子どもの遊びってそうですよね? 指導員は、現在の学童クラブで働いている方を優先に、まっとうな待遇で雇用します。
 もちろん、おやつは提供します。おやつはバカにできませんからね。低年齢の人間は数回に分けて食事をしたほうがいい体の仕組みとなっているんです。だから、学童保育利用者だけでなく、放課後居場所事業の利用者にもおやつは提供します。蒸したイモやトウモロコシなら1食30円位で納まるでしょう。年間6千円位を前納してもらえば済む話です。給食同様に、調理費は市側が負担し、材料費は受益者負担とします。
 ……この仕組みなら、年間1校あたり500万円もかければ、保育料と併せて運営できるでしょう。46校全てに展開しても2億3000万円の皮算用。
 横浜市の仕組みがこれに近いので、近々調べて費用の目安としてみたいと思います。

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 ちなみに、帰りに大田区役所でこんなものを見つけました。よく、ホテルのエレベーターの中にイスがあったりしますよね。要するにあれなんですが、中に非常用物資が入っていて、エレベーター内に閉じ込められた時などに活躍するそうです。なるほど、いい発想ですよね。うちのエレベーターにはないので、提案してみようかな。
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 翌日の視察先に向けて羽田空港から移動です。空港での待ち時間、なんとBen&Jerry'sのアイスクリームを見つけた! 日本からは撤退したと聞いていたけれど、再上陸したのね。俺はモーいい大人で子どもじゃないんだから甘いものなんて別にそれほど好きなわけじゃないのですが、社会的に活動するいい企業を応援するために仕方なく購入しました(?!)。チェリーガルシア味。少し桜餅みたいな塩気を感じたけど塩入ってたのかな? なにしろ、さくらんぼとチョコレートが絶妙。しかも、原料はフェアトレードなのね。近所のコンビニとかスーパーでも、ハーゲンダッツとかじゃなくてコレを置いてくれたらハッピーなのにな。Ben&Jerry'sがどれだけハッピーなメーカーかはホームページをご覧あれ。
posted by 小林のぶゆき at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする