
横須賀市芦名に、神奈川県が持つ産業廃棄物の最終処分場があります。
→かながわ環境整備センター ここに、黒岩知事が放射性物質を含む焼却灰を持ち込もうとして問題になっていることは、ご存じだと思います。確かに、被災地のがれきが復興の足かせとなっている以上、がれきを燃やして処分していくことは喫緊の課題です。しかし、神奈川県によれば「がれきに含まれる放射能は微量で問題ない」とのことですが、放射能が含まれてくるのは間違いありません。
この問題は、地元も市議会も二分するような議論になってしまっています。そこで、私独自に解決策を提案したいと思います。
最初に、旗色をはっきりさせますね。私は、この焼却灰を芦名に受け入れることに反対です。その理由は、いくつかあります。
●放射性物質は拡散させるべきでない 残念ながら、福島第一原発からの放射能は薄く広く拡がってしまいました。これを、集めて隔離できればいいのですが、それができないから苦労しているわけです。
ところで、廃棄物や下水汚泥を燃やした焼却灰には、放射能が濃縮されて集まります。なんでもそうですが、散らかすのは簡単だけど、片付けるのは大変。エントロピーの法則を持ち出すまでもありません。だから、せっかく集まった放射能を、横須賀など全国の処分場に分散してしまうのは得策ではありません。1カ所に集約したほうがいい。
●横須賀市にとって得はなく、損だけがある 被災地のことを考えれば、一刻も早くがれきを処理することは急務です。しかし、そのために横須賀市が身を切るべきか?
焼却灰の入った袋が破ければ、飛散する恐れもあります。焼却灰に降った雨に放射能が溶けだし、活断層の上にある最終処分場に地震でヒビなどが入ったら漏れだすかもしれません。そしてなにより、農業や漁業に風評被害があり得ます。
受け入れることで、横須賀市に何かメリットがあるかといえば、何もありません。その分の地方交付税が増額になるわけでも、特区などの優遇措置があるわけでもありません。メリットがないのは神奈川県も同じはずで、せっかく地元住民の反対を押し切って大金はたいて作った最終処分場の容量が減るだけです。黒岩知事が地元住民を説得してまで受け入れしようとする背景には、「被災地を思う善意だけじゃなく、何か裏の理由があるのではないか」と勘ぐる人がいるのもわかります。
そして、私は横須賀市議会議員です。被災地への思いとは別に、横須賀市の利益を最大化するべく判断する立場だと考えています。ですから、デメリットだけの今回の受け入れには賛成できません。
●地元が反対している これが最も大きな理由です。もともと地元の町内会では、「不安な点さえ解消されれば、最終的には被災地のために協力してあげなきゃな」という気持ちの方も少なくなかったと聞きます。しかし、黒岩知事が「受け入れありき」で突っ走り、地元の不信感を増幅させてしまいました。
企業にはよく「PR」(Public Relations)の部署があります。外部とコミュニケーションをとるのが役割です。ところが、かつて東京電力と仕事をしたとき、「PA」(Public Acceptance)という部署があって驚いたことがあります。文字通り、「社会に受け入れさせる」のが役割です。何を受け入れさせるのか? 要するに、原発です。黒岩知事の「被災地支援は正義だ」と押し切ろうとする姿勢には、「原発推進は正義だ」とPA活動にいそしんで受け入れさせてきた東京電力と同様の傲慢ささえ感じます。
まあ、黒岩知事にしてみれば、横須賀の有力者が「俺が地元を説得するから」と請け負ったからがれき受け入れを宣言したらしいのですが、フタを開けてみたら非難轟々で、ハシゴをはずされた気分かもしれませんけどね。
では、どうすればいいのか?
私は、大量のがれきを早く処分するには、横須賀などの各自治体にイヤイヤ受け入れさせるのではなく、がれき処理に参加したくなる仕組みづくりが必要だと思います。ビジネスでは、「顧客が喜ぶものを提供すれば、売れて自分も儲かる」というインセンティヴ・システムが機能しています。この発想が必要です。
具体的な解決策を言います。
●最終処分場は、フクシマの「帰還困難区域」に。 放射能を全国に拡散させないよう、フクシマの原発近くに4月から設定される予定の「帰還困難区域」に最終処分場をつくるのが望ましいと考えます。
住んでいた方にはかわいそうですが、高線量地域にはもう戻れないし、戻らないほうがいいと思うんです。だからこそ、そこに最終処分場をつくって放射能入りの焼却灰を集約すればいい。その分、最終処分場の利用料金を徴収して、そのお金をもう帰れなくなった方々に分配すれば、いくらかでも補償になります。
もちろん、最終処分場をつくるのには時間もかかるので、当面はプレファブの倉庫を建てて一時保管すればいいと思います。
●焼却をした自治体にメリットを。 被災地にある焼却炉だけでは、がれきを処分しきれません。だからこそ、全国の焼却炉に余裕のある自治体に、焼却を代行してもらう必要があります。焼却にあたっては、放射能はほとんど焼却灰に残って外部に放出されないので、その点は問題ないと思います。ただし、焼却炉の稼働にはコストもかかり、代行することにメリットはありません。
そこでインセンティブです。
原発事故以降、横須賀市では一般廃棄物の焼却灰は受け入れてもらえていますが、下水汚泥の焼却灰は最終処分場やセメント会社に受け入れてもらえなくなりました。放射能のせいです。横須賀市では下水処理場の敷地内に保管しており、他の自治体も同様の状況です。
この焼却灰を、フクシマの「帰還困難地域」に送ればいい。それも、「がれきの焼却を代行した量に応じて、その自治体の焼却灰もフクシマに送っていい」という条件にすればインセンティヴが働きます。併せて、現在8000ベクレル/sと環境省が定めている最終処分可能なレベルを、大きく引き下げればいい。そうすれば、放射能が全国に拡散することを防げるうえ、自分のところの焼却灰を処分したい自治体はさらなるがれきの焼却に精を出す、というわけです。
ただし、わが横須賀市では、焼却炉に余力がないのでお手伝いできそうにないのですが……。
●費用は、東京電力に請求する。 原発事故により避難生活を余儀なくさせられている方々への補償は現在、十分ではないと思います。私が今回提案しているスキームでは、こうした方々に追加的な補償金を支払うことができるようになります。
一方で、我々自治体にとっても、原発事故さえなければ焼却灰の処理に四苦八苦することはなかったわけです。だから、「帰還困難区域」に作る最終処分場の利用料金については、自治体がいったん支払いますが、最終的には追加的にかかった費用については東電に請求すべきです。
こうすることで、不透明なやりかたで東電を半官半民のゾンビ的に存続させようとしている政府を牽制できます。膨大な請求額でいったんバンザイお手上げさせて、株主と金融機関に泣いてもらうきちんとした破綻処理の後に、発電部門の民営化と送配電部門の国有化を促すことが結果的に安くつくと思うのです。
このように、誰かが損をするのではなく、被災地も、原発事故被害者も、原発事故被害自治体も、電力自由化の恩恵を受ける経済界も、関わる人みんなが喜ぶ「三方よし」の発想で組み立てするといいと思うんです。
私は横須賀市の利益至上主義者ですが、受入反対とはいえ、被災地のことを突き放すつもりはありません。実は、私も福島県の出身です。横須賀を想う気持ちとは別に、故郷の惨状に胸を痛めています。だからこそ、過去にも吉田市長に「ヨコスカ疎開計画」という提案をしてきました。
(→ボツになった「ヨコスカ疎開計画」)今回も、福島にゆかりのない方は遠慮して「福島の原発周辺に最終処分場を」とはなかなか言えないと思いますので、出身者の私から勇気をふりしぼって提案しました。
なお、この芦名の最終処分場への受け入れ問題については、賛否は分かれますが下記Blog等は本質的な議論をしていると思いましたのでご紹介します。
●河野太郎代議士「ごまめの歯ぎしり」
→「震災がれきの受け入れに賛成する」●長谷川昇議員「はせどんblog」
→「芦名の廃棄物最終処分場へのがれき搬送を問う。」●藤野英明議員のホームページ
→「政治家フジノの活動日記」